【ライヴレポート】L’Arc-en-Ciel、<hyde誕生祭>を2日間10万人が祝福「いつ終わるかわからない。だからこそ愛おしい世界なんだと思います」

L’Arc-en-Cielが1⽉18日および19⽇の2日間、東京ドームにて<L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭->を開催した。アニバーサリーなどメモリアルなタイミングで立つことの多い東京ドームだが、今回は初の<hyde誕生祭>。1月29日に誕生日を迎えるhyde(Vo)のバースデーパーティとして、「僕がワガママに、好きなようにラルクをプロデュースします」(hyde)と宣言し、今、hyde自身がカッコいいと思うL’Arc-en-Cielを表現するという形で開催された。
◆L’Arc-en-Ciel 画像
全員が作曲もプロデュースもできるメンバー個々の高いセンスが揃い、文字通り虹色の多面的な世界観を作り上げてきたL’Arc-en-Cielは結成から約34年。ヴォーカリストとして楽曲を表現してきたhydeが東京ドームに描いたのは、L’Arc-en-Cielの深淵を覗き、核に触れるような絶景だった。hydeへ、そしてL’Arc-en-Cielへの愛情で満ち溢れた東京ドーム2Daysより、最終日1月19日のレポートをお送りする。
メインヴィジュアルやグッズからして黒を基調としたハードなデザインは、hydeプロデュースならではの空気が会場に漂う。開演時刻を少し過ぎた頃にゆっくりと暗転、ステージ背景に敷き詰められたLEDスクリーンに、34年を示す“XXXIV”の文字や初期のバンドロゴ、聖母と思わしき女性や細胞分裂が映し出され、ken、tetsuya、yukihiroの紹介を盛り込んだオープニングムービーが流れた。そしてガラスのような壁の奥に姿を現したhyde。壁を自らの頭で叩き割り、会場を睨みグロウルを発すると、ロウソクを吹き消して開演を告げる…というスペクタクル溢れる映像に一気に惹き込まれた。




間髪入れず不穏なシンセ音に導かれて「DRINK IT DOWN」から<hyde誕生祭>がスタートした。背中が編み上げ状の黒のフレアコートをまとったhyde同様、ken(G)、tetsuya(B)、yukihiro(Dr)もモノトーンのフォーマルな衣装。初日公演でhyde曰く「“クールな衣装”というリクエストをした」とのことだが、4人のスタイリングに統一感があるという時点で、この日だけの特別感が伝わってきた。
ヘヴィなサウンドと力強いシャウトから「X X X」に繋ぎ、一転して妖艶さで魅了していく。さらに「CHASE」でアグレッシヴモードへ。「東京! hyde誕生祭、祝ってくれよ! 楽しもうぜ!」とhyde。kenとtetsuyaも左右のランウェイへ繰り出して客席を煽り、ドーム全体を巻き込んでいった。


蒸気機関車が疾走する映像に続いて、kenのギターが口火を切る「fate」では、冷静にビートを刻むyukihiroとメロディアスなtetsuyaのベースが淡々とリズムを牽引し、hydeが切ない物語を紡いでいく。その歌声から、胸が張り裂けそうな痛み、狂おしい哀しみが溢れ出すようだ。「花葬」「浸食 -lose control-」といったダークで危うさを感じさせるナンバーでのhydeの表現力は圧巻。幻想的な世界観のなかにシビアな現実と生きるうえでの葛藤を落とし込むように、儚くも鬼気迫る存在感が凄まじい。
続く「EVERLASTING」は宗教画を思わせるアルカイックスマイルを浮かべたhydeと炎の演出が緊張感を煽り、「forbidden lover」では潤んだ瞳で悲劇的な感情を歌い上げる。リリース当時から色褪せない魅力を放ちつつも、年月を重ね、変化を恐れず進んできた今のhydeにしか歌えない歌が響く。バンドによる緻密なアンサンブルは要所要所で新たなアレンジも加えられ、映像と照明の演出が楽曲の持つ世界観を増幅させる。東京ドームがまるごと異世界に飛ばされてしまったかのような没入感に飲み込まれた。後のMCでhydeが「僕が歌いたい曲だけ歌う」と語っていたが、L’Arc-en-Cielだけが持つ唯一無二の濃密な空間が5万人を非日常へといざなった。




