【インタビュー】fuzzy knot、2ndフルアルバムに魂の共鳴と以心伝心「大事なことは悲しみが教えてくれる」

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Shinji(G / シド)と田澤孝介(Vo / Rayflower, Waive)によるロックユニットfuzzy knotが、2作目のオリジナルフルアルバムを4月30日にリリースした。タイトルは『fuzzy knot II』。1stアルバム『fuzzy knot』から約4年、ソングライターとしてのShinjiと作詞家としての田澤、創作者同士のさらなる共鳴が、fuzzy knotらしさとして結実している。

◆fuzzy knot 画像 / 動画

デジタルシングルとして2024年にリリースしたダンサブルな新機軸曲「Imperfect」をリードとしつつ、加わった新曲たちは、振り切ったポップナンバーからヘヴィロックまで幅広く、fuzzy knotの守備範囲はグッと広がった。また、“一見〇〇のようで実は●●”というような、一筋縄ではいかない、だからこそ聴き込み甲斐のある魅力的な曲たちが揃っている。5月からスタートする<fuzzy knot Tour 2025 〜Beyond the Emergence〜>ツアーでは、新曲群が組み込まれることでライヴが大きく刷新される予感だ。

アルバム『fuzzy knot II』収録曲が生まれた背景、込めた想いについて二人に尋ねたロングインタビューをぜひツアーが始まる前に読んでほしい。


   ◆   ◆   ◆

■一つ一つの曲に純粋
■そこにいやらしさはない


──アルバム『fuzzy knot II』は、エッジの効いた曲たちが元々あったところにポップな新曲群が加わって、音楽性の幅がさらに広がった印象を受けました。まず、完成した手応えをお聞かせください。

田澤:正直、まだ実感がなくて。今、感想をいただいて、“なるほど、自分たちがつくったアルバムはそういうものだったんだ”という片鱗がようやく見えたなって。まだ世に放たれてないからフワッとしているというか。総括しきれていないだけかもしれませんが。

Shinji:fuzzy knotは、僕が好きなものしかやらないというか、結構わがままさせてもらっているんですね。気付いたら、ライブでダークな世界観をつくりやすい反面、ポップな曲の入れどころが難しくなってきていて。そう考えた時に、もうダークは充実しているから、今回はホップな曲を多目で攻めたいな、というところから曲をつくり始めました。

──全体の仕上がりとしてはどんな感触ですか?

Shinji:逆に直球で訊きたいんですけど、どの曲が一番好みですか?

──新曲の中から挙げると、「月下美人」がすごく良いと思いました。切なさを含んだ美しいメロディーが叙情的で、サウンド的には上質なシティポップのようで、新鮮でした。

Shinji:自分はわりとジャンル的に幅広く曲をつくるほうで、どれも自分の子どもだから全部かわいく思えてしまうので、“これが一番”とはなかなか言いづらくて。他の方が客観的に、どういう曲に一目惚れならぬ一聴き惚れするのかな?というのをよく訊くんです。

──どの曲が人気なんですか?

Shinji:スタッフが好きなのはやっぱりリードになっている2曲目の「Imperfect」ですね。別にリード曲を目指してつくったわけでもないので、自分はプロデューサーには向いてないなと(笑)。いつしか狙ってつくりたいなと思うんですけど。


田澤:こんなに多岐にわたるジャンル感のソングライティング能力を持っているShinjiに、プロデュース能力がないわけない。だから絶対狙ってつくれるはずなんですけど、そういう下心がないんですよね。

──1曲1曲に対して全力を注ぐというか純粋ということですか?

Shinji:純粋……なんですかね?

田澤:一つ一つの曲に純粋。だからアルバム全体を見渡して、“これはこういうパーツだよね” “ああいうパーツだよね”っていうのは後でやる。

Shinji:大枠が出来てからやるね。

田澤:アルバム収録曲を並べて、“足りないパーツを埋めようか”という狙いでつくることはあれども、そこにいやらしさはないから。

Shinji:曲づくりって締め切りがあるじゃないですか。だから、ポンポン出来たほうがうれしいし、作曲者によっては「自分の手を切ったら血が流れるでしょ。それと同じように、泉が枯渇することはない」みたいな話も聞きますけど、自分はそういうタイプにどうしてもなれないんですよ。器用にバンバンつくっていく人になれれば、次へ次へと気持ちがいくんでしょうけど。だから、作曲者としては一番良くないというか。1曲に対して気が済むまでやり込むので、時間がちょっと長くなってしまうんです。

──素晴らしいことじゃないですか。アーティストとして、ものづくりに妥協がないということですよね?

