【インタビュー】ASIAN KUNG-FU GENERATION、感動を呼ぶ両A面シングルに充実の現在形「毎回が幕開け」

これは本当に新しい何かの幕開けなのだろうか。アジカンの新曲「MAKUAKE」。とてつもなくパワフルで、“これから”を強く感じさせるナンバーである。
◆ASIAN KUNG-FU GENERATION 画像
「MAKUAKE」は2024年夏、横浜BUNTAI 2DAYSでの<ファン感謝祭>で披露されており、その場のオーディエンスを巻き込みながら熱い空間を作った歌。今までの歩みを回想しながらもさらに前に進もうとする自分たちを唄っており、そのドラマ性ともども、とても感動的だ。過去にアジカンから何かを受け取ったことがあるすべての人に突き刺さる曲だと思う。
また、今回の両A面シングルのもう1曲 には「Little Lennon/小さなレノン」の新録バージョンが選ばれている(オリジナルはアルバム『Wonder Future』収録)。これがかねてから交流のある、くるりの岸田繫プロデュースで、管弦楽器をフューチャーしたスケール感たっぷりの仕上がりになっているのだから驚きだ。何より、この2曲からは彼らの充実した現在形が感じられる。
5月には久々にバンド主宰のフェスである<NANO-MUGEN FES. 2025>をインドネシアのジャカルタと、そして神奈川のKアリーナ横浜で開くことを発表しているアジカン。ベテランバンドの域に入ってきた4人だが、そのムードはここに来てポジティヴで、しかもどこかフレッシュである。取材の席でのツッコミ合いも微笑ましく、そんないい空気感が出たインタビューになったと思う。
◆ ◆ ◆
■アジカンの軌跡を辿るような歌詞に
■すごくジーンと来た
──新曲「MAKUAKE」、これが非常にアガる曲で、ものすごくいいと思います。
後藤正文:良かった。
喜多建介:ありがとうございます!

▲後藤正文(Vo, G)
──皆さんの手応えはどうですか?
喜多:そうですね、「MAKUAKE」は去年のファン感謝祭(横浜BUNTAI)で演奏したんですけど、すごく気持ちが乗る曲だな、と……それが初めて聴くはずのお客さんにも伝わってる感じもしたんですよね。それもまだレコーディングする前のことで、新曲をライブで下ろすのは最近やってなかったんですけど、かなり手応えを感じました。
伊地知潔:ライブでは、新曲なのにお客さんがすごく盛り上がった感じがしたんです。“ああ、みんな、そういうふうに聴いてくれるんだな”と思いながらレコーディングに臨めて、それは良かったなと。今回は歌がもともとあった状態でリズム隊を録音したんですけど、それもすごい違った感じになって。そこでも発見がありましたね。
後藤:ほんとに、めちゃくちゃいい曲ができたなと思ってます。もうデモの段階からずっと感動し続けていて……そのままレコーディング本番が終わって、ミックスが終わって、作って良かったなって。これで売れなかったらもうダメだなと思うぐらい、達成感がありますね。
山田貴洋:曲調にしても、前向きに開いてる感じがありますよね。<ファン感謝祭>で演奏できたのはとても良かったと思っているし、今回の<NANO-MUGEN>のテーマソングになってますし。ここまでの間にホーンセクションが入ったり、とても祝祭感にあふれた、華やかな曲になったなと。演奏して楽しい曲でもあるので、ライブでやっていくのが楽しみですね。

▲喜多建介(G, Vo)
──「MAKUAKE」は、ファン感謝祭で唄う曲だとイメージして書いたんですか?
後藤:そうですね。新曲をライブで下ろすのって、ロックバンドっぽくていいじゃないですか。どうしてもレコーディングで作り込んで、それからライブでやると再現性を求められて緊張するけど、みんなが聴いてないと、そのプレッシャーを感じなくていいわけですから。
喜多:ははは。まだ世に出てなくて、最終形も俺たちで決めていないしね。でも曲を育ててるタイミングでやるのも、とてもいいことだと思うし。
──そこで“幕開け”、つまり新しい風景が見えてくるのをイメージしたのは、どういうところからですか?
後藤:そうですね。俺たちは歴史の連続の中で生きていて、それで人生においてもその後半みたいなところにいると考えちゃうと、新しい気持ちでやりづらいじゃないですか。“ここまでアルバムも何枚も出してるから、この続きで”みたいな。でもそうじゃなくて、“過去にやったことなんて取り返せないから、毎回が幕開けだと思ってやるしかないよね”みたいな考えですね。イースタン(ユース)の吉野(寿)さんが「いつだって勝負はここからだ」みたいなことを言うのと、ニュアンス的には近いかもしれないです。今からでもやり直せるし、思い立って何かやることだってできるから。常々、幕開けみたいな感覚なのはいいんじゃないかなと思いますね。

