【レポート】由薫、ツアー<Wild Nights>ファイナルに深く美しい夜「私の音楽はライブで生きはじめる」

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3月にリリースしたデジタルEP『Wild Nights』を携えて、由薫が東名阪ツアー<YU-KA Tour 2025“Wild Nights”>を行なった。4月17日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催された同ツアーのファイナル公演の模様をお届けしたい。

◆由薫 画像

雷鳴が轟く嵐のなか、由薫がエミリー・ディキンソンの詩「嵐の夜よ!(Wild Nights! Wild Nights!)」を朗読するSEでスタートしたライブは、自身の心の内のピュアな叫びに耳を澄まし、その叫びを臆することなく大好きな歌で表現する、シンガーソングライターとしての原点に立ち返るようなステージとなった。


照明も深いブルーなど夜のトーンを思わせる色味を基調に、サーチライトのような光が映える。そこに立つ由薫はチェック柄のジャンプスーツで、4人のバンドメンバー(伊吹文裕[Dr]、熊代崇人[B]、小川翔[G]、岡本基[Key])もそれぞれチェック柄のシャツ姿。由薫曰く「パジャマパーティのようなスタイル」には彼女のお茶目さが出ていたが、バンドによるウネリを持ったサウンドや静かに熱を帯びる夜の空気を自由にたゆたい、時に抱きしめるように歌う由薫の歌は、一段とエモーショナルに響いた。

EP『Wild Nights』収録曲「Dive Alive」でスタートしたライブは、音源ではエレクトロなサウンドが、生のバンドへと落とし込まれてズシリと重く、リバーブの効いたビートと憂いを帯びたボーカルが観客を掴んでショーの世界へと引っ張り込んでいく。続く「Sunshade」での重厚なバンドアンサンブルと感情を伸びやかに解き放つ由薫のボーカルは、早くもクライマックスへと向かうダイナミックさで、観客の拍手が高鳴った。

一転して静かなる情熱を織り上げていくような「Silent Parade」が美しく響く。この「Silent Parade」には、「何かを新しく始めるときに、いかに信念を持って歩んでいけるか。最初の一歩はひとりでも、その未来には共に歩いてくれる人がいる。それを信じて歩んでほしいという願いを込めた」とBARKSインタビューで語っていた由薫。迷いや葛藤、臆病さを抱えながらもシンガーソングライターとして実直に歩んできた由薫の横顔が映るような曲だろう。自身初のLIQUIDROOMという会場で、埋め尽くされたフロアを包み込む「Silent Parade」は格別だ。


「素敵な、激しい嵐の夜を味わってほしいと思います」と改めてここで挨拶をした由薫は、「ゆったりと聴いてもらえたら」と「Fish」へ。EP『Wild Nights』では海をモチーフに彼女の心象風景が描かれる曲が多いが、インディーズ時代の「Fish」もまた然り。心の拠り所となる故郷・沖縄の海や、命の源である大らかさも、猛る怖さも持ち合わせた海は、由薫の原風景としてあるものだ。その海のなかを模したようなゆらめく照明のもと、音に体を委ねるようにして「Fish」が披露された。そして、ピアノのアウトロの余韻のなか、EP『Wild Nights』からの「Mermaid」、「ミッドナイトダンス」へと続く。幻影的なムードから、高いボルテージで駆け上がっていくバンドアンサンブルや熱いギターソロにフロアも熱を帯びて、由薫の「Thank you!」の声に大きな歓声が上がった。

また、はじまりのワクワクや緊張感と同時に、時に日々にギリギリで心に余裕がなく、孤独な切なさも感じてしまうという春の季節について語りながら、「新しい春への祝福も込めて歌います」と「勿忘草」、そして「星月夜」の2曲を披露した。ゆったりとしたピアノの伴奏とアコースティックギターと歌で、一言一言を大事に置いていくような「勿忘草」、ヒットチューン「星月夜」もまた景色が抒情的に色づき、星が静かに瞬くような演奏に乗せて、柔らかなボーカルやファルセットを聴かせた。


