【ライヴレポ+インタビュー】SOPHIA × SIAM SHADEメンバー集結<1995 SIAM SOPHIA-G>にピースフルな祝祭感「最高の30周年です!」

ポスト
no_ad_aritcle

デビュー30周年を迎えるSOPHIAとSIAM SHADEメンバーにより結成されたユニットSIAM SOPHIAと、ガレッジセールによる一夜限りのスペシャルライヴ<FM OSAKA 55th anniversary “1995 SIAM SOPHIA-G” supported by dwango>が2月9日、大阪城ホールで行われた。会場には全国から8000人のファンが集結し、出演者の30周年を祝福した。同公演のレポートおよび終演後のミニインタビューをお届けしたい。

◆<1995 SIAM SOPHIA-G> 画像

これぞ音楽の奇跡──2月9日、大阪城ホールにて<FM OSAKA 55 anniversary 1995 SIAM SOPHIA-G supported by dwango>が開催された。2025年にデビュー30周年を迎えるSOPHIA、SIAM SHADE (メンバーの栄喜、KAZUMA、NATCHIN、淳士)、お笑い芸人のガレッジセールが集結したこの日は、メンバーはもとより、会場に駆けつけたファンが喜びや祝福など様々な感情を持って大阪城ホールに集まったようだ。

普通に考えたら、「本当は、SOPHIA単独でもやれるところを」という栄喜の発言通り、30周年のアニバーサリーをSOPHIAの大阪城ホール単独公演として祝うこともできたはず。だが彼らは、さらにもっと楽しいことを求め、自ら茨の道を選んだ。これまでほぼ対バン経験のないSOPHIAが、同期デビュー組として昔から気になっていたものの、現在解散中であるSIAM SHADEのメンバー4名、さらにかつてGaphiaとして共演経験はあるものの、現在は各々違う場所を拠点にソロでも活動もしているガレッジセールを呼んで、3組合同で30周年を祝おうという無茶な計画をぶち上げたのだった。

「いろいろな大人の事情はこっちで全部整理するから」──SIAM SOPHIA始動発表となったBARKSインタビュー中に松岡充(Vo)がそうつぶやいていたのを憶えている。そして、迎えた本番当日。これを実現へともっていったSOPHIAも、この無茶な計画に賛同したSIAM SHADEの栄喜(Vo)、KAZUMA(G)、NATCHIN(B)、淳士(Dr)、サポートギターのRENO(G)も、ガレッジセールのゴリと川田も、さらには、現場に集まった約8000人のファン、ニコニコ生放送で参加した視聴者たちも、全員が凄かった。ライヴが始まってみたら、そのみんなの心がどんどん多幸感に包まれて、いつの間にかメンバーもファンも、“ここまで続けてきてよかった” “ずっと応援してきてよかった”という祝祭感溢れる最高のアニバーサリーイベントになっていたのだから。


   ◆   ◆   ◆

そのオープニングは、“Are you ready?”という文字がステージの画面に映し出され、10からカウントダウンがスタート。観客が”3, 2, 1“と大声で唱え、“0”までいったあとも、画面のなかでは”0.9, 0.8…“とカウントダウンは止まらず、観客たちは大爆笑。そんな関西ノリのツカミが大成功したところに飛び出してきたのはゴリエだ。ゴリエの手振りに合わせてSOPHIAns(=SOPHIAのファンネーム)を筆頭にオーディエンスが一体となってペンライトをピンク色に灯すなか、「ペコリナイト」を8人のダンサーとキレキレのダンスで歌い踊り、場内を温めていく。

「みんな、来たわね。奇跡の日が」とゴリエが呼びかけると、続けて相方の川田も登場。ガレッジセールの二人がマエストロの西山勝とシンフォニックオーケストラを呼び込むと、このサプライズにはファンも大歓声。2024年3月10日、SOPHIAが30周年イヤーの幕開けとして同会場で開催した<SOPHIA Premium Symphonic Night>を再現するように、あの日もSOPHIAの楽曲をつないで生まれたシンフォニック「Overture」が、ここで再び演奏されたのだ。重厚感ある音色が漂い、気品あるムードが大阪城ホール全体を覆う。曲が後半に差し掛かった頃、アリーナ席後方からSOPHIA側とSIAM SHADE4名側の二手に分かれ、メンバーがそれぞれ一列に並んで、通路を歩いてステージへ。