Shinji:でも最高な人って、締め切りを守っていいものつくってくるじゃないですか。そこはやっぱり難しいなと思います。


▲Shinji (G)

──この流れで「月下美人」について深掘りしたいんですが、この曲だけは仮タイトルをそのまま活かしたそうですね?

Shinji:仮タイトルって基本的には結構ふざけてるんです、僕。昔はふざけすぎて会議で怒られるぐらいだったんですけど、それもほどほどになってきて(笑)。「月下美人」は一切ふざけずに、曲の雰囲気からパッと出てきました。花の名前とは知らずに、たまたま耳にして、すごく好きな言葉としてずっと頭の中にあったんです。

──胸が締め付けられるような切なさもありつつ、ギターカッティングの歯切れが心地良くて、Shinjiさんらしいなと。

Shinji:めちゃめちゃテクニックで押すというよりは、大人っぽいスマートなカッティングというか。サビで転調するのは、歌うのが田澤だからこそ辿り着いたアレンジだったりします。

──田澤さんが歌うことを想定した変更は以前と比べて増えているのですか?

Shinji:本来だったら「月下美人」みたいな曲って、転調せずに流れるように進行してしまってもいい曲ではあるんですよ。別に苦しくなるほど歌ってほしい曲ではないというか。でも、田澤のトーンの良いところを出そうと思うと、やはり一音上げて転調させる以外なかった。そうしないと逆にAメロが低くなり過ぎるというのがあったので。

──田澤さんは「月下美人」をどう捉えてアプローチしましたか?

田澤 :仮タイトルの時点での「月下美人」って、おそらく“月夜の下の美女”というイメージだったと思うんです。和テイストで、その女性は着物を着ている感じで。そういうモチーフないかなと、歌詞を書くにあたって探していたんです。ちょっとこのタイミングで明かすのは早いかもしれないですけど、実は「深き追憶の残火」(1stアルバム『fuzzy knot』収録曲)は、いなくなった人のことをいつまでも思い続けている人の歌で、「月下美人」はいなくなった側、いつまでも思い続けられている側の人の歌なんです。


▲田澤孝介(Vo)

──対になっているんですね。

田澤:そうなんです。もちろん「月下美人」単独で成立するメッセージは散りばめているし、僕が死ぬまでに言っておきたいことはちゃんと言えているんです。だから、知らずに聴いてもらってもいいけど、「深き追憶の残火」と並べて聴いてもらえると「月下美人」のストーリーが見えてくる。一層面白さとか、楽しみが増えるんじゃないかな。

──私は、前世の恋人の再会をモチーフにした設定なのかな、と思いながら聴きました。

田澤:生き死にとは関係なく、思われたままになっていることが、(思っている主体である)あなた自身を縛ってしまうことってありますよね。思われている側が何かしているわけではないけど、生きていれば、その執着に対して“断ち切ってください”とお願いすることはできるかもしれない。でも、そうしてもらえるように祈ることしかできないもどかしさがあって。Shinjiがつくった曲を聴いて、最初はそこまでの狙いはなかったんですけど、繰り返し聴いて言葉を探していくと、どうしてもそういう世界観になっちゃうなと。“仮タイトルの「月下美人」ってそういえば何?”と思って調べたら、一晩だけ咲く儚い花だった。夜にしか咲かない花のように、この歌の主人公の女性が思いを馳せるのは、やっぱり月を見た夜で。その符合に“これは運命じゃないの?”と感じたので、この曲の誕生に至る話は結構ドラマティックだなと。

──お二人の以心伝心ぶりに震えます。田澤さんは、ご自身の声質の魅力を引き出すための転調への計らいを感じながら歌われたんでしょうか?

田澤:今、話を聞いて知りました、“そうだったんだ”と。それぐらいにナチュラルだったし、自分が表現しやすいと感じたことへの種明かしをしてもらったという感じです。“あ、歌いやすかったのはShinjiの配慮のおかげだったんだ”って。女性視点で歌おうと思っていたんですけど、それをとても表現しやすくて。

──後でお訊きしようと思っていたんですけど、8曲目の「Backseat Driver」は2月のバースデーライブで披露されていましたが、たしかShinjiさんは、田澤さんのハイトーンを生かそうという意識でつくったとおっしゃってましたね?

Shinji:「Backseat Driver」は、ハイトーンというよりもロングトーンですかね。fuzzy knotの曲はわりとメロディーが詰まった曲が多いので、いちファンとしては“ロングトーンを聴きたいな”と思ってつくりました。

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