ブルージーでヘヴィなギターリフをkenが掻き鳴らして「接吻」へ。ロックバンドならではの生々しくダイナミックなグルーヴに会場が揺れるなか、アリーナ中央へ伸びるランウェイからセンターステージに歩み出たkenにスポットが当たり、ken独奏によるギターソロを披露。無線制御されたイエローのL’ライトに囲まれた姿はまさしくギターヒーローそのもの。おそらくこれもプロデューサーhydeのリクエストと思われるが、骨太かつ叙情的でときにフラッシーなソロを響かせるkenの姿を、hydeがステージに座り込んで満足げに見つめていたシーンも印象的だった。
ということは、という期待に応えるように「接吻」が終わると入れ替わりでtetsuyaがセンターステージへ。エフェクトを駆使した音色やフィードバックノイズ、一転してメロディアスなフレーズを奏でるなど、土台を支える的なベーシストのイメージを覆してきたtetsuyaならではのソロが華々しい。笑顔でオーディエンスを盛り上げて、ベースのイントロが印象的な「In the Air」へと繋いだ。白シャツとネクタイに衣装を変え登場したhydeが、観光大使を務めるオーストリアの“スワロフスキー”が特別に製作したというオリジナルの軍帽を輝かせながら、さきほどまでとはまた違う柔らかな歌声で会場を包み込む。黒いフラッグを担いでセンターステージに向かい、ベースソロを讃えるようにtetsuyaと寄り添った。




同曲の最後にフラッグをtetsuyaにかぶせる茶目っ気を見せつつ、センターステージから会場を見渡して「楽しんでますか? 思う存分やらせてもらいます」と改めて宣言。「ここからアゲていくよ、東京! 歌詞は相変わらず暗いですけど(笑)、そういうの好きでしょ?」という言葉どおり、単なるレア曲ではない、hydeの美意識が張り巡らされた楽曲がこの後も展開されていく。
軽やかなリズムとメロディが切ない一瞬を切り取った「the Fourth Avenue Café」、無機質なSF的要素のなかで妖美に歌い上げる「metropolis」。「get out from the shell」では、kenのギターとtetsuyaの6弦ベース、yukihiroの16ビートが相まって闇のレイヴのような空間が広がった。それにしても、予測の上をいくセットリストの前では、もはや身を任せるしかない。hydeがギターを掻き鳴らした「HONEY」がアッパーな空気を場内に描いた後に披露されたのは、イントロにピアノアレンジが加えられた「いばらの涙」だ。hydeはギターを構えたままサビで絶唱。4人の音が重なり、まるで映画のワンシーンのような迫力に釘付けになる。過去に何度も名場面を生んできた同曲だが、この夜の「いばらの涙」はひときわ壮絶だった。

すぐさまhydeが「1, 2, 3, 4!」とカウントすると「Shout at the Devil」になだれ込む。王冠がモチーフの<L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭->ロゴが入ったフラッグをhydeが掲げ、5万人の大歓声と炎の特効に煽られて、すべてを焼き尽くすが如く、気迫漲る演奏が終了。メンバーがステージを後にする中、ひとり残ったyukihiroは力強いドラムパフォーマンスでクライマックスを描いて場内が最高潮を迎え、一旦ステージの幕を閉じた。
“ウェーブがみたいなぁ。”という文字がLEDスクリーンに大写しにされると、オーディエンスはそのリクエストに応えて何度もウェーブを繰り返す。このインターバルを経て、ライトアップされたランウェイに姿を現したのはyukihiroだ。ランウェイからセンターステージへ、赤い薔薇の花束を持ってyukihiroが一人歩くという、ときめくシチュエーションに黄色い声が起きる。yukihiroはセンターステージに用意されたドラムセットの前にhydeへの花束を置いて8ビートを刻む。続いてhyde、ken、tetsuyaが登場し、hydeがその花束を抱きかかえ、「真実と幻想と」が始まった。5万人の中央で奏でられる「真実と幻想と」は格別で、hydeの美しいファルセットや、その情念が場内に染みこむようだった。