キャストがステージ上に全員揃ったところで、ガレッジセールから、「このメンバーをシャッフルしてユニットを結成する」というアナウンスがあり、場内が再び大いにざわめいた。ここで最初に選ばれたのは松岡(Vo)、KAZUMA(G, Cho)、RENO(G)、黒柳(B)、淳士(Dr)、都(Key)の6人だった。メンバーが選ばれるたびに「白黒つけます、クロ(黒柳能生)」や「Shall we ダンス? KAZUMA」などシャレたメンバー紹介が入り、それを、あの論破王ひろゆきがド真面目にナレーションしていくたびに、メンバーと観客たちは大爆笑していた。

ライヴは、ユニット“SOPHI SHADE”からスタート。聞えてきたのは、SIAM SHADEの「グレイシャルLOVE」だ。ここでは、松岡の歌にKAZUMAがハモるという初々しくも衝撃的なツインヴォーカルがいきなり誕生。さらにSOPHI SHADEを盛り上げようと、栄喜や他の演奏していない面々はステージや客席を縦横無尽に徘徊。

「いけんのか、お前ら!」と松岡がワイルドに叫ぶと、続けてSIAM SHADEデビュー曲「RAIN」へ。もう耐えられなくなったのであろう栄喜が、途中からたまらずマイクを握り、歌唱に乱入するという予定外のハプニングも嬉しい。歌い終えた松岡は「やったったで、これは!」と自信満々な表情で声を荒げた。


▲松岡(Vo) from SOPHI SHADE


▲RENO(G)、黒柳能生(B)、KAZUMA(G, Cho) from SOPHI SHADE


▲黒柳能生(B)、淳士(Dr) from SOPHI SHADE

続いては、栄喜(Vo)、豊田(G)、NATCHIN(B)、赤松(Dr) 、都(Key)で結成したユニット“SIAM SOPHIA”のステージへ。1曲目のSOPHIAの「Kissing blue memories」では、ショルダーキーボードを肩から提げた都がステージ最前へ飛び出して熱演を繰り広げた。

赤松の後ろにはいつの間にか淳士、KAZUMA、RENOが並んで、謎のダンスを踊り出す場面も(笑)。さらにSOPHIAの「brother&sister」が始まると、演奏していないメンバーたちがスマホ片手に、演奏しているメンバーをステージ上で撮りまくるなど、全員がやりたい放題の乱痴気騒ぎだ。


▲栄喜(Vo)、豊田和貴(G) from SIAM SOPHIA


▲豊田和貴(G) from SIAM SOPHIA


▲NATCHIN(B)、都啓一(Key) from SIAM SOPHIA


▲NATCHIN(B)、都啓一(Key) from SIAM SOPHIA


▲赤松芳朋(Dr) from SIAM SOPHIA

再びガレッジセールが登場すると、総勢12人のトークコーナーへ。「ユニットでの演奏をちゃんと合わせたのは、今日が初めて(←つまりぶっつけ本番)」であることを明かしたメンバーたちは、ガレッジセールに促されるように、ひとりずつ自己紹介を。SIAM SHADEのサポートギタリストRENOは「初めまして、RENOです。たくさんの人の前で弾くのは気持ちいい」と語り、淳士が「感無量! まっくん(松岡)のお陰です」と続けると、黒柳はよほどSOPHISHADEのリズム隊に手応えを感じたのか、淳士に向かって「ウチに入りませんか?」と公開スカウトするシーンも(笑)。続けて都が「俺、もっと走り回りたかった」とステージの感想を述べると、NATCHINは「クロちゃんの調子が悪かったら俺、SOPHIAに入るよ」と宣言して、SOPHIAとSIAM SHADEメンバー間のトレードや助っ人話が再び(笑)。

