【コラム】aikoの個性と好奇心が詰まった最新作「シネマ/カプセル」

1998年のメジャーデビュー以降、老若男女から熱烈に愛され続けているaiko。この四半世紀で音楽シーンも様々な変遷を経ているが、そんな荒波を独自の道を進みながら第一線で活躍している理由は、長きにわたり一貫した“aikoらしさ”はもちろんのこと、それを引き立てるスパイスとして変化やギミックを巧みに取り入れているからだろう。それはここ1年間の動きや最新作「シネマ/カプセル」からも明白である。
昨年8月にアルバム『残心残暑』をリリースし、同年10月から今年4月にかけて全国のライブハウスを回るライブツアーシリーズ<Love Like Rock>の記念すべきvol.10を9ヶ所32公演開催した。同ツアーは3月末に大阪でファイナルを迎える予定だったが、aikoの体調不良により延期されたZepp Fukuokaの振替公演が4月10日に行われ、結果的に同公演がツアーファイナルに位置付けられた。そんな想定外の展開を逆手に取り、前日にデジタルリリースされたばかりの「カプセル」を同公演のセットリストの1曲目としてライブ初歌唱を披露するというサプライズで序盤から会場のボルテージを上げたことも記憶に新しい。ハプニングをエンターテインメントに転換できる遊び心や余裕、タフネスも彼女の強みである。
46枚目となるシングル「シネマ/カプセル」も、彼女の抜きんでた個性に加え、好奇心に富んだバイタリティを実感できる。今年1月にデジタルリリースされた「シネマ」は、若き弁護士同士の恋愛を描いたTVドラマ主題歌に起用されたブルージーなワルツ。ドラマの製作スタッフより「自由に曲作りをしてください」と告げられ、“弁護士同士の恋愛”というキーワードから2024年1月に制作した同曲のデモの存在を連想し、リリースにあたり完成させたという。
なぜaikoが“弁護士”と“恋愛”から同曲を結び付けたのか。推測の域を出ないが、おそらく楽曲の主人公の自立心にあると思う。「シネマ」は《あなた》に向けた切実な愛情を綴りながら、1番のAメロでは《孤独》という概念に言及し、Bメロでは《未来とは自分のもの》《あたしはここにいるの》と自身の存在を表明する。
鋭いピアノの和音から始まるシリアスなイントロや、切なさや陰を抱えながらもまっすぐ「自分軸で生きる」という意思を貫く姿勢は、弁護士に宿る厳粛なイメージとも間接的にリンクし、自身の胸の内にある愛情を怯むことなく正直に切々と綴るのはaikoならではの大胆さとも言えるだろう。
悲しい気持ちに陥ろうとも、《きっと終わるまで分かり合えない》現実があろうとも《あなた》を愛し、「人生を“シ”ぶとく“ネ”ばり強く“マ”っとうしたい」という気持ちが込められた「シネマ」には、自分の思いに忠実に生きていくというエネルギーが漲る。
「カプセル」はTVアニメ『アポカリプスホテル』のエンディングテーマに起用されており、オープニングテーマである『残心残暑』収録の「skirt」との両面から同作に宿るきらめきやファンタジー性、センチメンタリズムを際立たせている。
人類がいなくなりロボットが暮らす東京・銀座のホテルを舞台にした作品ゆえに、公式コメントによると「skirt」は「ロボットに血が流れていたらこんな気持ちになることもあるのかもしれない」と思いながら、「カプセル」は「大切な人との記憶は電池が切れても絶対に消えない」という思いのもとレコーディングに臨んだそうだ。
「逢いたい」という思いがだんだん熱を帯びていく「カプセル」のボーカルは、感情が色づいていくような躍動感がある。繊細なピアノから始まり、じょじょにバンドとストリングスが加わることで力強さや激情を帯びる演奏も、人を愛することで得られる幸福感はもちろん、愛したがゆえの動揺や悲痛までをも丁寧に描くようだ。aikoが常に大切にしているであろう「痛みを伴うのはそれだけ深く愛しているからこそである」という概念がサウンドでも表現されているからこそ、色濃く聴き手の心の奥へと染み込むのだろう。
カップリングの「燃えた涙 月とライター」は、抽象的で意味深なタイトルが示すように、歌詞もメロディもアレンジも非常に直情的だ。歌詞はどこを切り取ってもその人への愛おしい気持ちが止められないと言った様子で、メロディは転調なども取り入れられ予想だにしない展開ばかり。言葉を選ばずに言うと、終始突拍子もない。まさに恋に恋をしていて落ち着かない心の状態そのものだ。
