唯我独尊

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唯我独尊

311は、がんばるバンドだ。彼らに言わせれば、移り気な市場にあってツアーこそが長続きの秘訣。10年一緒にやってきたオマハ脱出組の彼らは、物珍しい存在だったラップとロックのハイブリッドに磨きをかけ、オルタナティヴ界のスタンダードへと押し上げるのに一役買った。

このインタヴューは、'97年にリリースした『Transistor』に続く新譜『Soundsystem』のベールを剥いだばかりのNicholas Hexum とP-Nutに、LAUNCHのエグゼクティヴエディターのDave DiMartinoが取材したもの。ここへきて最新の録音機材や音作りの技術をいくらか手に入れた彼らだが、そのことが『Soundsystem』の“独創的な”仕上がりにつながった。
こっちの考えてることを他の奴にわからせようとするよりも、この方が思い通りにできるから」とは、スタジオでのノウハウと共に得た創造上の自由を語るHexumの言葉である。

技術面での成長を続ける311だが、楽観的な物の考え方も健在であることは、そのメロディにうかがわれる。
人生、一度しかないんだから、とことんやらなくちゃ」。
新しいミレニアムを迎え、音楽を通じて“前向きさを伝える使命”を、Hexumはこう語った。相棒のP-NutはDiMartinoと会話がズレがちで、ドレッドヘアにべっ甲縁の眼鏡といういでたちのこのベースプレイヤーのこだわりは、歌詞(「とにかく、自信を持って歌うことだ」)であったり、もっと微妙なところではBackstreet Boys的な部分(「先の見込みがないんじゃ、No.1になったって何の意味もないよ」)であったり、Shaquille O'Nealと無人島に閉じ込められる話(「とりあえず、もしも人肉を食うしかなくなっても、相手がShaqなら相当食いではあるだろうよ」)であったり。まぁ、それも前向きな考え方ではあるのだが。



LAUNCH:
今までの作品と今作の、一番の違いは何でしょうか。

NICHOLAS:
今までとの一番の違いは、曲が自然に育ってくるのを待ったってこと。時間をかけたんだ。自分たちのスタジオを造って、そこに自分たちの機材を運び込んで、ProToolsの使い方も覚えた。コンピュータを使ったハードディスク・レコーディングの機材だけじゃなくて、昔ながらの24チャンネルのテープマシンもあったから、使い方を覚えるだけでもすごく勉強になったよ。その過程で、少しずつ曲を書いていったから、今までよりもずっとオーガニックな流れだったんだ。『Transistor』の時なんか、30曲を2ヶ月で録音したんだぜ。そこいくと今回は18ヶ月で13曲。ちょっとペースを落としたわけだ。

P-NUT:
前のアルバムが大成功して注目されるようになったけど、俺らとしては自分たちの創造の精神が刺激されるようなアルバムを作りたかったんだ。何か、趣の違うやつをね。俺らはいつもそうなんだよ。あれだけ注目されたら、余計に方向転換したくなった。今までのシングルで俺らについた若いファンの中には、これで離れてく奴もいるだろうが、こういうバンドなんだからしょうがない。やってる音楽に気持ちが昂ぶらないんじゃ、ステージに立っても楽しくないし、それじゃ元も子もないもんな。今回のアルバムはロック寄りになってる。どの曲もライヴでやるのが楽しみだよ。『Transistor』の時はスタジオでじっくり時間をかけて、聴いて楽しい音楽を作って喜んでたって感じでね。重ね録りもいっぱいやって、どっちかっていうとチルアウト系だったんだ。けど今回は、ライヴでやりたくなるような曲を揃えたかった。ライヴでやった時に、そこんところがちゃんと伝わるようなアルバムにしたかったんだ。

LAUNCH:
プロデューサーにHugh Padghamを選んだのはなぜですか。

NICHOLAS:
公平なレフェリーみたいなプロデューサーが希望だったんだ。あんまりバンドに思い入れのない人をね。Scott Ralstonていう、長年うちの音響を担当してた奴と前は組んだんだけど、今回は先入観を持たずに、まっさらな耳で聴いてくれる人…ありがちなオレンジカウンティのパンク/ヒップホップ系の人間じゃない人と組みたかった。要するに、幅を広げたかったんだよ。そういう人が聴いて本当に良いと感じるようなアルバムが作れれば、昔からのコアなファンにしか通じないものとは違う、もっと音楽的なステートメントになるんじゃないかと思ってね。今までより長く、色々な人に楽しんでもらえるようなアルバムにしたかったんだ。

P-NUT:
Hughが参加した時点で、曲はほとんど全部できていたんだ。彼はそれをきちんと録音するために力を貸してくれたり、メロディのアイデアを出してくれたり、とにかく、前と同じアルバムになっちまわないように全体的に意見を付け加えてくれたわけだ。外部の人間の存在はありがたい。気の好いイギリス人となれば、なおさらだ。楽しかったよ。録音にはずいぶんと集中して取り組んで、実はHughが顔を出す前に、予め自分たちでアルバムの録音をしてあったんだ。俺たちならこうやるっていうやり方で一通りやって、アルバムの半分ぐらいは2度目の録音に入っていた。それをHughが整えてくれたんだけど、お互い折り合いも良くて、すごくうまくいったよ。

LAUNCH:
あなた方は、いわゆるラップロック・バンドの先駆けですが、最近はKornやLimp Bizkitの登場もあって、このジャンルがすっかり膨脹してしまっているようです。先輩として、どうですか。

