【インタビュー】WANDS、8thアルバム『TIME STEW』に熟成の味わいと時をかけるサウンド「本能のままに」

2025.03.26 18:00

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■セットリストに「FLOWER」が入るときは
■この1曲のために機材を増やす(笑)

──「Shooting star」は歌詞に関するテーマ指定もなかったということですよね。

上原:そうですね。要望はなかったので、アニメのことは意識せずに歌詞を書きました。その歌詞自体も、なにかを狙ったということはなく、デモを聴いたときにフワッと浮かんだ歌詞のイメージがあって。そこから今の自分の気持ちだったり、伝えたいことを膨らませていった結果ですね。

──嘆いたり悲しんだりするよりも、大切なものを愛したいという前向きな思いを歌っているようです。

上原:タイトルの「Shooting star」というのは人生を表しているんです。一瞬で過ぎ去ってしまう人生を、どういう考え方で生きていくべきなんだろう、ということがテーマになっています。

──直訳すると“流星”ですが、そういう意図があったんですね。

上原:この曲にはいろんな含みがあって、人との繋がりも書いていますが、あくまで一人の話というか。それぞれの人生一つ一つの話というか。“あなたとならば美しい”というワードもあるけど、主軸はそこではないんです。人生って、自分の思いどおりに生きていける人なんかいないわけで、なかなか思うようにいかないことが常なわけですよ。そんな中で、どう生きていくのか。だから、最初は自分自身に言い聞かせるように作詞する、みたいなところがありましたね。今までを振り返ったり、今を見つめて、自分を励ますという。もともとはそういうところから始まって、最終的にはいろいろな人に向けたメッセージとして仕上げました。

──パンデミックや震災、戦争など生死を考える状況が続いてますので、“今をどう生きるか?”という問いは誰もが少なからず意識することでしょうし、幅広いリスナーに響く歌詞になっていると思います。ギターについてはいかがでしたか?

柴崎:「Shooting star」のギターはピッキングが難しいところがありまして。間奏部分の3連リフなんですけど、オルタネイトピッキングで弾くのがちょっと難しかったんです(笑)。あと、間奏部分はリフ→単音ソロ→リフという展開になっていて、それがいい感じに仕上げることができたなと。

──単音ソロの後にリフが挟まることで、その後に出てくる3連フレーズのハーモニーの華やかさが一層際立っているようです。

柴崎:そのハーモニー部分は、どんなソロにしようかなと考えながら、まず1本目を弾いたんですけど、“途中の3連のところをハモったらいいかも”と思ったんですよね。ハーモニーを入れたてみたらQUEENみたいになって、“すげぇいい!”って採用しました。

──そのハーモニーの華やかさが歌詞にフィットしていると思います。

柴崎:光が射して救いが見える感じになっていますよね。でも、歌詞とフィットしたのは偶然です(笑)。偶然が多いんですよ、WANDSは。

──バンドの状態がいいことがわかります。続く4曲目の「WE ALL NEED LOVE」は温かみや煌びやかさを纏ったスローチューンです。

柴崎:この曲は、自分の中にゴスペル風味があって、テンポ感とドラムのパターンが浮かんできたんです。なんていうか…そのデカい感じが第一歩でしたね。そこから形にしたんですけど、サウンドとメロディーしかない状態って、その曲の具体性がまだないじゃないですか、メッセージが乗ってないから。そこに歌詞のテーマが乗っかって、楽曲の在り方がさらに明確になって、愛おしさが倍増しました。

上原:デモを聴いてみんなで歌うような印象を受けたので、そういうものにしたいと思って書いた歌詞ですね。テーマとしては、愛。今の世の中には愛が足りないって感じるんです。SNSとかネットを見ると騙し合いや誹謗中傷、批判だったりが渦を巻いてる。現代に限らず、どんな時代も苦しさや辛さ、お金がなくてひもじいとか、いろいろな苦労があるわけですけど、そこに愛があれば晴れやかな気持ちになると思うんです。僕は最近、“幸せとはなんなのか?”って考えることが多いんですけど、金があれば幸せになれるかといったら、そんなこともない。自分たちが必要としているものとはなんだろうと考えた時に、やっぱり愛なんですよ。世の中に愛が足りないと思ったんです。

柴崎:本当にそうだね。

上原:一口に愛といっても、いろいろな愛があって。ただ単に恋愛の話をしているわけじゃない。我が子への愛だったり、家族愛だったり、友達への愛情だったり、他人に対する気遣いだったり。そういったこと全てが愛だと思っていて。人は愛があるだけで満たされた気持ちになるし、がんばれたりする。たとえ絶望的な状況だったとしても、愛さえあれば見える景色が全く変わってくる。最近はそういうことをすごく考えていて、歌詞にしたものが「WE ALL NEED LOVE」です。

──そういう歌詞をみんなで一緒に歌えるライブも楽しみです。サウンドやプレイについてはいかがでしょう?