ライブ感のあるボーカルと昭和歌謡ジャズ風味のサウンドは、<Love Like Rock vol.10>の熱がそのままコンパイルされたようで、感情のままに楽しむ演奏は、恋する気持ちが理性を追い越していく感覚と合致する。aikoがライブに並々ならぬ思いを持ち続けていること、恋愛感情を生々しくも瑞々しく、明解な言葉で感覚的に描けるソングライターであることを再確認した。
46枚目シングル「シネマ/カプセル」の3曲には、『残心残暑』以降にaikoがライブで磨き続けた音楽や、大切な人々への情熱が凝縮されていると言っていいだろう。年末には<Love Like Pop vol.24.9>が東京と大阪で開催される。aikoにとって約2年ぶりのアリーナ規模のワンマンライブであることに加え、最終公演の大阪は2015年以来10年ぶりのカウントダウンライブ。その情報だけでも期待感は増すが、“vol.24.9”というナンバリングも意味深だ。同公演までの8ヶ月で彼女がどんな動きを見せるのだろうか。とはいえしぶとく粘り強く、独自の音楽をまっとうし続ける彼女のことである。ここから先も果敢に自身の理想を貫いていくだろう。
文◎沖さやこ
46th Single「シネマ/カプセル」
CD予約:https://aiko.lnk.to/46thSG


◆形態
初回限定仕様盤A(CD+Blu-ray)
品番:PCCA-15040 価格:3,850(税込)
初回限定仕様盤B(CD+DVD)
品番:PCCA-15041 価格:3,850(税込)
通常仕様盤(CD Only)
品番:PCCA-15042 価格:1,320(税込)
◆CD収録内容
M1,シネマ
M2,カプセル
M3,燃えた涙 月とライター
M4,シネマ(instrumental)
M5,カプセル(instrumental)
◆Blu-ray / DVD収録内容
aikoフリーライブ<Love Like Aloha vol.7 (director’s cut)>
-Opening-
58cm
ストロー
帽子と水着と水平線
荒れた唇は恋を失くす
相思相愛
ハニーメモリー
メドレー
よるのうみ
アップルパイ
skirt
愛の病
キラキラ
夏が帰る
星の降る日に
花火
-Ending-
副音声:aiko福音声
◆46th Single「シネマ/カプセル」初回限定仕様盤
予約購入先着特典:<Love Like Aloha vol.7>パスステッカー
※通常仕様盤には上記特典はつきませんのでご注意ください。
※全国のCDショップ、WEBショップにて2025年4月30日(水)発売「シネマ/カプセル」初回限定仕様盤をご予約・ご購入のお客様に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。
<aiko Live Tour「Love Like Pop vol.24.9」>
2025年12月7日(日) 【東京】国立代々木競技場 第一体育館 16:00/17:00
2025年12月31日(水) 【大阪】大阪城ホール 20:00/21:30 (カウントダウンライブ)
・チケット代:全席指定 9,200円(税込)
・チケット先行情報
Baby Peenats先行
受付:2025年4月14日(月)12:00 〜 2025年5月6日(火)23:59まで
*Official FC「Baby Peenats」のご登録が必要です
Team aiko先行
受付:2025年5月15日(木)12:00 〜 2025年6月1日(日)23:59まで
*モバイルサイト「Team aiko」のご登録が必要です
オフィシャル先行
受付:2025年6月13日(金)12:00 〜 2025年6月29日(日)23:59まで
*URLは後日発表
オフィシャル二次先行
受付:2025年8月19日(火)12:00 〜 2025年8月31日(日)23:59まで
*URLは後日発表
■一般発売日:後日発表
その他チケット販売に関する詳細や注意事項はこちら
https://aiko.com/topics/?id=7849
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