【ライヴレポート】黒夢、10年ぶり再始動公演の痛快な熱狂「僕らの音楽人生の始まりであり青春」

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黒夢が2月11日、神奈川・ぴあアリーナMMに熱狂の渦を生んだ。復活劇の舞台となった2月9日の東京ガーデンシアター<CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR>の追加公演にあたるこの夜は、清春デビュー30周年イヤーの正真正銘のファイナルだ。

◆<CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR> 画像16点

2月9日は黒夢のメジャーデビュー記念日。2024年3月から約1年をかけて開催された60本の30周年記念ツアー<清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩『NEVER END EXTRA』>の究極の到達点として清春(Vo)が選んだのは、10年ぶりの黒夢のライヴだった。久々の人時(B)との邂逅。表現者としての豊かさに磨きがかかったロックスター達が一体どんなパフォーマンスをみせるのか、大きな注目が集まっていた。


今回、清春と人時をサポートするのは、坂下丈朋(G)、Daiki(G / Crossfaith)、Katsuma(Dr / coldrain)から成る最強の布陣だ。黒夢の何たるかを心得ているミュージシャン達が祝宴を築き上げるという点も実に心憎い。観客は2025年型の黒夢の音楽に身を委ねるのみである。

開演前の場内には、10年ぶりの再始動を楽しみ尽くしてやろうという空気が満ちている。筆者は2月9日の公演も目撃したのだが、幻でも見ているかのようなあの夜の感動が忘れられない。この日の公演では、黒夢が今、活動しているという喜ばしい現実を祝福する雰囲気が立ち込めていた。




定刻の午後5時を5分ほど回った頃、急に場内暗転。SEのMISFITS「Last Caress」が鳴り響き、ステージ後方の“黒夢”のバックドロップが神々しく照らし出される。人時を含む楽器隊が各々の配置につくと、清春がゆっくりと舞台中央へと向かう。1曲目は「FAKE STAR」だ。清春が歌い叫び、人時の重低音ベースが轟く。今、観衆が目にしているのは、紛れもない黒夢だ。オーディエンスは、これ以上ないというほど熱烈な反応をみせている。

今回の公演ではタイトルに<CORKSCREW>を掲げていることから、1998年生まれの名盤『CORKSCREW』の楽曲がどのような形で披露されるのかにも関心が寄せられていた。そんななか、心躍ったのは、坂下、Daiki、Katsumaらの強力なサポートを得て、清春と人時がこの10年間に磨き続けてきた各々の技量を存分に発揮していた点だ。黒夢のロックンロールを聴けば、否応なしに体が反応する。これは演者にも観客にも共通して言えることだろう。

たとえば「DISTRACTION」のコーラスパートの雄々しさはアンセム的な風格を備えていたし、「CAN’T SEE YARD」ではとことんヘヴィな演奏に清春の歌と叫びが心地よく溶け込むさまが痛快だった。



「こんばんは、黒夢です。今日は予定通りに暴れるんじゃなくて、予定に反して暴れてください」と激烈な「BARTER」で観客を煽る清春。そのまま「アタマ飛ばせるか!?」と場内を挑発し、「BAD SPEED PLAY」で畳みかける。オーディエンスは休む暇すら与えてもらえないような格好だ。

「LAST PLEASURE」の快楽が客席を支配すると、ステージ上には人時のみが残され、ベースソロの時間が始まる。ベースという楽器の持つ奥深さを探求し、その面白さを観客に示す姿勢が眩しい。ここに坂下、Daiki、Katsumaが合流し、セッション開始。「MIND BREAKER」のインストゥルメンタルアレンジが飛び出し、思わず体を揺らす観客が続出した。人時の先導で坂下、Daiki、Katsumaの順で「MASTURBATING SMILE」のイントロ部分のソロ回しがなされると、観衆を焦らすかのように、清春が再びステージに姿を現わした。彼が歌い出すのを合図として、本編は後半へと突入。客席の一体感はすでに最高潮に達している。




祝祭に相応しいゲストも登場した。近年の清春ソロを支えてきた敏腕ミュージシャンであるSOIL & “PIMP”SESSIONSのタブゾンビ(Tp)と栗原健(Sax)が大きな拍手で迎えられると、「HELLO, CP ISOLATION」が原曲の持つ情緒を何倍も増幅させて響きわたる。彼らを交えて「YA-YA-YA!」「MARIA」と続いたこのブロックは、間違いなくハイライトのひとつだった。

「ROCK ‘N’ ROLL」「C.Y.HEAD」「CANDY」──こんなに愉快な流れがあるだろうか。形容し難い快楽が観客に次々と襲い掛かってくる。そんななか、清春がフロアに降り、オーディエンスに接近するという光景も。ステージに戻った清春が客電を全部点けるように照明チームに命ずる。ここからのショウは客電全開で、観客の表情がよく見える状態で進行していったのだ。清春の煽りに全力で応えるオーディエンスの目の前で「後遺症 -aftereffect-」が繰り広げられる。ここに集った全員が「Sick」で絶頂に達しながら、本編は幕を閉じた。



