【ライブレポート】ACIDMAN、14度目の<LIVE in FUKUSHIMA>に信念「3.11という日が少しでも楽しい一日に」

2025年3月11日、いわき市文化センター大ホールにて<ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA 2025>が開催された。
◆ACIDMAN 画像
このライブはACIDMANが東日本大震災の翌年以降、毎年3月11日に福島県で開催しているライブで、今年で14回目を迎えた。この地に思いを寄せるバンドとしての信念と使命感を感じる年月だ。なお、収益は全て『東日本大震災ふくしまこども寄附金』へと寄付される。
今年も、平日の地方公演でありながら満員御礼。生命・宇宙・自然をテーマに歌うACIDMANの、この日この土地でのライブに毎年特別な思いを抱えて足を運ぶファンが多いということが分かる。今年のACIDMANは、どんな景色を魅せてくれるのか。


暗転と共にお馴染みのSE「最後の国」が流れ、この日を心待ちにして集まった多くのファンが、大きな歓声と共に高まる期待をハンドクラップに込め一体となってメンバーを迎え入れる。
1曲目に披露されたのは「造花が笑う」。幕開けに相応しいスピード感のあるナンバーで、会場の熱気が一気に高まる。
2曲目、エッジの効いた歪んだベースリフから始まったのは2015年リリースの10thアルバム『有と無』収録曲「star rain」。ミドルテンポの唸るようなサウンドでたたみかける。ライブで披露されるのは約9年ぶり。予想のつかない選曲に悲鳴にも似た歓声が上がり、早くも今日のライブは一筋縄では行かない予感を漂わせる。
続いてライブ定番曲「FREE STAR」では、軽快なダンスビートで会場が一体になっていく。間奏でステージ前に出て会場を見渡す大木に応えるように、客席も大きく手をあげる。今年もまたこの地で再会出来たことへの喜びと感謝を、お互いが伝え合っているようで美しい瞬間だ。



「原子力発電の危険性を知らずに、福島県で作られた電気を東京で使い続けていた事を反省し、せめて僕たちのファンの方だけでも“3.11”という日が少しでも楽しい一日になってくれたらと思い、このライブを続けています」──大木伸夫
改めて大木からこのライブの趣旨が説明される。
「原発賛成、反対、いろんな意見があっていいと思います。ただ、考える事を忘れないようにしたい。そして今日のこの瞬間、この場所が最高の一日になりますように」──大木伸夫
大木の実直で真摯な姿勢が伝わるそんなMCに続いて披露されたのは「式日」。<LIVE in FUKUSHIMA>で幾度もプレイされてきた特別な曲でイントロが鳴らされた瞬間に大歓声があがる。



続いて、ドラマ『ダブルチート』の主題歌として起用された「白と黒」。ファンク、ジャズ、プログレッシヴロックが入り混じり、様々なジャンルをクロスオーバーして表現するナンバーでACIDMANの音楽性の広さが詰まった良曲だ。
「震災に対して、それぞれいろんな思いがあると思います。ただどんなことがあったとしても時間は残酷に過ぎていく。そんな中でも僕らは前に進んでいかなければならない。そんな歌です」──大木伸夫
その言葉に続くのは「WALK」。ライブで演奏するのは実に11年ぶり。今日は久々な曲が多く聴ける。やはり特別な一日だ。アコースティックギターの優しい音色と共に、大木の温かな歌声が空間を包んでいく。弱さも強さも内包したその歌詞は、無限の波紋となって会場に響き渡った。シンプルかつ美しいメロディで会場を魅了出来るのもACIDMANの強さだ。
さらにアコースティックの空気感を広げるように「レガートの森」を披露。後奏での3人のエモーショナルが解き放たれたグルーヴに会場が飲み込まれていく。繰り返されるループサウンドの度に益々熱気を帯びていき、最高潮に達したのちの突然の静寂。圧倒された会場からは、歓声と共に曲が終わっても鳴り止まない拍手が送られた。



そしてここで大木から、2023年、惜しまれながら他界した坂本龍一氏との出会い、想いが語られる。
「僕は昔から坂本さんの大ファンで、そして光栄なことに坂本さんもACIDMANを好きでいてくれました。僕たちの楽曲に2曲ピアノで参加してもらい、さらに一緒にライブもできて、夢のような時間を過ごさせてもらいました」
「僕が音楽を続けていれば坂本さんの音もずっと鳴り続ける事が出来る」──大木伸夫
そんな追悼の意味も込めて披露されたインストゥルメンタル楽曲「風追い人-前編-」は、坂本龍一氏の音と共に神聖な音像を纏いドラマティックなストーリーを奏で、今年もこの地で祈りのように鳴り響いた。


