【インタビュー】DEZERT、武道館初ワンマンを振り返り2025年の新たな覚悟を語る「自分の強さを信じる。バンドの強さを信じる」

■SORAくんは俺をヒーローになれると思ってる
■だけど俺は、そうなりたいと思ってない
──先ごろ配信スタートした楽曲「オーディナリー」についてもうかがいます。ライヴ初披露された2017年当時は、“今リリースするべきではない”という判断で封印されていたそうですね。以降、千秋さんはたびたびこの曲を「CDにして武道館で配布する」と話していて、それを実現させたわけですが、作った当時のことって覚えていますか?
千秋:めちゃくちゃ覚えてますよ。曲はいいんだけど、僕の中で何か違和感があって。メンバーにも「曲はいいけど、今?」みたいな感じがあったんですよ。アレンジに関してはそこから何回も試行錯誤したんだけど、歌詞は8年間ずっと変えずで。そのまま歌えたというのは、結構な自信になりましたけどね。
──歌いたいこと自体に変化がなかったと?
千秋:根本的に変わってない。あの歌詞が、僕の中で変わらないことなんだろうなって。
──当時感じた違和感って、何だったと思います?
千秋:素直だからじゃないですかね。僕のスタンスというか、DEZERTのスタンスが素直っていうことに対して違和感があったんですよ、当時。僕は好きな小説家がいて、その人の表現とか言い回しとか、ストーリーの持って行き方が好きなんですけど、「このストーリーの組み方めちゃくちゃいいけど、お前がそれをやる?」っていうのってあるじゃないですか。その感じがして。
──バンドだったり自分だったりが素直さを表現するべきではなかった?
千秋:当時はDEZERTというか、自分自身がDEZERTの化身だと思っていた節があるので、自分というか、自分の人生じゃないですかね。

▲千秋(Vo)
──なるほど。根本は変わらず、スタンスに変化があったということですかね。SORAさんが編集をされた「オーディナリー」リリックビデオは日本武道館公演の映像を使用したものですが、千秋さんが歌っている表情がいいんです。
千秋:そう思うでしょ? 最初はSORAくん、俺の顔アップを全カットしてたんですよ。俺が「オーディナリー」をああいう辛そうな表情で歌っていると思っていなかったっぽくて。「なんか辛そうに歌ってるけど、思うことあった?」って言われて、「いや、あの曲はそういう曲よ?」と。その解釈の違いが結構おもしろくて。
──SORAさんは最初、千秋さんの寄りの映像を使おうと思ってなかったんですね?
SORA:全然なかったです。なんなら武道館で演奏してるときも、僕が思ってる「オーディナリー」っぽいものを感じなかったから、実はあまり入り込めなかったんですよ。僕にとっての「オーディナリー」はファン目線というか。なんか気持ち悪いですけど、“DEZERTが「こっちおいで」って言ってくれてる曲”っていう感じで、僕も“おっしゃー!”っていう気持ちで叩いてたら…“なんか千秋が機嫌悪そうなんだけど”と。
千秋:そんなことないよ(笑)。なんかね、SORAくんは考え方が『週刊少年ジャンプ』なんですよ。俺は『週刊少年マガジン』…どっちかというと、親父がずっと読んでたから『ビッグコミック』派なんですけど(笑)。
──そのこころは?
千秋:SORAくんとしては、音楽をやっているなら主人公であるべきだと。SORAくんが昔から俺のことをムカついてる理由として絶対的なものがひとつあって。SORAくんは俺のことをできる奴だと思ってるんですよ。ヒーローになれる奴だと思ってる。だけど、俺はそうなりたいと思ってない。それが揉める原因で。「お前、ヒーローなんだからちゃんとしろよ」ってことなんですよ、SORAくんが言ってるのは。
SORA:そうそうそう。俺、めちゃくちゃヒーロー志向なんで。「学校行かないで仮面ライダー見ろ」っていう英才教育を受けて育ったから。
千秋:「ヒーローだから遅刻してもいい。酒飲んで暴れるのもヒーロー、それでいい。でも、『アイアンマン』のトニー・スタークはやるときやるぞ? お前やるときやんねえじゃん!」みたいなことで。でも、「違う違う! 俺、ヒーローじゃないもん! バンドマンだもん!」っていう。
──正義の味方なのか、アンチヒーローなのか、ダークヒーローなのか。でもヒーローであることに間違いはないでしょ。
千秋:はははは。「オーディナリー」の映像を撮ってくれたのも結構なプロの方なので、編集もその人に任せればいいじゃないですか。せっかく撮ってくれたんだから。でもね、あの映像はSORA君が編集することに意味があったんです。メンバーだけで完結させたかったので。
SORA:嬉しかったのが、そのチームの人も「この曲はSORAくんが編集するべきだ」って、こっちが提案する前に言ってくれて。仲がいいからっていうのもあるんですけど、本当に嬉しかったですね。
──映像を編集して気付いたこともありましたか?
SORA:メンバーみんなが、いい表情をしていて、輝いてる感じがしました。最近父によく会うんですけど、「音楽のことはよく知らないけど、きっとこれからもっとデカいところでやるんだろうなと思った」と言ってて。「なんで?」って聞いたら、「普通、緊張すると思うんだけど、メンバー全員輝いてたから。なんか安心した」って。その言葉が嬉しかったですね。他にも、編集してていろいろ気付いたんですよ。さっき「ファンもめっちゃいい表情をしてた」ってことは言いましたよね。それと、Sacchanって普段は笑顔じゃないけど、結構笑ってるんですよ。
千秋:ははははは!
Sacchan:いや、普段から笑顔だよ?
SORA:いや、素のSacchanを初めて見たっていうか。これがSacchanの心からの笑顔なんだろうなって。
Sacchan:俺、心を閉ざしてるキャラなの?
Miyako:ははははは!
SORA:俺に向かってステージ上で笑うことはほぼないって印象だったんですよ。もちろんそれは、俺のことが嫌いとかじゃなくてね。でも、映像編集してて、“Sacchan、俺のほう見てめっちゃ笑ってくれてるやん!”って。そのことにちょっと感動しちゃって。“いいバンドだな”って思いました。“みーちゃん(Miyako)、こんな表情してたんだ”とか“千秋、1曲目めちゃくちゃ固っ!”とか。
千秋:1曲目「心臓に吠える」の1文字目を間違えたんですよ。“ほら生きてみましょうか”を“ほら死んでみましょうか”と。
──わざとではなかったんですね(笑)。
千秋:そう。自分でビックリした。“普通間違える? 去年からずっとやってきた曲だし、それに1曲目の頭を”って。
SORA:千秋らしいなぁと思ったけど。
千秋:ははははは。