▲山田貴洋(B, Vo)
山田:歌始まりで、“飛び越える / 乗り越える”、その後に“そんな美談なんかじゃないよな”っていうとこで、ちょっとゾクッと来ましたね。“だよな”というか。そういうのがありつつも、ちゃんと“今を誰より抱きしめて”っていう。いいなあ、って。
後藤:“だよな”って入れないでよ? 本番で。いい曲なんだから。
山田:合いの手を(笑)?
喜多:コーラスでね。おもろソングになっちゃう(笑)。
山田:歌始まりなのにもジーンと来るところがあります。こういうことを唄ってる曲だし。
伊地知:周年でやったこの新曲がアジカンの軌跡を辿るような歌詞だったのには、すごくジーンと来たし。最後にコーラスがいっぱい入って大合唱する感じがあるんですけど、横浜BUNTAIの時にそこをお客さんに唄ってもらってレコーディングしたら面白いんじゃないかって案もあったんです。数日で却下されましたけど(笑)。
喜多:それは時間の問題でね。準備的に間に合わなかったので。でも、ちょっとシンガロングしてほしい感じのある曲になりましたね。

▲伊地知潔(Dr)
──ファンには特にグッと来る歌だと思います。で、話に出ている通り、横浜BUNTAIで演奏した時よりアレンジが分厚く、華やかになってますよね。これはどう発展させていったんですか?
喜多:僕らがプリプロで録ったものを今回ホーンアレンジしてくれた小西くん(小西遼:象眠舎)に一回投げて、それで帰ってきたものの細かいところを再アレンジした感じですね。
後藤:まずメンバーでデモを編み上げていくうちに、僕が「ホーンを入れたいんだよね」みたいな話をして。それでOKテイクの歌を先に録って、みんなで演奏を当ててく、みたいな感じでレコーディングしました。それを小西くんに振って、詰めていきましたね。やっぱり管楽器ってすごいエネルギーがあるんですよ。息使いがあるっていうか。で、クワイヤみたいな人数感も欲しかった。シンガロングするような感じで、生命力とか、それぞれの人生を肯定するようなフィーリングを出したかった。そういう肯定的なメッセージがある時に、ホーンってすごく力強いんですよ。俺たちの背中を押してくれるような楽器ですよね。
──そのコーラスも力強いですよね。すごく肉感的というか。
後藤:そうですね。エンジニアには「それぞれの顔が見えるようにミックスしてほしい」と頼みました。それは唄ってる人間それぞれの顔でもあるけど、聴いてる人たちそれぞれの顔をくっきりと照らすようなものでもあるから。
──ほんとにアッパーで、それも生きることを肯定する、これからの未来に対して前向きになれる歌ですよね。そこがすごくいいと思います。
後藤:いや、“そういう曲以外作らないほうがいいんじゃないか”と思うぐらい、世の中がめちゃくちゃすぎますよね。「ライフ イズ ビューティフル」(2025年2月リリース)にもつながるけど、いま肯定的なことを唄わないでどうするんだ?みたいな。
後藤:今、ペシミスティック(悲観的)な、かつてのレディオヘッドみたいなことをやると、目も当てられないと思うんです。世の中がこんなにハチャメチャにブッ壊れてんのに、そこで“う~ん”って悩んでるようなことはできない。ロックバンドとして自分がやりたいことは、無理矢理だけど、とにかく未来に向かって、信じられるものを見つけるしかない!みたいな。
──そうですね。で、その無理矢理さもロックバンドが本来持つパワーだと思います。そうして時代を切り開く、このつまらない現実を打破するようなエネルギーを放つという意味で。
後藤:そういう“前向きに生きよう”みたいなことも、ものすごく社会的なことなんだなと思う。大きな目で見たら、どこに何の希望を持っていいんだ?と思っちゃうわけだからね。
──ですよね。ポリティカルなことをメッセージしてるわけでもないし、社会的なテーマがある歌ではないけど、現実を打ち破っていくという視点を持った段階で、社会にコミットしていると思います。
後藤:そうなっちゃいますね。自分たちがどんな時代を生きているのかということが反映されてる曲だとはすごく思う。
──そして一番最初にゴッチのくしゃみが入っていたり、あと曲中で「カモン」と言っていたりするのも人間臭くて、いいなと思いました。
後藤:ははは。プリプロしてる時に「ハクション!」って入っちゃったんですよ。アジカンの107stというスタジオでレコーダーを回して、クリックが流れ始めた絶妙なタイミングでくしゃみが出てしまって、これはそのまま使うのがいいなと。そういえば「ワンダーウォール」(オアシス)も最初にノエル・ギャラガーの咳払いが入ってたな、じゃあ俺たちはくしゃみじゃない?みたいな。
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