演奏後のしばらくの静寂の後、大木の美しい響きのギターコードから奏でられたのは「最後の星」。“僕らは行けるだろう 遠くまで その手を離さないでいて”──エモーショナルに歌い上げる大木の気持ちに応えるようにオーディエンスからも手があがる。歌い手と聴く人全ての願いが一つになるような美しい光景だ。
そして力強いドラムフィルから放たれたのは最新アルバムから表題曲でもある「innocence」。彼らの真骨頂とも言える、切なくも力強く壮大な世界に会場は満たされていく。
「こうやって毎年ライブができるのも、来てくれるみんなのおかげです」と何度も感謝を伝える大木。そして、「あっという間の人生、その一瞬一瞬がみんなにとっても僕らにとっても輝けるものでありますように!」
そんな声から始まったのは2024年大ヒットを記録した、映画『ゴールデンカムイ』の主題歌「輝けるもの」だ。先ほどまでのロックバラードから一転、スタートの瞬間から最高速に到達するその圧倒的な熱量。鬼気迫るようなバンドのグルーブに観客も突き上げる拳と歓声で応えライブは一気にクライマックスへ。


そして本編最後を締め括ったのは最新シングルであり『連続ドラマW ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』最終話エンディングテーマに起用された「sonet」だ。どこまでも広がる大自然を想起させる音像と共に、“僕らそこでまた笑い合おうぜ”──そう歌う大木とファンとの間で、“またこの地で会おう”という約束が結ばれているような感動的な雰囲気に満たされ、本編は幕を閉じた。
間も無く客電が付き、終演後のBGMが流れる。今年はこの美しい本編のまま終演するのだと、納得した。
しかし拍手が鳴り止む気配はない。ここにいる誰もが、ACIDMANを求めている。しばらくしてメンバーが再び登場。
「本来アンコールをする予定ではなかったけれど、1曲だけ」と始まったのは、やはりこの曲しかないだろう、「Your song」。今年も“You're O.K.”の大合唱と共に<ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA 2025>の幕は閉じた。


収益を寄付するという特性上、最小限の照明や演出で行われる<LIVE in FUKUSHIMA>だが、だからこそACIDMANの楽曲が持つ力がより鮮明になる。深くて濃密、それでいてバラエティに富んだ、素晴らしいライブ体験。人の命は儚いけれど、また来年もここで会えますように。心からそう思える最高の1日だった。
そんな彼らの“これぞACIDMAN”なベストライブツアー<This is ACIDMAN 2025>が3月20日よりスタートした。過去最大規模の全国10ヵ所で開催され、ツアーファイナルは10月26日、7年ぶり7度目の日本武道館公演が決定している。事前のセットリスト公開や楽曲投票など、独自の楽しみも多いワンマンライブ。こちらも大いに楽しみたい。
撮影◎Victor Nomoto – Metacraft
■<ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA 2025>3月11日(火)@福島・いわき市文化センター大ホール SETLIST
01. 造花が笑う
02. star rain
03. FREE STAR
04. 式⽇
05. ⽩と⿊
06. WALK
07. レガートの森
08. ⾵追い⼈(前編)
09. 最後の星
10. innocence
11. 輝けるもの
12. sonet
encore
en1. Your Song
▶公式プレイリスト:https://lnk.to/20250311

■<ACIDMAN LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025">
04月13日(日) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
04月26日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
05月04日(日/祝) 福岡・Zepp Fukuoka
05月25日(日) 宮城・SENDAI GIGS
06月13日(金) 神奈川・KT Zepp Yokohama
06月21日(土) 新潟・NIIGATA LOTS
07月12日(土) 北海道・Zepp Sapporo
07月18日(金) 埼玉・ウェスタ川越
10月26日(日) 東京・日本武道館

■日本武道館公演YouTube無料公開
無料公開 / 先着先行受付期間:2/1(土)12:00〜2/28(金)23:59
▼<A beautiful greed> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:3/1(土)12:00〜3/31(月)23:59
▼<ALMA> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:4/1(火)12:00〜4/30(水)23:59
▼<新世界> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:5/1(木)12:00〜5/31(土)23:59
▼<有と無> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:6/1(日)12:00〜6/30(月)23:59
▼<Λ> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:7/1(火) 12:00〜7/31(木)23:59
■<ACIDMAN presents SAI2022 PHOTO EXHIBITON -online->
URL:https://sai-fes.jp/photoexhibition/
▼展示アーティスト ※50音順
ACIDMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / 氣志團 / THE BACK HORN / the band apart / SiM / ストレイテナー / sumika / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / DOPING PANDA / Dragon Ash / back number / BRAHMAN / マキシマム ザ ホルモン / MAN WITH A MISSION / Mr.Children / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS +
▼MC ※50音順
岩尾望(フットボールアワー) / 大抜卓人 / ジョージ・ウィリアムズ / ジョー横溝 / ダイノジ / Boo / 藤田琢己
▼フォトグラファー
AZUSA TAKADA / 石井麻木 / 枝 優花 / 久野美怜(SIGNO) / 酒井貴弘 / Taka “nekoze photo” / 三吉ツカサ(Showcase) /浜野カズシ / 藤井 拓 / 増田彩来 / 山川哲矢 / Victor Nomoto(METACRAFT)
協力:東急不動産株式会社 / UMIDASU CO.Ltd.

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