豊田が「SIAMSOPHIA ラブ!」と吠えると、赤松は「こんな騒がしいステージは初めて。ドラム台が揺れた」と笑いを誘い、KAZUMAは「みんなからパワーをいただいてます」と楽しげだ。さらに栄喜が、「松ちゃんが誘ってくれなかったら、こんな30周年は予定になかった」と改めて感謝の言葉を伝えると、それを受けて松岡は「曲は演奏しないと死んでいく。なので、SIAM SHADEが解散してることは分かったうえで、“一人一人の30周年を祝うパーティーにしたいんだ”ってことを伝えたら、集まってくれました」とイベントの開催を喜んだ。再び栄喜が「僕らはいろいろあったんですけど、こうしてみんな集まってくれて最高の30周年です!」と高らかに叫んだところで、トークコーナーが終了した。


この時点で既に、“お祭り気分で楽しもう”という方向へオーディエンスの気持ちがシフトしていたのが、会場の空気感から伝わってきた。いわゆる普通の対バンイベントでは見られないような催し満載のイベント前半戦だが、なぜSIAMSOPHIAの10人はこんな手の込んだエンタテインメント性の高いプログラムをぶつけてきたのか。それは、観てる人たちの心を解放していくため。この30年間、SOPHIAもSIAM SHADEメンバーも、悲喜こもごもいろいろあった。それでも両バンドが今、デビュー30周年を一緒に祝おうとここに集まった奇跡。強い結束力と絆で二組が初めてつながることができたからこそ、イベント前半のような遊び心満載の自由度の高いパフォーマンスが自然と生まれたのだろう。その姿を真っ先にファンに見せることで、彼らはファンの心をなによりも先にほぐしたかったのだと思う。こうして、心の準備が整ったところで、いよいよ次はSIAM SHADEメンバーのステージへ。

   ◆   ◆   ◆

一夜限りのスペシャルライブ<1995 SIAM SOPHIA-G>開催が2024年末に発表されて以降、両バンドのメンバーだけでなく、互いのファン同士もSNS等を通して交流を重ね、準備万端で迎えたのがこの夜だ。会場を染めるペンライトは演出として一括制御されたものではないにも関わらず、SEが始まったとたんに、まずはSOPHIAnsが一斉にライトを赤に灯して、SIAM SHADEメンバーとそのファンを激励した。

SIAM SHADEは1993年に結成、1997年リリースのシングル「1/3の純情な感情」が大ヒットを記録するものの、2002年に解散。その後も2007年、2011年、2013年、2015年〜2016年まで期間限定で再結成して活動を行った。SIAM SHADEとしての活動を完結したのは、2016年10月20日の日本武道館公演<20th Anniversary year 2015-2016 最終公演「FINAL ROAD LAST SANCTUARY」>だ。以来、SIAM SHADEの4人はサポートギタリストにRENOを迎え、9年4ヵ月ぶりにステージに立つ。


ライヴは、流れていたSEをイントロにして、2002年リリース14thシングル「Life」カップリング曲「JUMPING JUNKIE」で激しく幕開け。とたんに、体育会系の半端ない熱量を持ったサウンドが場内へと飛び散り、伸びやかでエモーショナルな栄喜の歌が、会場の最後尾まで勢いよく突き抜けていった。要塞のようなドラムセットから叩き出される淳士のドラミングは、一音目から鼓膜を震わすほどの大迫力。そこから繰り出すブラストビートが終盤に向かってどんどん加速し、マシンガンのような高速ビートでオーディエンスの頭を打ち抜いた。“今こそ俺らの番で 鶴より恩返しするぜ この情熱破滅寸前”という一節が輝かしい。

続いて、スクラッチ音が鳴り響くとファンク要素を入れた「BLACK」へ。“抱いて 抱いて 抱いて 抱いて Try it, honey” とリズミカルに畳みかけるサビで、観客の心を鷲掴みにしていく。曲中にラップを入れるKAZUMAが、その一方で繰り出すクリーントーンのギターカッティング。躍動的なスラップをはじめ、NATCHINが響かせるHR/HMだけではないベースプレイの幅広さが印象的だ。これらテクニカルなプレイを存分に見せていったところで、栄喜が次の曲をこう紹介した。

