【ライヴレポート】DEZERT、<千秋生誕祭>で2時間40分の熱演「僕が音楽をやる理由にあなたがいる」

DEZERTが千秋(Vo/G)のバースデイ当日である3月2日、東京・Spotify O-EASTにて<一ノ瀬千秋生誕祭'25「セイオン!!」>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けする。
◆DEZERT 画像
2024年12月に自身初の日本武道館ワンマンライヴを成し遂げたDEZERT。大舞台でのライヴを終えた彼らは、すでに次を見据えた活動をスタートさせており、2月には過去アルバムを復習する企画ワンマン<「study」>を4日間にわたり開催した。さらにこの<千秋生誕祭>前日には、ライバル的存在であるキズとの初ツーマンライヴとなる日比谷野音公演<キズ × DEZERT This Is The “VISUAL”>に出演するなど精力的だ。
その興奮も冷めないうちに行われたのが、毎年恒例の<千秋生誕祭>。2025年は2時間40分にもわたる長時間ライヴとなったが、最も印象に残ったのは、とにかく楽しそうにステージを飛び回る主役の姿だ。後のMCで「心の底から幸せ」とまで述べた最高にハッピーな夜の模様を記したい。




黒を基調とした衣装でメンバーが一人ずつ登場すると、満員のフロアには怒号のような歓声が響き渡る。一際大きな歓声に迎えられた千秋は開口一番、「今日を選んでくれてありがとうございます。最高の夜にしましょう!」と高らかに叫んだ。1曲目は「TODAY」。先に記した武道館公演を始め、数多くのステージのラストを飾ってきた曲だが、<千秋生誕祭>では幕開けを担うことが多い。真っ先に届けた“生きててよかった そう思える夜はきっとここにある”というメッセージは、誕生日という特別な日に贈る観客への感謝と、これから始まる1年で、また“生きていてよかった夜”を作っていくんだという決意表明だったのかもしれない。
ライヴのボルテージを一気に上げたのは、「心臓に吠える」。真っ赤なライトが照らすステージで凶暴な音を放つ4人と、それに共鳴してヘッドバンギングの嵐を巻き起こす観客。まるでDEZERTを先頭に暴れ回る猛獣の集団のようだ。
「今日ここに集まった皆さんは大正解。俺たちが証明してやるから! これが俺たちの正しい音だ!」と千秋が宣言し、本公演のタイトルでもある「「セイオン」」へ。剥き出しのロックサウンドとデスボイスで荒々しく提示されるDEZERTの正義は、観客の魂を揺さぶる。その証拠に、フロアの声と拳の勢いはどんどん激しくなっていく。

前半のハイライトは、2021年の<千秋生誕祭>ぶりに披露された未音源化の新曲。陰鬱かつメロディアスで、闇の中に一筋の光が差し込む情景を想起させる絶妙なバランスは、まさにDEZERTならでは。過去曲に改めて向き合い、さらにアップデートされたパフォーマンスに、フロアからは盛大な拍手が送られた。
「Hopeless」ではMiyako(G)が鮮烈なディストーションギターを掻き鳴らし、腕を回して準備運動していたSORA(Dr)が凄まじい音圧の爆音でリズムを刻み、Sacchan(B)は凶暴なベースと繊細なピアノの両方を操る。そして、その中心で全身を使って咆哮する千秋。この曲で4人が織りなす重厚なサウンドは、DEZERTというバンドの強さを肌で感じさせてくれる。
メンバーのソロパートから始まった痛快なアッパーチューン「殺されちゃう」、ハードなサウンドとシャウトで熱狂を生む「インビジブルビリーヴァー」を続けて披露すると、この辺りからステージは千秋のダンスフロアも兼ねた空間となり、文字にし難いシュールな動きで踊ったり、メンバーも巻き込んで高く飛んだりと絶好調。DEZERTの音楽を先頭に立って楽しむ彼につられて、観客のテンションも急速に上がっていき、フロアに熱気が漂い始めた。


