【ライブレポート】サクソン、時代を牽引してきたヘヴィメタルの真骨頂

イギリスを代表するヘヴィメタルバンドであり、NWOBHMのレジェンドと言えるサクソンが約14年ぶりの日本公演を行った。多くのバンドに影響を与え、現在も精力的な活動を続けている彼らは、バンドの象徴的なアルバムである『Wheels of Steel』の45周年ツアーを遂行中だ。本来であれば昨年2024年の11月に決定していた来日公演だったが、延期の振替公演となった事もあり「待ってました!」な空気が会場を包む。

サクソンコールが湧き上がる中、バンドの最新作である『Hell, Fire and Damnation』アルバムのタイトルトラックから圧倒的な貫禄と存在感を持って登場した彼らは、ビフ・バイフォード(Vo)を中心に、ビフと共にほぼ生涯のドラマーとも言えるナイジェル・グロックラー、ニブス・カーター(B)、ダグ・スカーラット(G)、そして新しく加入したもう一人のギタリストであるブライアン・タトラーが次々と衰えないパフォーマンスを見せてくれた。

ダイアモンド・ヘッドで名を馳せているブライアン・タトラー(G)のプレイも今回の見どころだった。彼も参加した最新アルバム『Hell, Fire and Damnation』は、益々のバンドの力強さを示す完成度であったし、近年の作品はどれもソリッドで衰えというものがこのバンドには見当たらない。むしろ進化していると言っていい。そしてライブのステージでは更に強力で、これまでも今回も彼らのステージでがっかりした事は一度もない。
東京公演の2Daysは、前半のセットリストを大きく変更した内容となったのも驚きだった。東京初日では、「Power and the Glory」や「Dallas 1PM」「The Eagle Has Landed?」等に最新作からの「Madame Guillotine」「1066」も挟んだいた。東京2日目では、「Dogs of War」「Soild Ball of Rock」「Never Surrender」に「Broken Heroes」、最新作からは「There's Something in Roswell」もセットインした。こうした往年の名曲と最新作を上手く散りばめて演奏されるのもサクソンの定番であり、彼らの音楽がどの時代の作品も誇れるものであるからだ。



サクソンの魅力は、ヘヴィメタルの中でも王道を感じさせるだけでなく、品格があるところに思う。ステージ衣装もビフは必ずボタンの付いたジャケットでの装いであるし、今回のブライアンもそうだった。そして勇壮なリフと疾走する楽曲もメロディックでヘヴィネス過ぎず、ハードなブギーさも兼ね備えている。これが欧州に比べて日本では吉とは出なかったのかもしれないが、アイアン・メイデンやデフ・レパードと並んで時代を牽引してきたヘヴィメタルの真骨頂を見せてくれる。


ビフ(Vo)の歌唱は決してシャウト系ではなく、艶のあるハイトーンで更に若返った印象だ。ナイジェル(Dr)の畳み掛ける重低音と、アグレッシブに動くニブス(B)が支えるバンドサウンドで後半もパワー全開のステージが続く。バイカーズのアンセム「Motorcycle Man」でのビフの指笛も効果的に観客をエキサイトさせ、泣きのイントロからインパクトある「747 (Strangers in the Night)」、NWOBHMの代表的な「Wheels of Steel」や「Street Fighting Gang」など、ダグとブライアンのギターワークは終始コンビネーションも素晴らしく、ブライアンが長年のメンバーだったかのように馴染んでおり、フライングVの勇姿にも痺れるものがあった。
近年はお約束になっているビデオ撮影タイム、ビフが嬉しそうにスマートフォンでぐるりと観客を撮影し、「最高だ!」と言う。私たちも最高です!『Wheels of Steel』アルバムをリリースした当時から現在までが全て順調だったとは思わないが、一定の人気を保ちながらも明らかに近年のサクソンはヘヴィメタルの最前線に復活していて、彼らのライブは観る側に生きる希望を与えてくれると言ったら大袈裟かもしれないけれど、それほどの気持ちにさせてくれるステージだった。


ノンストップで後半の『Wheels of Steel』の再現まで、一瞬の休憩もなくぶっ通しでのパフォーマンスも見事だったが、過酷なツアーをこなしてきた彼らにとっては手慣れたものかもしれない。そして全てのパートのサウンドが非常にクリアに抜けていて、フロント4人が長髪でヘッドバンキングをしている姿には観ている側も熱くならないわけがない。
アンコールでの「Denim and Leather」では、観客からバトルジャケット(バンドのパッチがたくさん付けられたベスト)がステージに投げられると、ビフがサインをして返すパフォーマンスもファンにはお馴染みで、メンバーが着用して演奏までしてくれていた。1980年にドニントンで開催された最初の<Monsters of Rock>フェスティバル(レインボーやジューダス・プリースト、スコーピオンズ等と共にサクソンも出演)について歌ったものである「And the Bands Played On」も披露してくれたのは非常に嬉しかった。これはアンコール直前にビフが急遽演りたいと実現したようだった。


終わってみれば、オールタイムベストな選曲。彼らはいつもセットリストの構成にどの時代が来てもそのクオリティは高品質で、この疾走感で溢れたステージを連日こなせる体力には驚嘆させられる。観客もまた、心底サクソンが好きな人たちが集まった濃厚な夜だった。

文◎Sweeet Rock / Aki
写真◎Sasaki”Towy”Hiroyuki
< SAXON ~ Hell,Fire and Steel Japan Tour 2025~>
1.Hell,Fire and Damnation
2.Power and the Glory
3.Back to the Wall
4.Madame Guillotine
5.Heavy Metal Thunder
6.Dallas 1PM
7.Strong Arm of the Law
8.1066
9.The Eagle Has Landed?
【Wheels of Steel】
10.Motorcycle Man
11.Stand Up and Be Counted
12.747(Strangers in the Night)
13.Wheels of Steel
14.Freeway Mad
15.See the Light Shining
16.Street Fighting Gang
17. Hold On
18.Machine Gun
~Encore~
19.Crusader
20.Denim and Leather
21.And the Bands Played On
22.Princess of the Night
2025.4.27 Shibuya Stream Hall
1.Hell,Fire and Damnation
2.Dogs of War
3.Back to the Wall
4.There's Something in Roswell
5.Heavy Metal Thunder
6.Ball of Rock
7.Never Surrender
8.Broken Heroes
【Wheels of Steel】
9.Motorcycle Man
10.Stand Up and Be Counted
11.747(Strangers in the Night)
12.Wheels of Steel
13.Freeway Mad
14.See the Light Shining
15.Street Fighting Gang
16.Suzie Hold On
17.Machine Gun
~Encore~
18.Crusader
19.Denim and Leather
20.Strong Arm of the Law
21.1066
22.And the Bands Played On
23.Princess of the Night