「ちょっと、いつもと違ったラブソングを聴いてください」──そして始まったのは「LOVESICK~You Don’t Know~」だった。ツインヴォーカル・スタイルはバンドSIAM SHADEの大きな個性だ。“いつもとは違った”と栄喜が敢えて伝えたのは、通常同曲のメインヴォーカルを務める栄喜と、KAZUMAの役割が入れ替わって届けられたからだ。キャッチーなメロディラインをKAZUMAと栄喜が目線を交わしながら、絶妙な掛け合いで重ねる。二つの異なる個性が合わさり、爽快感たっぷりのサウンドが勢いよく駆け抜けた。

「次は、みんなの知ってる曲をいきます。みんな歌ってくれよ」と栄喜が伝えて、大ヒット曲「1/3の純情な感情」へ。“壊れる〜”という冒頭のみ歌った栄喜が会場にマイクを向けると、観客はとたんに大声でシンガロングを響かせ、アリーナにキラキラしたテープが勢いよく放たれた。誰もが知っている楽曲パワーは一瞬にして場内をひとつにして凄まじい。Bメロでのジャンプや、サビ頭でパパンとクラップを入れるアクションが、もの凄い勢いで客席に広まっていった。さらにRENOのギターソロが始まると、その間奏途中からSIAM SHADEお得意の変拍子へ展開。キャッチーな楽曲を変拍子の起伏が奥行き深いものにしていく。

「SIAM SHADEのファンにとって、とても大切な曲です」という栄喜の言葉に続いて、「DEAR...」のイントロが聴こえてくると、ファンが悲鳴を上げるや、大阪城ホールが静まり返った。シンプルながら美しいメロディと歌詞が心の奥底を揺さぶる同曲は、支えてくれるファンに贈ったメンバーからのメッセージソングだ。“同じ瞬間(とき)を 時代を過ごせる奇跡に”というサビの歌詞が、いま30周年ライヴで放たれる。SIAM SHADEファンやSOPHIAnsへ贈られたであろう言葉に感動して、客席はとたんにウルウル状態に。しかし、彼らのライヴはここからの後半が本領発揮だ。栄喜がMCでけしかける。

「ここからはSIAM SHADEらしくいかせてもらうぞ。いいか! かかってこい!」と栄喜が威勢よく6人目のメンバー(=ファン)を煽ると、イントロからプログレッシヴなリズムとスラッシュメタルを思わせるリフが炸裂する「Allergy」へ。栄喜が熱いテンションで客席をグイグイ引っ張ると、あちこちから力強い拳が上がり、バンドもさらなる熱を帯びていく。NATCHINと淳士のリズム隊によるスラップとバスドラ連打の激しいバトルを経て、RENOのトリッキーかつテクニカルなギターソロが客席を襲うと頭をガンガン振って大興奮するオーディエンスだ。

「一つになるぞ、いいか!」と栄喜の声がますます熱くなると重低音のギターリフが鋭い切れ味で襲いかかる。メタリックなパワーチューン「D.Z.I.」だ。栄喜が熱いシャウトを響かせると、客席のあちこちから拳が突き上がる。NATCHINがベースで激情をまくし立て、淳士の足元では2バスが暴走。RENOがギターソロで叫びを上げると、ヘドバンの波がどんどん拡大していく。ライヴ定番のメタルチューンが会場の熱気の上昇を加速させた。

「ラストいくぞ!」という言葉に続いて「こい!こい!こい!こい!」のコール&レスポンス。そこにこちらもライヴの定番として知られるゴリゴリの「Don’t Tell Lies」を投下。凄まじい破壊力を持ったヘヴィグルーヴに、首を振り、拳を突き上げながら大暴れで応えるオーディエンスたち。セットリスト後半はヘヴィかつストロングスタイルのライヴアンセム3連発で攻めに攻めて、客席を圧倒する貫禄のパフォーマンスを披露した。今を生きる彼らが、重厚で美しいバンドサウンドを純粋に奏で、音楽、バンド、曲は不滅なんだということを最高の熱量で刻みつけて、ライヴは終了した。サポートを加えた5人が手を取り合って万歳。メンバーは爽快な笑顔を見せ、涙を浮かべた栄喜の表情が感動的なワンシーンとなった。そうして、その熱いパッションを次のSOPHIAへとつないだ。