「ストロベリー・シンドローム」は、武道館ワンマンや<「study」>で“育ててきた”という甲斐あって、完璧に揃ったコール&レスポンスからスタート。千秋がフロアに背中を向けてSORAと共にドラムを叩いたり、SacchanがMiyakoのギターに手を伸ばして弾いたりと、さらにカオスなステージに。疾走感あふれる「カメレオン」では、曲中に倒れたマイクスタンドを直しに来たスタッフを千秋が全力でハグ。本日の主役から周囲の人への溢れんばかりの愛が垣間見える何とも微笑ましい光景であった。
また、演奏頻度の少ない楽曲を組み込んだ多彩なセットリストも、観客を大いに喜ばせた。撮影OKとなった「insomnia」では、観客がスマホを向ける中、切なくもどこか優しいメロディをソウルフルに歌い上げる千秋。ヴォーカルとしての力量が迸る姿と、3人の紡ぐ洗練されたサウンドは、カメラ越しにもきっとリスナーの心を震わせることだろう。




ライヴが終盤に差し掛かったところで、千秋が改めて今の思いを言葉にする。
「本当に幸せだと思っています。心の底から。もうチャレンジなんてしなくていいんじゃないかっていうぐらい、満たされてる。でもまたすぐ風呂の栓みたいに抜けて、その繰り返し。でもあなたの人生のお手伝いができること。僕が音楽をやる理由にあなたがいること。それが、僕が音楽をやっているすべてです。(中略)
本当はお前らの夢とか目標とか教えてほしいんだけど、そうもいかねぇから、声や素振りや、その“気”を、これからもステージに送り続けてくれよな!」──千秋
そう伝えてから届けたのは、武道館で配布した約束の曲「オーディナリー」。“君の夢も 君の色も 君の音も 君の苦しみも 僕には聞こえないけれど 確かに手は伸ばしている”という歌詞は、彼らが真っすぐにオーディエンスへ向き合う正しい姿をそのまま現しているようだ。観客は拳を上げ、声を張り上げ、その思いを真摯に受け止める。そして「「不透明人間」」で再び熱狂を生み出し、本編は終了となった。

アンコールは「飼育部屋」から始まり、「包丁の正しい使い方~思想編~」「包丁の正しい使い方~実行編~」「包丁の正しい使い方~終息編~」と“包丁三部作”を続けてプレイ。惜しげもなく披露されるレア曲の数々に歓喜した観客は、ステージに向かって一斉に飛び、頭を振り乱し、ウォール・オブ・デスでぶつかり合う。途中、体調不良になった観客がスタッフに運ばれていく中、千秋が「気にすんなよ! また待ってるぜ」と優しく声をかける場面もあった。
互いに満身創痍の中で迎えたラストは、「「君の子宮を触る」」。千秋の先導で観客はサビをシンガロングする。これまで数々のライヴでプレイしてきたハードなナンバーだが、この日はとても温かく響き渡り、多幸感に満ちた空間を作り上げていた。観客との絆を感じる感動的なエンディングと共に、ライヴは幕を下ろした。
ここで満たされた幸せな気持ちは、日常生活の中で少しずつ抜けて消えていってしまうのかもしれない。しかしDEZERTは、その音楽と言葉で、何度でも希望を注ぎ続けてくれる。それが彼らと一緒に人生を歩むということなのだろう。そんな絶対的な信頼性を強く感じた夜であった。
取材・文◎南明歩
撮影◎Megumi Iritani
■<一ノ瀬千秋生誕祭'25「セイオン!!」>2025年3月2日(日)@東京・Spotify O-EAST セットリスト
02. 心臓に吠える
03.「セイオン」
04. 再教育
05. 肋骨少女
06. 新曲
07. Hopeless
08. 殺されちゃう
09. インビジブルビリーヴァー
10. Stranger
11. ストロベリー・シンドローム
12. メリーさんの自殺未遂
13. カメレオン
14. insomnia
15. 蝶々
16. オーディナリー
17.「不透明人間」
encore
en1. 飼育部屋
en2. 包丁の正しい使い方〜思想編〜
en3. 包丁の正しい使い方〜実行編〜
en4. 包丁の正しい使い方〜終息編〜
en5.「君の子宮を触る」