メンバー紹介を経ての後半は、エモーショナルな前半の雰囲気とは一転して、由薫もギターを持ち、パジャマパーティに突入。優しく、晴れ渡っていくようなボーカルに観客が自然とハンドクラップした「Clouds」、「まだ全然足りないな」と煽ってファンキーな「Rouge」で盛り上げ、バンドメンバーのソロ回しに由薫も歓声を上げながら、観客の体を揺さぶっていく。そしてEP『Wild Nights』収録のポップロックチューン「1-2-3」では、コーラスパートにフロアから声や手が上がって、会場全体がフレンドリーなパジャマパーティと化していくようだ。

ライブやステージを重ねてきた自信、また1stアルバム『Brighter』(2024年1月)やEP『Sunshade』(2024年9月)、そして最新EP『Wild Nights』を制作していく過程で、自身が歌う意味や表現の原点と何度も向き合い、掘り下げてきた、その繊細でタフな時間が、ステージで自由に伸びやかに笑顔で躍動する今の由薫につながっているのだろう。ライブごとに、シンガーソングライターとしてはもちろん、人間としての魅力が増しているようだ。<YU-KA Tour 2025 “Wild Nights”>は特に、彼女の内からエネルギーが迸るのが目に見えるようでもある。その姿に、観客の興奮もぐんと上がる。


ライブは残り2曲であることを明かしたところで、由薫は改めてEP『Wild Nights』に込めた思いをMCで語った。学生時代、本格的に音楽で生きていくことを決意するきっかけとなったアメリカの詩人エミリー・ディキンソンの詩集を手にしたまま。「エミリー・ディキンソンが生涯、世に広めようとか誰かのためとかではなく、自身の内なる声をしたため続けた純度の高い表現が、自分が音楽を続ける勇気となった」という。「今回のライブのSEも初めてひとり、自分の部屋で作ったもの」だと語り、「それもまたディキンソンからもらった勇気があったからこそ、自分で作り、披露できた」のだという。EPリリース時のBARKSインタビューでは、「『Wild Nights』には“剥き出しの心”というテーマもある」と語っていたが、朗読のSEに始まったステージには、その激しく健やかなパッションが貫かれていた。

MCで改めて詩集をめくった由薫。「昨日読み返していて、とても心に刺さった詩があったので、読んでいいですか?」と、静かに読み上げたのは「言葉は死んだ(A Word is dead)」だ。その詩になぞらえるように、「私の音楽はリリースして初めて、生きはじめる。ライブで生きはじめる」と話して、「ツライクライ」、続けて、スウェーデンの現地クリエイターとコライトしたEP『Wild Nights』収録曲のなかでも、「とても自由に自分の感覚や感性を形にできた」という「Feel Like This」をスケール感たっぷりに歌って本編を締めくくった。


アンコールは「Crystals」、そして「みんなにも歌ってもらいたい」と「もう一度」でシンガロングを起こした由薫。曲の終わりには共にツアーを駆け抜けたサポートメンバーとジャンプで盛り上がり、再度メンバー紹介をしてバンドを見送った。

ひとりステージに残った由薫は、8月から自身初の弾き語りツアー<UTAU>の開催を発表した。そしてアコースティックギターを手に取ると、<UTAU>の予告編として、弾き語りで「brighter」を披露した。1stアルバム『Brighter』のラストに収録された同曲は、「さまざまな、大事な記憶を思い浮かべながら、誰かひとりに語りかけるような気持ちで作った」と以前のBARKSインタビューで語られたものだ。ライブの最後の最後に、観客と一対一で自身の鼓動を伝えるような親密な距離感にハッとする。音楽の高揚感と生々しい息吹をリアルに感じられる、深く美しい夜だった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎南部恭平

