【ライブレポート】ASH DA HERO、ギターレスのミクスチャーロックが鳴らす新章「俺たちが令和最強のロックバンド」

ASH DA HEROが2月1日 、東京・Zepp Shinjukuにて新章の幕開けを告げる<ASH DA HERO LIVE 2025 "New Chapter">を開催した。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、BARKSオリジナルレポートをお届けしたい。
◆ASH DA HERO 画像
2024年、ASH DA HEROはTVアニメ『ブルーロック』主題歌「Judgement」に続き、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』劇中歌「オクターヴ」を手掛けるなど、大いに注目を集めていた。しかし同年9月にギタリストNarukazeが突如の脱退。バンドASH DA HEROはギタリスト不在のまま、新しいバンドのあり方を模索しつつも、国内フェスをはじめ、5ヵ国を巡る海外公演など、音楽活動を休むことなく継続してきた。


そのなかで試行錯誤を繰り返しながら、辿り着いた作品が、最新アルバム『New Chapter』(1/31配信開始)だ。ギターレスによる新体制のサウンドが刻み込まれた作品でもある。では、ライブはどうか? 新生ASH DA HEROは本当にイケてるのか? ギタリスト不在のミクスチャーサウンドは成立するのか?…いやいや、ASH DA HEROなら絶対カッコいい音をぶちかましてくれるはずだ。誰もがそんな期待と不安に包まれながら迎えたこの日は、いわば4人の存在価値が問われるJudgement Dayだ。
チケットはソールドアウト。満杯の会場にミラーボールが煌めく中、「New Chapter」をSEにメンバーが登場。ステージセンター後方にDhalsim(DJ)、前方にASH(Vo)を配した縦ライン、下手にSato(B)、上手にWANI(Dr)を配置した横ライン。十字に並んだ新フォーメーションはとにかくクールで、すでにワクワク度が高まる。なにか新しいことが始まりそうな予感だ。




そしてライブは「VANDALISM」で幕を開け、立て続けに「Break Free」をプレイ。ド頭から最新アルバム収録曲を連発して新体制サウンドを気迫のこもったパフォーマンスで見せつけていく。ASHが繰り出すリズミカルなラップ、それと掛け合うように切り込むDhalsim のリズミカルなスクラッチ音はバンドサウンドの重要な一翼。ギターレスを選択したときからプレイスタイルを変えたSatoは、ベースを歪ませてギター的なサウンドをも鳴らす二刀流だ。上裸の美ボディのルックス通りにカッコよさとグルーヴィーさを増したWANIのドラミングも秀逸。新生ADHは4人4様、誰もがバンドの主役プレーヤーだった。そしてクラブを思わせる照明セットや、VJがリリックを次々と映し出す映像演出も含め、全体の印象はスタイリッシュ。バンドサウンドはパワフルだ。そんな彼らの姿にオーディエンスはトップギアで灼熱のパフォーマンスに応えていく。
サイレンとともに赤色灯が回りだした「Get Away」からは、歌詞通り“ここ(Zepp Shinjuku)が解放区”に。フロアに大きなシンガロングが湧き起こり、以前よりリズムを押し出してグルーヴが増した「DAIDARA」では、オーディエンスに負けじとASHがすかさず客席へダイヴ。DhalsimとWANIが即興的に生み出すリズムにSatoが加わり、ジャムセッションをきめると「New Revolution」へ。その間奏では、ギターソロの代わりにDhalsimがスクラッチ音を激しく鳴らして曲を盛り上げた。


ピアノをバックにASHの歌から始まるライブアンセム「反抗声明」へ。 “ここから本気でアゲていく”という狼煙となる同曲では、SatoとDhalsimがツーステップで踊り出し、場内のテンションも急上昇。「くそっくらえ」を場内一丸となって大合唱し、そのラストでASHとともに中指を立て、反抗声明を唱えた。ダンサブルな「WARAWARA」ではオーディエンスが一斉にタオルを振り回しながら「ぶっ飛ばせ!」と叫ぶ。間髪入れずに、Satoのベースが地響きを描き出したところで、最新アルバム収録の「ラングラービート」へ。曲中にコール&レスポンスが行われるなど、ますますステージとフロアが一つになっていった。
場内が暗転すると、ロマンチックなミラーボールの光に包まれながら、DhalsimはキレキレのDJプレイを繰り出し、WANIは“oiコール”入りのドラムプレイで互いを挑発。「Super Sonic」は二人による掛け合いバトルが熱い。再び場内が暗転すると、突然として和笛と鼓の音が流れ、フロアが静謐な空気に包まれる。“メカ能面”をつけたSatoが姿を表わし、三味線のようにベースを弾いて、Dhalsimとともに和ロックな「Tengu」をプレイ。プレイヤー3人のソロプレイをフィーチャーしたセクションがASH DA HEROのステージに新風を吹き込んだ。