   ◆   ◆   ◆


優雅なシャンソン「愛の讃歌」が流れると、場内はすぐにSOPHIAのライヴのムードへと変わる。SOPHIAnsたちがペンライトの色を一斉に青にして待ち構えていると、松岡が前髪を下ろし、ジャージのセットアップの衣装から、ボーダーのセーターとワイドデニムに着替えて登場。

メンバー5人が定位置につき、豊田の硬派なロックンロールフレーズに導かれて始まったのは「ミサイル」だった。いつものSOPHIAとは違う、ちょっと珍しいオープナー。SIAM SHADEサウンドを意識してロック色の強い曲を選んだのかと思ったが、曲が進み、松岡が狙い澄ましたようにある一節を歌ったとき、その理由が分かった。“いつも黙って待っていたのさ いつか来るべき勝負の時を”──これをSIAM SHADEの4人やファンに打ち込みたくて「ミサイル」を選んだのだろう。そうして、この歌は“ヤルかヤラレルか 答えは1つ ヤルときゃヤル そこがとりえさ”と続く。これから始まるSOPHIAのターンでは本気の勝負を仕掛けていくと宣戦布告した。

続けて「青い季節」へ。SOPHIAnsが振る青いペンライトの光とブルーのレーザービームで、辺り一面を歌詞通りに“blue place”に染め上げていったところは圧巻。そこに、サビ始まりの冒頭から“blue”を何度も連呼するコーラスが響き渡ると、ダウンピッキングで疾走する黒柳のベースと赤松の繰り出す直線的なビートに導かれて、バンド初期を踏襲したような“これぞSOPHIA”という溌剌(はつらつ)とした爽やかなロックポップチューンが客席目掛けてはじけ飛んでいく。この年齢、このキャリアで、こんな圧倒的な爽やかさを出せるのはSOPHIAだけだろう。だが、単に爽やかなだけではない。言葉には人生を重ねれば重ねるほど、解けていく計り知れない重みが仕込んである。ここでは、青い季節に手は届かないと知った大人たちが歌う、深みのある青春賛歌を届けることで、SOPHIAというバンドを体現してみせた。

赤松がカウントを入れて、豊田のオシャレなギターフレーズから洗練された軽やかなポップチューン「蜘蛛と蝙蝠」へつなげると、曲中に松岡がコール&レスポンスを。それに応えて、すぐさま息のあった大合唱をSOPHIAnsたちが届けた。ファンが結束して響かせる大きな歌声もまたSOPHIAのライヴには欠かせない大事な要素だ。

「さあさあ、下にあるんやろ? 持ってきた? もしくは買ってくれた?」と場内に向かって話しかけると、観客たちがゴソゴソとカバンの中からヒマワリを取り出して手に持つ。ヒマワリを持っていないSIAM SHADEファンに、SOPHIAnsが「どうぞ!」とヒマワリを手渡す心温まる光景も見受けられる。そして「ここに咲くヒマワリたちに贈ります!」という松岡のいつものフレーズから、始まったのはもちろん「ヒマワリ」。都がキーボードで夏の匂いをたっぷり運んでくるなか、観客たちはペンライトをイエローに変え、ヒマワリを揺らしながら客席一帯に美しいヒマワリ畑を作る。この光景はSOPHIAのライヴの宝物だ。生配信していた画面のコメント欄にもヒマワリが咲き乱れ、最後の“Lalala~”を全員で大合唱する頃には場内が優しい笑顔と温かい空気に包まれた。


この後、松岡のMCへ。「しゃべるなと言われてます。しゃべったら曲が減るシステムです」と言って、まず観客の笑いを誘う。そして、着替えた衣装は1996年リリースの「Believe」をイメージしたものであることを伝えた上で、「もう50ウン歳です(笑)。みんなも一緒に年とってるから、懐かしい曲を」と1997年リリースの「君と揺れていたい」を披露。イントロからキーボードを含むバンド編成ならではのサウンドが存分に発揮されたアレンジで、ハートウォーミングなラブバラードを届けていった。