「L’Arc-en-Ciel 、34周年になります。いろんなことがありました。考え方も生き方も歌詞も変わってきた。その時々の自分が思っていたことを歌ってきたと思います。いつ終わるかわからないですからね、みなさんの人生。だからこそ、愛おしい世界なんだと思います」──hyde
そう静かに語ったあと、「さっき(「真実と幻想と」でkenの)ギターの音が出ていなくて、(演奏を)止めようと思いました。でも……これまでどんなことがあっても、なんとかかたちにして、やり遂げてきたなと思って、続けました」と告げたhydeは声をつまらせ、瞳に涙を浮かべていた。はからずも過去に思いを馳せ、重ねてきた時間と今の大切さに触れたのかもしれない。「やりたいことがあったら今すぐやって、会いたい人がいたらすぐに会いに行ってください」と伝え、その想いを込めて「ALONE EN LA VIDA」が届けられた。
その後のMCでは、ギタートラブルの真相が明らかに。「ギターのネックにピックが挟まったままチューニングしてた」と告げたkenに、hydeが崩れ落ちて爆笑。hyde曰く「kenさんの初歩的なミス」だったことが発覚した。「それでもかたちにしていくL’Arc-en-Cielです(笑)」とオチをつけ、tetsuyaとyukihiroも笑顔を見せる。演出ではなし得ない、L’Arc-en-Cielならではのアットホームなワンシーンとなった。

その温かい雰囲気のまま、プロデューサーhyde肝入りのクラッカー企画へ。オーケストラの伴奏に合わせて「ハッピーバースデー」を歌唱。そのラスト、“3, 2, 1! Happy Birthday!”のタイミングで5万人が一斉にクラッカーを鳴らすという世界でも例を見ない壮大な企画だ。祝われる側のhyde自らが丁寧に説明した甲斐もあり、見事、5万人による合唱と祝福のクラッカーが降り注ぐ。同時に舞い散る銀テープや紙吹雪を浴びながら、hydeは感極まった表情で眩い光景をしばらく見つめていた。
「感謝の気持ちを込めて、次の曲を歌いたいと思います」と、贈られたのは「雪の足跡」。天井に美しいステンドグラスが輝き、光の柱が東京ドームを荘厳な聖堂に変えていく。“立ち止まったり、回り道もしたけど 一つ一つが大切な記憶”という歌詞に人生が重なる。涙声になりかける歌をken、tetsuya、yukihiroの音が支え、オーディエンスの温かい拍手が4人を包んだ。
そしてメインステージに戻ると、「好きな花は?」というテーマで和やかなフリートークを展開。kenは「赤いビラビラ」。tetsuyaは「花と言えば…僕、花の定期便(STELLA BLOOM)をやっているんですよ。これからhydeにも送るよ」という回答。そしてyukihiroにはhydeから「タンポポとチューリップ、どっちが好きですか?」と投げかけ、yukihiroから「チューリップ」という可愛い単語を引き出したhydeがしたり顔を見せるなど、ここでもリラックスしたムードが流れた。




さらに、「次は新曲「YOU GOTTA RUN」をやるんですけど」と曲紹介をしたかと思えば、曲に入る前に突然、自宅のバスルームでの話を始めたhyde。「タンクのお湯が足りなくて………湯が足らん…ユガタラン」と、「YOU GOTTA RUN」にかけたギャグを披露する場面も。そして披露された新曲は、ヘヴィな音像の中に伸びやかな歌とシャウトが響き渡る。ライヴ前半からメランコリックでダーク、クールでヘヴィな楽曲が続いたが、ここからはカラフルでアッパーなライヴ定番曲を連発。華やかな「Caress of Venus」から「READY STEADY GO」を畳みかけ、L’Arc-en-Cielのポップサイドが届けられた。
「こんなにたくさんの人が集まってくれて本当にうれしいです。幸せ者だなって、つくづく思いました。何度もグッときましたが、なんとか乗り越えて、あと1曲で終わろうとしています。僕の誕生祭なんですけど……みなさんこそ、生まれてきてくれてありがとうございます。僕らと出会って、ここに集まってくれて、それだけで最高のプレゼントになりました」──hyde