そしてDhalsimが「New era」のイントロをプレイするとASHがステージに登場した。ロックバラード「Rockstar」ではASHがヴォーカリストとして持てる歌唱力のすべてを注ぎ込んで熱唱。強く優しく、なによりも温かい気持ちが残る歌が場内を感動に包み、大きな拍手の輪が広がっていく。このあとはASH DA HEROの人生をノンフィクションで歌詞に描いた「Nonfiction」へ。これら3曲は2021年、5人編成のバンドとして初リリースしたアルバム『NEW WORLD ORDER』収録曲が曲順通りに披露するという展開だ。印象的なギターフレーズは音源として鳴らされながらも、4人のバンドサウンドとして確立されたアレンジが鮮烈だ。そのラストとなる「Nonfiction」で、“さあ 未来 こじ開けにいこうか” “絶望から始まる 新たなストーリー”というリリックが、いま改めて放たれる。オーディエンスに誓うように歌われたリリックに胸が締め付けられるほどグッときた。
「ここが再出発地点です。今日は骨の髄まで楽しんでいこうぜ!」──ASH
と高らかに告げると、豪華ゲストが登場するセクションへ。ASH DA HEROがアニメ『アルゴナビス from BanG Dream!』に提供した楽曲から、伊藤昌弘(Argonavis / Vo:七星蓮)と「STARTING OVER」、続いて小笠原仁(GYROAXIA / Vo:旭那由多)と「MANIFESTO」を披露。ASHとバチバチの掛け合いで歌うスペシャルコラボステージが熱い。



「熱い夜になってきたな。でも、まだまだいけるよな?」──ASH
そうオーディエンスをけしかけると、アニメ『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の劇中歌「Beast Mode」「オクターヴ」を連続投下。ステージ後方の画面いっぱいに映し出された『ブルーロック』のアニメーションとASH DA HEROのコラボによる破壊力はダイナマイト級。オーディエンスはこの日一番の大合唱を場内に響かせた。その興奮を少し沈めるようにASHが落ち着いた声でしゃべりだす。

「ギターが脱退して4人になったとき、周りからは散々“ギターレス? 無理じゃね?”、“新しいギター入れたほうが早くない?“と言われて、メンバーそれぞれ不安もありました」と告白したASH。「みんなもそうじゃない? いいこともあればクソ最悪なこともあるよね」とファンに問いかけた。「そんなとき、“クソ最悪だな”って思うと、最悪になってしまう。でも俺、いつも大事にしてるのは、クソ最悪をどうやってクソ最高にもっていくかってことを考えるようにすること。その答えがこれです。ギターレスでカッコいい音を奏でて、すぐに世界5ヵ国を回ってギャーギャーいわせて。今日は君らをギャーギャーいわせにきました」と高らかに宣言した。
「会場に来てくれた人のなかには、今日、疑心暗鬼で来た人もいると思う。でも思い返してもらいたい。ASH DA HEROはいつ誕生したバンドだっけ? 2021年、世の中が真っ暗闇に包まれたコロナ禍。いつライブができるのか、いつ声が出せるのかさえ分からないなかだったけど、“希望の光になります”と言って生まれたバンドなんですよ。最悪を最高に変えてきたバンドなんですよ。さらに言わせてもらうとな、ASH DA HEROはソロの頃から数えて10年。ASH DA HEROって旗は、そんなヤワじゃねぇんだ!! 人生クソ最悪なときに、どうやったらクソ最高に変えられるのか。人生は二つに一つ。それをお前ら自身が選んでいくんだ! 死ぬ気でかかってこいよ!」──ASH