そして松岡がタンバリンを持ち出すと、曲は「黒いブーツ」でも「夢」でもなく、まさかの「-&-」。ここでステージの空気がガラッと変わった。都が弾くキーボードの華やかなフレーズに反して、“心満たされない中、葛藤が渦巻いても、なんとか生きていくしかない。そんな空虚感に包まれながら、今日も夜が更けていき、こうして僕らは老けていく”という内容の歌を、次の「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」へとつないでいったところはSOPHIAの真骨頂だ。“こうして僕らは老けて”いった先に、どうなったのか。音が絡み合う民族音楽的なイントロを受けて、大人になったあと、さらにやんなっちゃうぐらいに人生は憂鬱になったことを歌いかける。それでも、曲が進行するにつれて、その絡まりから抜け出そうとする力強いメロディとサウンドが疾走感を生み出し、最後に希望を与えるような赤松のドラムソロが観客全員に生きるパワーを送り届け、曲をフィニッシュさせた。“これがSOPHIAの音楽”というものを見せつけた。

「1995年、みんな何してた?」と松岡が観客に問いかけた。阪神淡路大震災が起こったこの年、今日ここに集まった3組はデビューした。「あれから、日本の総理大臣もアメリカの大統領も元号も変わっていくなか、各々が自分の活動を続けてきたからこそ、今日、このステージに集まることができた」とみんなを讃えた。そして「Gaphiaって知ってます?」という言葉に続いてガレッジセールを呼び込むと、ミックスチェックの衣装に着替えた二人がステージに現われた。TV番組の企画から誕生したガレッジセール×SOPHIAのユニット、Gaphiaのコラボカバー曲「I Love you,SAYONARA」の生パフォーマンスへ。激レアステージをこの時代に観ることができた観客たちは、悲鳴を上げて大興奮だ。

その興奮をSOPHIAの代表曲「街」でさらに高めていく。オーディエンスが声を張り上げて大合唱するなか、松岡がいきなりステージからアリーナ席へと降りて、観客一人一人にマイクを向けて歌わせる。メンバーコールの後、観客はさらに歌声のボリュームを上げて、場内に一体感が誕生した。そうして、締めはSOPHIAの始まりとなった大事な楽曲「Believe」へ。場内の照明が一気に明るくなり、ここで再び壮大なシンガロングを引き起こしたあと、エンディングではメンバーと観客全員がジャンプをきめ、曲を見事に締めくくった。

   ◆   ◆   ◆



<1995 SIAM SOPHIA-G>のラストは、松岡が西山マエストロとシンフォニックオーケストラを呼び込み、ベートーベンの「交響曲第九番」へ。SOPHIAnsの歓声と演奏が情熱的に高まっていったところで、「第九」のフレーズを盛り込んだ「黒いブーツ」が始まるというシンフォニックバージョンでしか聴けない展開だ。オーケストラとバンドの迫力ある演奏に大感動。ステージにSIAM SHADEメンバー4人とサポートのRENO、ガレッジセールも勢揃いして、オールキャストでこの曲のセッションが始まった。楽器演奏するメンバーもいれば、栄喜は自分のバンドでは「やったことがない」というタンバリンを叩き、松岡とのツインヴォーカルを披露。KAZUMAは念願のガレッジセールと“エンジョイプレイ”をダンスするなど、ここでしか観られない豪華絢爛な場面が次々と繰り広げられた。

そうしてアリーナ席にブルーテープが舞い降りるなか、これ以上ないピースフルな祝祭感が会場内に広がり、<1995 SIAM SOPHIA-G>が大団円を迎えた。「ありがとうございました! 最後は、栄喜からひと言」と松岡に促された栄喜が、「最高の30周年を迎えることができました! こんな30周年を迎えられるとは全然思ってなくて、松ちゃんが声を掛けてくれなかったら、僕らは30周年をやらなかったと思う。みなさんありがとうございました!」と感謝を告げた。そして全員で手をつないで一礼し、総勢12人のメンバーが万雷の拍手に包まれてステージを後にした。