その数分後、清春たちが再びステージに現われた。もちろん、客電は点いたままの状態だ。「DRIVE」のメロディを聴くと、このライヴがいつまでも終わらなければいいのにと願ってしまう。けたたましいサイレンの音が鳴り響く。「お前ら、自由に生きてるか? 邪魔なものを壊してるか?」と問いかけて始まった「カマキリ」の激しさも忘れがたい。

一旦ステージ脇に退いた彼らがステージに戻ると、「7月からZeppツアーやります」と清春が宣言。舞台上で実際に“タバコの煙り吐き出し”、アコースティックギターをかき鳴らしながら歌う名曲「少年」が極めてエモーショナルだ。「歳とると“丸くなった”とか言われるけど、そう言ってる人の3倍くらい丸くないと思います。『CORKSCREW』から25年以上経った今、僕が56歳、人時君が52歳。全然やれますから」と語ると、場内は大きな拍手で包まれた。

「ロックンロールは年齢とか時代とかに物を言わせる何かがあると思います」「楽しいことをいっぱいしましょう。貯金なんてしても無駄だよ。どうせ死ぬんだから」など、今宵の清春はいつも以上に名言を連発する。



そんな彼が心を込めてメンバー紹介を始めた。昨年2024年6月に限定的復活を果たしたSADSでも本領発揮した坂下は、黒夢でも終始バッチリの呼吸で清春と人時をサポートしていた。今回、黒夢と初共演となったDaikiは憧れの存在である黒夢と同じ舞台に立つ喜びを全身で表しているかのようだった。そして10年前のラストロングツアーでも彼らを支えたKatsumaのドラムは、黒夢の歌心とグルーヴを完全に把握している。2025年型の黒夢は完璧な布陣だ。

「今日も一昨日も、僕らの音楽人生の始まりであり青春である黒夢をたくさんの人に観てもらえて幸せです。ありがとう」と清春が述べる。趣深い「NEEDLESS」が着地点に至ると同時に、「Like @ Angel」のイントロが鳴り、会場全体がさらに強く照らし出される。いつ聴いても、この歌の歌詞とメロディには涙腺が刺激される。“初期衝動に 魅せられて 走り出した 僕の感性 いつまでも 閉じたくない”の観客の大合唱に聴き入る清春。この上なく美しい光景である。この永遠の名曲の余韻が辺りを支配する頃、時計の針は午後7時半近くを指していた。



「We are ROCK ‘N’ ROLL!」と清春がフロアに向かって叫ぶ。清春と人時がしっかりと抱き合い、繋いだ手を高々と挙げた。ゲストを含むメンバー一人一人を讃えた清春が「オン ベース、人時!」と叫べば、人時が「ヴォーカル、清春!」と叫び返す。この情景を10年間、観客は待ち望んでいたのだ。

こうして夢のような追加公演は幕を閉じた。凄まじく痛快で、潔い復活劇だった。そして、あらためて気づかされた。黒夢は存在そのものがロックンロールなのだ。7月にスタートするZeppツアーの行方にも注目したい。

取材・文◎志村つくね
撮影◎青木カズロー

■<CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR>2025年2月11日(火/祝)@神奈川・ぴあアリーナMM セットリスト

01. FAKE STAR
02. SPOON&CAFFEINE
03. DISTRACTION
04. CAN'T SEE YARD
05. BARTER
06. BAD SPEED PLAY
07. LAST PLEASURE
Bass Solo〜SESSION
08. MASTURBATING SMILE
09. FASTER BEAT
10. HELLO, CP ISOLATION
11. YA-YA-YA!
12. MARIA
13. ROCK'N'ROLL
14. C.Y.HEAD
15. CANDY
16. 後遺症-aftereffect-
17. Sick
encore
18. DRIVE
19. SUCK ME!
20. カマキリ
W encore
21. 少年
22. NEEDLESS
23. Like@Angel

■<黒夢 Zepp TOUR CORKSCREW 2025>

7月19日(土) 東京・Zepp DiverCity
8月06日(水) 神奈川・KT Zepp Yokohama
8月09日(土) 宮城・仙台PIT
8月11日(月祝) 北海道・Zepp Sapporo
8月16日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
8月24日(日) 愛知・Zepp Nagoya
8月31日(日) 福岡・Zepp Fukuoka
9月06日(土) 東京・Zepp DiverCity ※ファンクラブ会員限定公演
9月15日(月祝) 神奈川・KT Zepp Yokohama
9月20日(土) 愛知・Zepp Nagoya


■『黒夢・SADS限定復活!清春デビュー30周年記念6ヵ月連続WOWOW特集』

▼清春 Music Video Collection
日時:2月23日(日/祝) 午前9:30~
放送:WOWOWで独占放送&配信
※清春のセレクトで本人インタビューと合わせてお送りするMV集
▼黒夢 Music Video Collection
日時:2月24日(月/休) 午後1:30~
放送:WOWOWで独占放送&配信
※清春&人時 の撮りおろしインタビューを交えたMV集
▼黒夢 2025.02.09 CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR
日時:3月30日(日) 午後7:00~
放送:WOWOWで独占放送&配信
※デビュー日に東京ガーデンシアターで開催した10年ぶりの復活ライブ
https://wowow.co.jp/music/kiyoharu/?utm_source=twitter_music&utm_medium=social&utm_campaign=250209_twmj_0124

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