こう会場を煽ると「Judgement」が場内に鳴り響いた。このエモーショナルな流れに言葉にならない感動が場内を沸かせた。TVアニメ『ブルーロック』2クール目のオープニング主題歌に抜擢され、ASH DA HERO最大のヒット曲となる「Judgement」がアニメ映像をバックに放たれて、フロアを熱狂させる。続けてASHが「暴れ散らかそうぜ!」と叫ぶと、「YELLOW FEVER DANCE」へ。ソロ時代からの暴れ曲がフロアを沸騰させ、そこに最新アルバム収録曲にして新たなパーティーチューン「ボタニカル・ダンス・クラブ」「ブラッパ!!」を続けてプレイすると、天井ではミラーボールが回り、フロアの両サイドの壁にまで映像が広がり、これまでにないスタイリッシュな演出でも観客を魅了した。
その映像がニューヨークのタイムズスクエアを思わせる街の風景に変わり、ビルの壁面に「Meteora」のリリックを投影しながら披露。そして終盤は、祈りが込められた壮大なスケールのバラード「Everything」。スマホのライトを灯しながら歌う観客にDhalsimとWANIも加わり「PARADE」を歌唱。ラストナンバーの「Prologue(2025ver.)」の最後にASHとオーディエンスが小指を立てて約束を交わしたあと、「俺たちが令和最強のロックバンド、ASH DA HEROでした」とASHが宣言し、この日のライブを締めくくった。


冒頭からエンディングまで、ほぼノンストップで新生ASH DA HEROによるサウンド&パフォーマンスを次々と披露していった彼ら。すべての演奏終了後は、この日に誕生日を迎えたWANIへのサプライズ。「ハッピーバースデー」の歌唱やケーキやプレゼントを手渡すなどの和やかな雰囲気は、緊張感から解放されて、全員が笑顔だ。また、この日に向けた「100日企画」として、筋トレによる肉体改造を行なってきたWANIは、今夏に向けて「本格的に鍛えて、さらにムキムキになる」と宣言。最後は、ナチュラルな表情で「ASH DA HERO、さらに加速していくんで、これからも皆さん、ついてきてください」とASHが伝え、4人が手をつないで客席へ挨拶を届けた。
<ASH DA HERO LIVE 2025 "New Chapter">はまだ終わらない。4人がステージを去ったあとは、スクリーンを通して2025年にワールドツアーを開催すること。そのファイナルを11月8日、神奈川・KT Zepp Yokohamaで行なうこと。秋にはニューアルバムをリリースすることも発表した。4人編成になったことで、ある意味では自由度を増し、スタイリッシュになったASH DA HEROは、ギターレスのミクスチャーロックというあまり例を見ない唯一無二のスタイルでバンド人生をクソ最高へと塗り替えていく。
取材・文◎東條祥恵
撮影◎堅田ひとみ
■<ASH DA HERO LIVE 2025 "New Chapter">2月1日(土)@Zepp Shinjuku(TOKYO)セットリスト
01. VANDALISM
02. Break Free
03. Get Away
04. DAIDARA
05. ~SESSION part~
06. New Revolution
07. 反抗声明
08. WARAWARA
09. ラングラービート
10. Super Sonic (WANI & Dhalsim)
11. Tengu (Sato & Dhalsim)
12. New era (Dhalsim)
13. Rockstar (ASH & Dhalsim)
14. Nonfiction
15. STARTING OVER feat.伊藤昌弘
16. MANIFESTO feat.小笠原仁
17. Beast Mode
18. オクターヴ
19. Judgement
20. YELLOW FEVER DANCE
21. ボタニカル・ダンス・クラブ
22. ブラッパ!!
23. Meteora
24. Everything
25. PARADE
26. Prologue(2025ver.)
■<ASH DA HERO “WORLD TOUR” 2025>
※詳細は随時発表
▼日本公演
09月20日(土) 大阪・BananaHall ※ASH生誕祭
10月25日(土) 愛知・Electric Lady Land
11月08日(土) 神奈川・KT Zepp Yokohama ※ワールドツアーFINAL
3rdアルバム『未定』
※詳細は後日発表
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