終演後、ネクストライヴとして2025年10月13日、今秋新しく東京・お台場エリアに誕生するTOYOTA ARENA TOKYOに<SIAM SOPHIA>が再集結することがいち早く伝えられると、観客たちは狂喜乱舞。詳細は今後改めて発表となる。

以下に、終演直後の楽屋裏で訊いた記念碑的ライヴの感想をお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆


【SOPHIA:終演後コメント】

「本当にやれてよかった。みんなが幸せになるのが一番だから。それはメンバーだけではなく、ファン、関わってくださった方々も含めて。それぞれ人生で関わった期間は違うかもしれないけど、“出会えてよかったな”とみんなが思ってくれてたらいいな」
──松岡充(Vo)

「愛に溢れる空間でした。ほんでね、もうマブダチっすよ、俺ら(笑)。ライヴ以外でも楽屋でずっと一緒にしゃべってたんですよ。その空気がすごく良くて。だから、今日はステージに立っても“楽しい!”しかなかった。ライヴも、楽屋も楽しい。完全に仲間。仲間と一緒に音楽を通して遊んだ感じ」
──豊田和貴(G)

「すげー面白かった! めちゃくちゃ面白かった。こんなことやれないよ、普通だったら。俺もいいものを見せてもらったよ。感動した」
──黒柳能生(B)

「僕は過去に、レコーディングに立ち会ったことがあるぐらい心に留めてたバンドなんですよ。そのバンドと一緒にステージに立てたというのが嬉しすぎて、最後泣きそうになりました。やっぱり感動ですよ。ドラマー二人が同じステージに立つことなんて、なかなかないですから。しかも、これをまた東京お台場でできるということなので、次もお楽しみに!」
──赤松芳朋(Dr)

「いや~、すごく良かったね。僕はここに至るまでの経緯を最初から松ちゃんから聞いてたので、“どうなんやろう、やってくれるのかな?”という不安はあったんだけど。それを彼らは快諾してくれて、こういうライヴができた。やっぱりエンタテインメントってすごいですね、改めてそう思いました。僕はNATCHINともRENOとも別のステージで一緒に演奏したりしてるけど、こうやって大勢のお客さんの前にそれぞれのバンドで立って。SOPHIAファンもSIAM SHADEメンバーのファンもいるっていう空間のなかでライヴできた、というのがすごくありがたいなと思いました」
──都啓一(Key)

   ◆   ◆   ◆

【SIAM SHADEメンバー:終演後コメント】

「本当に最高のかたちで30周年をやらせていただいて、ファンの方にも、オーケストラの方にも、スタッフの方にも感謝しかないです。俺らは俺らで、みんなはみんな、なんだけど、30年もやってるバンドをずっと応援し続けるって簡単なことじゃないから。そういう人たちに感謝が伝えられてよかった。本当は、SOPHIA単独でもやれるところに俺たちを誘ってくれて。本当に感謝しかないです。ありがとうございました」
──栄喜(Vo)

「すごく楽しかったですよ。ステージ上もハッピーだし、観てる人たちもハッピーなのが伝わってきました。すべては充君の行動力のおかげです。充君が声をかけて、みんなが集まって、こういう空間にしてくれたんだなと思ってます。僕らは30周年をやろうと思ってなかったんで、本当に嬉しいです。「黒いブーツ」のダンスはね、僕からガレッジセールさんに「エンジョイプレイを一緒にやってもらえませんか?」とお願いしにいったんですよ。二人も快く引き受けてくださって、ステージでもバッチリ踊れました。すごく嬉しかったです(笑)」
──KAZUMA(Vo, G)

「いきなりすごい世界線に飛び込んだ形でしたが、普段から交流のある方々がステージにいらしたので、とても心強かったです。いい意味で安心感があったから、変な緊張もありませんでした。僕はサポートとして、とにかく、メンバーとファンの皆さんに喜んでいただける演奏とパフォーマンスに徹して、僕を応援してくれてる方々からも“応援しててよかった”と思ってもらえるようなステージを見せたいと思っていたんです。結果、ライヴでは自分らしく、楽しんでやれました」
──RENO(Support Guitar)