柴崎:僕はDef Leppardが好きなんですけど、「WE ALL NEED LOVE」にはDef Leppardテイストのギターサウンドが合うんじゃないかなと思って、クリーントーンと歪んだ音をアンサンブルさせる形で構築しています。クリーントーンと歪んだ音で別々のフレーズをプレイするのではなく、基本的にユニゾン。アレンジの初期段階では、それぞれ別々のプレイだったんですけど変えたり。サビも最初はピアノやシンセを鳴らしていたんですが、ギターの在り方を変えることによって、その必要性を感じなくなったのでカットしました。

──ギターサウンドといえば、「WE ALL NEED LOVE」は甘くて太いソロトーンも絶妙です。ギターソロはファズを使われたのでしょうか?

柴崎:いや、ファズではないですね。モデリングアンプのFractal Audio Systems Axe-Fxで、僕がソロを弾く時に好きで使っているアンプモデルにファズ味があるんですよ。

──なるほど。

柴崎:この曲のギターソロは、途中でボーカルのフェイクが被さるじゃないですか。それが入ったことによって、入口のフレーズだけちょっと変えたんです。最初は休符を待ってから弾き始めていたんですけど、それだとしっくりこなくて。ボーカルのフェイクを変えるか、ギターソロの入口を変えるかとなったときに、小節頭からソロを弾いたらちょうどいいかもと思って、弾いてみたらいい感じになりました。

上原:僕のフェイクを活かしてくれてありがとうございます(笑)。伸びやかに歌わせていただきましたね、すごく。

──この曲に限ったことではありませんが、温かみがありつつ力強さや男の色気なども感じさせる上原さんのボーカルは本当に魅力的です。

上原:この曲に関しては、上原大史を存分に体現したというか。最近は自分で上原大史というボーカリストがわかってきた感じがあるので。

──アウトロのボーカルとギターのかけ合いや、「FLOWER [WANDS第5期ver.]」のギターとボーカルでさらに熱くなっていくアウトロなどは、二人が並び立っている感がさらに増しているように感じられます。5曲目の「FLOWER [WANDS第5期ver.]」は、尖りと暗さを感じさせながら高揚感もあるという独自のテイストが印象的です。

柴崎:2年連続でツアーのセットリストに入れている曲なんですけど、上原がめちゃくちゃカッコよく歌うなって思ってまして。ファンの方々からの反応もいいし、ぜひ音源化してくださいという声が多かったので、今回収録しました。

──「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」と「FLOWER [WANDS第5期ver.]」は古びた感じが皆無で、2020年代にフィットする音楽に仕上がっています。WANDSの楽曲は時代を超越する普遍的な魅力を備えていることを実感しました。

柴崎:時を超えると言っていただきましたが、僕自身、思ったよりも意外とアリな感じになっているかなと思います。ただ、この曲のイントロのギターはちょっと苦労したんですよ。というのも、現在の機材では説得力のある音にならなかったんですよね。それで当時使っていたイーブンタイドのH3000 Harmonizerというラック式エフェクターを引っ張り出して弾いたら、これだ!っていう音になったという(笑)。

──H3000とは懐かしい。イントロのギターが鳴った瞬間に世界観が生まれています。

柴崎:強烈な音色ですよね。ツアー時は別の音色で演奏していたんですけど、いざレコーディングして作品として残すとなったときに、“ちょっと弱いな。これと違う音だと「FLOWER」が始まった感じがしない”と思いましたから。

上原:今後のライブではどうするんですか?

柴崎:セットリストに「FLOWER」が入っているときは、H3000を持っていくよね。この1曲のために機材を増やすという(笑)。

──さすがです(笑)。

柴崎:ギターソロも、今だったらこう変えたいなというところを変化させたくらいで、基本的なフレージングは変えていません。エンディングソロはちょっと変えたかな。

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