最後の曲は不朽の愛を歌う「あなた」。一人ひとりに語りかけるように歌うhydeの声に音を重ね、東京ドームに極上のサウンドスケープを描く。ミラーボールの輝きに彩られ、曲の後半には大合唱が東京ドームにこだました。センターステージに進み、ドームの中心でオーディエンスの歌声を浴びるhydeの表情は穏やか。プロデューサーとして仕切った公演が無事終わろうとしていることに対する安堵、それ以上に彼自身想像していなかったものを得た2日間だったのかもしれない。感動的な光景を描いて、すべての演奏を終え、<L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭->が終了した。
ひとりステージに残ったhydeは、名残惜しそうに手を振りながら上手下手のランウェイを歩き、その途中でkenとtetsuya、それぞれからサプライズで贈られた花束とプレゼントを両腕に抱えて、最後にこう語った。
「ラストの「あなた」は、いつもはみんなに向かって歌うんですけど、今日は5万人の方に歌っていただいて……ああ、生きてていいんだなっていうか。みんなのためになっているのかな、と思いながら聴かせてもらいました。そこからの最後のサビは、みなさん一人ひとりに向けて、本当に生まれてきてくれてありがとう、という気持ちで歌いました。今日は来てくれてありがとうございました」──hyde

<hyde誕生祭>はL’Arc-en-Cielの魅力を改めて体感するとともに、メンバー4人やオーディエンスとの絆など、かけがえのないものを確かめ合う場となった。かつてない多幸感のなか、LEDスクリーンに「See you in 35th L’Anniversary Year」の文字が表示されると歓喜の声が湧いた。35周年を迎えるのは2026年。再び幕が上がるその時を、心待ちにしたい。
取材/文◎後藤寛子
撮影◎Kazutoshi Oguruma/Yuki Kawamoto/Hiroaki Ishikawa/Tetsuya Matsuda
■<L'Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAYCELEBRATION -hyde誕生祭->@東京ドームSETLIST
01. DRINK IT DOWN
02. X X X
03. CHASE
04. fate
05. 花葬
06. 浸食 -lose control-
07. EVERLASTING
08. forbidden lover
09. 接吻
10. In the Air
11. the Fourth Avenue Café
12. metropolis
13. get out from the shell
14. HONEY
15. いばらの涙
16. Shout at the Devil
17. 真実と幻想と
18. ALONE EN LA VIDA
19. 叙情詩
20. YOU GOTTA RUN
21. Caress of Venus
22. Link
23. あなた
▼2025年1月19日(日)
01. DRINK IT DOWN
02. X X X
03. CHASE
04. fate
05. 花葬
06. 浸食 -lose control-
07. EVERLASTING
08. forbidden lover
09. 接吻
10. In the Air
11. the Fourth Avenue Café
12. metropolis
13. get out from the shell
14. HONEY
15. いばらの涙
16. Shout at the Devil
17. 真実と幻想と
18. ALONE EN LA VIDA
19. 雪の足跡
20. YOU GOTTA RUN
21. Caress of Venus
22. READY STEADY GO
23. あなた
■放送&配信<L'Arc-en-Ciel「LIVE 2025 hyde BIRTHDAYCELEBRATION -hyde誕生祭-」>
放送局:WOWOW
※放送&配信終了後~1ヵ月間アーカイブ配信あり
収録⽇:2025年1⽉18⽇(土)、19⽇(日)
収録場所:東京ドーム
特設ページ:https://www.wowow.co.jp/music/larc/
■「L'Arcafe 2025 at Tree Village」
開催期間:2025年2月7日(金)~2月19日(水)
開催会場:ツリービレッジ大阪店
※大阪府大阪市北区角田町5-15 HEP FIVE梅田8階 バンダイナムコ Cross Store 大阪梅田 内
●福岡会場
開催期間:2025年2月7日(金)~2月19日(水)
開催会場:ツリービレッジ博多店
※福岡県福岡市博多区住吉一丁目2号74番 キャナルシレィオーパ博多 サウスビルB1F バンダイナムコ Cross Store 博多内

関連リンク
◆WOWOW<hyde誕生祭> 特設ページ
◆ツリービレッジ オフィシャルサイト
◆L'Arc-en-Ciel オフィシャルサイト
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