「バンド×バンドの戦い以上のものが出せたと思います。だから、心底楽しかった。それがみんなにも伝わったと思うんですよね。始まる前からお互いのファン同士で交流が始まってたみたいですけど、それが今日でさらに深まったと思う。もしかしたらウチのファンがこの後のSOPHIAのツアーに行ったりして、そこで友達の輪がもっと広がったりする。そんなことが起きそうなイベントになったんじゃないかな。それもこれも、松ちゃんが仕切って考えてくれたからだと思います」
──NATCHIN(B)

「最高に楽しかったです! もうそのひと言に尽きるでしょう。僕自身、すごく幸せだった。大阪城ホールまで観に来てくれた人、ニコニコ生放送で視聴してくれてた人、みんなも幸せな気持ちになってくれていたら、最高だな」
──淳士(Dr)

   ◆   ◆   ◆

取材・文◎東條祥恵
撮影◎ハヤシマコ/Satoki Demoto

■公演<FM OSAKA 55th anniversary "1995 SIAM SOPHIA - G" supported by dwango>


2025年2月9日(日) 大阪城ホール
open15:30 / start16:30
出演:SOPHIA 栄喜(SIAM SHADE) KAZUMA(SIAM SHADE) NATCHIN(SIAM SHADE) 淳士(SIAM SHADE)
総合MC:ガレッジセール
主催/企画:FM OSAKA/TOY'S FACTORY
制作:Avex Live Creative Inc.
協賛:LAWSON ENTERTAINMENT Inc.

■<SIAM SOPHIA>

2025年10月13日(月祝) 東京・お台場 TOYOTA ARENA TOKYO
※SOPHIA主催イベント
※詳細は後日改めて

■ミニアルバム『GIRLS and』


2025年4月2日(水)リリース
詳細・予約リンク:https://sophia-eternal.jp/contents/906732
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
TFCC-81131~81132 ¥5,500(税込)
DVD:メンバー全員による30周年記念インタビューを収録
【通常盤(CDのみ)】¥2,420(税込)
▼CD収録曲 ※7曲収録
1. ヒマワリ
2. もしも君が迷ったなら
3. MY SELF
4. ポトス
5. little cloud
6. 街
7. サヨウノヨウナラ(新曲)

■SOPHIA<30th Anniversary SOPHIA LIVE TOUR 2025 “Girls kissing the future” and “Dancing in the circus”>

4月06日(日) 宮城・仙台GIGS
 ▶“Girls kissing the future”
4月12日(土) 北海道・Zepp Sapporo
 ▶“Dancing in the circus”
4月18日(金) 東京・Zepp Divercity(TOKYO)
 ▶“Girls kissing the future”
4月19日(土) 東京・Zepp Divercity(TOKYO)
 ▶“Dancing in the circus”
4月25日(金) 大阪・Zepp Namba
 ▶“Girls kissing the future”
4月26日(土) 大阪・Zepp Namba
 ▶“Dancing in the circus”
5月04日(日祝) 愛知・Zepp Nagoya
 ▶“Girls kissing the future”
5月05日(月祝) 愛知・Zepp Nagoya
 ▶“Dancing in the circus”
5月09日(金) 福岡・Zepp Fukuoka
 ▶“Girls kissing the future”
5月10日(土) 福岡・Zepp Fukuoka
 ▶“Dancing in the circus”
5月16日(金) 神奈川・KT Zepp Yokohama
 ▶“Girls kissing the future”
5月17日(土) 神奈川・KT Zepp Yokohama
 ▶“Dancing in the circus”
企画:TOY'S FACTORY
制作:Avex Live Creative Inc.
協賛:LAWSON ENTERTAINMENT Inc.
▼チケット
・Eternalシート:18,000円(税込)
 ※Eternal会員先行の購入者方のみアップグレードが可能
・一般指定席:11,000円(税込)
 ※Eternalシートアップグレード対象
・着席指定席:13,000円(税込)
 ※Eternalシートアップグレード対象外

この記事をポスト

この記事の関連情報