▲Miyako (G)
──日本武道館では、47都道府県ツアー開催が発表されましたし、2月からは早速<「study」#12-15>が行われます。2025年のDEZERTについてお訊きしますが、<「study」>は以前から定期的に行なわれているコンセプトライヴですよね。これまでのSHIBUYA PLEASURE PLEASUREから、今回は日本橋三井ホールに舞台を移して、計4日間開催されます。たしか初開催は2018年でしたね。
千秋:2017年に中野サンプラザで初めてホール公演をやって。“ホールって難しいな”と思ったんですよ。“じゃあ練習しよう、だったら勉強だな”というところから始まったのが<「study」>ですね。
──通常公演との違いは?
千秋:バンドっていうのはステージ上で、過去・現在・未来を表現するべきだと思うんです。だけど<「study」>に関しては、“過去でよくないか? 過去を練習させてくれ。来てくれれば、現在までの過程を見られて面白いよ”っていうものなので、ポジションとしてはイロモノなんですよ。“何をしてもOK、練習したい曲をやる”、それが<「study」>。
──椅子席のホール会場にお客さんが慣れるため、ということもあります?
千秋:うーん、曲を学ぶためって感じですね。椅子席でやると、“この暴れ曲ってすごく中身がないんだ! びっくり!”みたいなものが、顕著に出るんですよ。オールスタンディングは盛り上がっちゃえばごまかせちゃう。まぁそれはそれでいいんですけどね。そういう曲も“椅子があったほうが面白いでしょ?”って持っていくための練習です。<「study」>は今回“#12-#15”ですけど、今後も続けていくものだと思います。目指せ100回ですよ。いつか武道館で<「study」>をやりたいですね。
Miyako:うん。
千秋:その頃にはアルバム10枚ぐらい出してるかな。<DEZERT 武道館10days「study」>とか熱くない?
Miyako:アルバム1枚ずつ、10日間。
千秋:言ってみれば<「study」>は、アルバム再現ツアーみたいな感じだから、結構ラクといえばラクではあるんですよ。今回のライヴスケジュールは土日が取れたんですけど、いつもは平日でもいいと思ってるくらいラフだし。ゆくゆくは“あー、半年後ぐらいに武道館で4本ぐらいやる?”みたいにライトな感じでできれば。
Sacchan:そのライトさでやるなら、世界大会に出場して優勝経験とかないとキツいよ(笑)。
千秋:まぁ、<「study」 #100>は武道館でやりたいね。