■東名阪ツアー<YU-KA Tour 2025 “Wild Nights”>4月17日(木)@東京・LIQUIDROOM セットリスト

01. Dive Alive
02. Sunshade
03. Silent Parade
04. Fish
05. Mermaid
06. ミッドナイトダンス
07. 勿忘草
08. 星月夜
09. Clouds
10. Rouge
11. 1-2-3
12. ツライクライ
13. Feel Like This
encore
en1. Crystals
en2. もう一度
en3. brighter

▼TOUR SCHEDULE
3月29日(土) 大阪・Live House ANIMA
3月30日(日) 愛知・NAGOYA JAMMIN'
4月17日(木) 東京・LIQUIDROOM

■<弾き語りツアー 2025 “UTAU”>


▶8月15日(金) 広島・音楽喫茶ヲルガン座
open18:30 / start19:00
https://organ-za.com
※入場時に別途1order 別途要“ドリンク / フード等”
▶8月16日(土) 愛媛・萬翠荘
open17:00 / start18:00
http://www.bansuisou.org/
※会場の駐車場は利用可能。満車の場合は周辺のコインパーキングにて。
▶8月17日(日) 香川・高松市美術館 講堂
open17:30 / start18:00
https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/
▶8月22日(金)京都・フォーチュンガーデン京都
open18:00 / start19:00
https://www.fortunegarden.com/
※フォーチュンガーデン京都内のチャペルにて開催
※入場時ドリンク代別途要(当日受付にて現金でお支払い)
※ドリンクはチャペル内に持ち込み不可
▶8月23日(土) 愛知・TT"
open18:30 / start19:15
https://ttalks.jp
※入場時ドリンク代別途要
▶9月06日(土) 宮城・仙台 カフェモーツァルトアトリエ
open18:45 / start19:15
https://mozartatelier.jugem.jp
※入場時ドリンク代別途要
▶9月13日(土) 熊本・tsukimi
open17:30 / start18:00
https://tsukimi-3.jimdosite.com
※入場時ドリンク代別途要
▶9月14日(日) 福岡・LIV LABO
open16:30 / start17:00
https://livlabo.com/
※入場時ドリンク代別途要
▶9月20日(土) 石川・金沢もっきりや
open17:30 / start18:00
https://mokkiriya.com
※入場時ドリンク代別途要
▶9月21日(日) 大阪・島之内教会
open17:00 / start18:00
https://www.shimanouchi-church.org/
※会場内飲食禁止。お水のみ持ち込み可能
▶9月28日(日) 東京・スコットホール
open17:00 / start18:00
https://www.hoshien.or.jp/
※会場内飲食禁止。お水のみ持ち込み可能

▼チケット
自由席(整理番号付):¥5,000(税込)
自由席(整理番号付) / 特典付き:¥6,500(税込)
自由席(整理番号付) / ペア割:¥9,500(税込)
※自由席(整理番号付)のチケットを2枚購入された場合は、ペア割は適応されません。尚、ご購入後のペア割のご対応はできませんので、予めご了承ください。
※特典はサイン入りポストカードと特典付きチケットでしか手に入らないグッズの引き換えになります。
※特典のお渡しは当日会場のみとなります。ご来場いただけなかった場合の後日お渡しや個別での発送対応はお受けできません。あらかじめご了承ください。枚数制限:お一人様各公演4枚まで
年齢制限:3歳以上はチケットが必要(2歳以下は入場不可)
※紙チケットのみ取り扱いになります。
※開場時間前の会場へのご入場はご遠慮ください。
※開演中は撮影・録音禁止です。
(問)インターグルーヴプロダクションズ https://forms.gle/gMFvfrjTxZVQh6GA9
【オフィシャル先行受付(抽選)】
受付期間:4月17日(木)21:00〜4月27日(日)23:59
受付URL:https://l-tike.com/yu-ka/
詳細:https://yu-ka.jp/news-detail.php?id=299

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