■<ライブで全然やらない曲限定LIVE>
open16:15 / start17:00
▼チケット
スタンディング:¥6,600(税込)
※入場時ドリンク代別途必要

■<Miyako生誕祭'25「セットリストはMiyakoが全部決めまっちゅ♪」>
open16:15 / start17:00
▼チケット
スタンディング:¥6,600(税込)
※入場時ドリンク代別途必要

■イベントライブ出演情報
5月02日(金) 兵庫・ひめじアクリエ大ホール
open13:00 / start14:00
▼<INORAN presents -SONIC DIVE 2025->
5月17日(土) 東京・渋谷クラブクアトロ
open17:15 / start18:00
■<DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR>
06月15日(日) 埼玉・越谷EASYGOINGS
06月21日(土) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
06月22日(日) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
06月28日(土) 山口・周南LIVE rise
06月29日(日) 広島・広島Live Space Reed
07月02日(水) 岡山・岡山PEPPERLAND
07月03日(木) 兵庫・神戸VARIT.
07月05日(土) 徳島・徳島club GRINDHOUSE
07月06日(日) 香川・高松MONSTER
07月12日(土) 佐賀・佐賀GEILS
07月13日(日) 長崎・長崎DRUM Be-7
07月19日(土) 山形・山形ミュージック昭和Session
07月20日(日) 宮城・仙台darwin
07月26日(土) 富山・富山SOUL POWER
07月27日(日) 長野・長野CLUB JUNK BOX
09月07日(日) 茨城・水戸ライトハウス
09月12日(金) 北海道・札幌SPiCE
09月13日(土) 北海道・札幌SPiCE
09月15日(月/祝) 青森・青森Quarter
09月20日(土) 福岡・福岡DRUM Be-1
09月21日(日) 熊本・熊本B.9 V2
09月23日(火/祝) 大分・大分DRUM Be-0
09月27日(土) 滋賀・滋賀U☆STONE
09月28日(日) 京都・京都磔磔
10月04日(土) 秋田・秋田 Club SWINDLE
10月05日(日) 盛岡・盛岡Club Change WAVE
10月11日(土) 高知・高知X-pt.
10月12日(日) 愛媛・松山サロンキティ
10月18日(土) 三重・四日市CLUB ROOTS
10月19日(日) 岐阜・岐阜club-G
10月25日(土) 新潟・新潟NEXS
10月26日(日) 群馬・前橋DYVER
11月22日(土) 奈良・奈良NEVERLAND
11月23日(日) 和歌山・和歌山CLUB GATE
12月06日(土) 山梨・甲府Kazoo Hall
12月13日(土) 宮崎・宮崎LAZARUS
12月14日(日) 鹿児島・鹿児島SR Hall
▼2026年
01月05日(月) 東京・新宿LOFT
01月06日(火) 東京・新宿LOFT
01月10日(土) 福井・福井CHOP
01月11日(日) 石川・金沢AZ
01月17日(土) 福島・郡山HipShot Japan
01月18日(日) 栃木・HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
01月24日(土) 島根・松江 AZTiC canova
01月25日(日) 鳥取・米子 AZTiC laughs
01月31日(土) 静岡・静岡ROXY
02月01日(日) 神奈川・新横浜 NEW SIDE BEACH!!
02月14日(土) 沖縄・沖縄桜坂セントラル

■映像配信『DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」』
ライブ配信:2025年3月30日(日)19:00~
見逃し配信:配信準備完了次第~2025年4月6日(日)まで
https://t.unext.jp/r/dezert
■ライブ映像作品『DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」』
【通常盤(Blu-ray)】CRXP-10016 8,800円(税込)
【ひまわり盤(Blu-ray+2CD】14,300円(税込)
※ファンクラブ会員限定販売商品 / 購入方法は後日HPにて発表
・64Pライブ写真集
・三方背ケース仕様
・ミニジャケット・キーホルダー2種付
https://www.dezert.jp/discography/detail/5015/
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