NICHOLAS:
そういうグループが続々と登場してるのは、すごくクールだと思って見てるよ。俺たちが'93年に『120 Minutes』に出た時なんか、新種の動物か何かみたいに扱われたもんだが、こういうバンドもようやく認められるようになったらしい。いいことだ。

P-NUT:
地固めは、俺たちより前にかなりやってあったんだぜ。Red Hot Chili Peppers、24-7 Spyz、Fishbone…その辺のバンドが始めたことだって、みんなわかってるはずだ。311として俺たちがロックラップの創始者だなんて主張するつもりはない。そんなこと言い出すとしたら、酒を飲みすぎた時ぐらいだろう。Limp BizkitやKornみたいなロックラップのバンドをみんなが聴いてるご時世だから、俺らが今度のアルバムで今まで通りのことをやれば、きっと前よりうまくいくはずだ。しかも、俺らのやり方はポジティヴだから、みんな新鮮に感じると思う。他人の悪口を言うわけじゃないが、人生、ネガティヴになって物を壊したりしてるより、前向きに生きた方がずっといいぜ。Fred Durstには、正面切ってそう言ってやりたい。マジで楽しみだ。考え方の食い違いってのは、それはそれでいいもんだし、自分なりの意見はあってしかるべきだが、どこかで折り合うとか、少なくとも話し合わなきゃな。そうすりゃ、相手の事情もわかるしさ。だから、俺も誰を見下すつもりもない。俺は311で満足してるっていう、それだけのことさ。

LAUNCH:
あっという間の成功に、落とし穴はあるでしょうか。

NICHOLAS:
俺たちの方でも仲間意識を持っているファンは、レコードが売れたからって怒りゃしないと思う。パンクには独特のエリート意識があるんだが、そういうのには俺たちは関わりたくないんでね。俺たちには、長いこと応援してきてくれたファンが大勢いる。離れてった奴もいくらかいるんだろうが、俺たちが一番相手にしたいのはごく普通の…ネブラスカでの子供時代の俺たちみたいな連中なんだ。当時の俺たちは超エリートでも、どこかの音楽シーンの一員でも何でもなかった。中には、「あんたたちのことを誰も知らなかった頃、小さなクラブでやってただろ。あの頃のあんたたち、最高だったよな」とか言ってくる奴もいるが、気持ち的には何も変わっちゃいないんだぜ。音楽だってそうだ。俺たちは今だって、ハートで音楽を作ってる。こっちの姿勢にさえ変化がなければ、人から何を言われようが関係ないさ。

P-NUT:
報われたとは思うけど、ハングリーじゃなくなるほど羽振りが良くなったってワケじゃないしな。成功して、前よりハングリーになったぐらいだよ。今のトレンドで、俺らみたいな音楽をやる連中がどんどん出てくるのを見てると、余計にそうなる。俺らがもう10年もやってきたこういう音楽を聴く人間が増えてるんだからな。一筋縄じゃいかない音楽を、最近はみんなわかってくれるようになった。いいことだよ。これからまた、どんどんそうなっていくだろう。そういうのが求められているのさ。特定のスタイルの音楽しか好きじゃないって人間に出くわす方が珍しいくらいだ。集中力がもたなくなってるってのと関係してるんだろう。ひとつの曲の中で、ありとあらゆるスタイルの演奏を試してみたくなる。そこにファンも共感するんだと思うよ。

LAUNCH:
ウッドストック'99での暴動騒ぎ等を考えると、あそこに出演しなくてよかったと思いますか。

NICHOLAS:
ウッドストックの一件で俺は、男性ホルモン全開で大騒ぎするだけじゃなくて、ポジティヴな生き方とか団結心とか、そういうものを体現するバンドが必要とされていることを感じて、やる気にもなったし目的意識を強くもしたよ。俺たちは、自分たちのツアーをポジティヴさの伝道活動だと考えているんだ。嫌なニュースや不穏な空気、怒り、それからミレニアム絡みの緊張感なんかも、全部まとめてチャラにするためのね。みんなに希望を感じさせる存在でありたい。そのためにも前向きであることが俺たちの使命だと思うんだ。

P-NUT:
(ウッドストックは)出なくて良かったよ。出てたらきっと、すごい重荷をしょい込むことになってただろうから。俺らは暴動をそそのかしたりするはずはないが、これだけ色々と不穏な空気が流れてる中で、ああいうコンサートってのはどっちにしろ無理があると思うんだよね。終わってるんだよ。観てる側だって面白くない。出演者が2万で観客が20万とかって、デカ過ぎだ。だから俺らは、クラブ回りのツアーをやろうとしてるワケ。前座もなしで、自分らで全部仕切る。車をひっくり返したりとかいう派手な話題はないから地味なもんだが、そういうのは俺たち、全然必要としてないし。

LAUNCH:
『Soundsystem』を聴くと、すごくライヴ感がありますが、そのためにどんな工夫をしましたか。

NICHOLAS:
取り組んだ目標があるとすれば、ひとつ、モッシュピット向きの曲を用意するってのがあったかな。めちゃくちゃエネルギー値の高いやつをね。『Transistor』ではサイケに走って重ね録りもしたけど、(今回は)一発録りを心がけて、予めリハーサルした段階から曲がすごいロックしてたんで、「じゃ、これでいこうや」と。テンポを上げて、勢いのある曲にしたかったんだ。

LAUNCH:
相談役は誰でした?

NICHOLAS: 
俺の小学校1年の時からの友達のひとりで、Grassshopper Takeoverってバンドをやってる奴が、最近LAに出てきて、一緒に曲を書いたりしてるんだけど、制作の前段階ではそいつが何かと助言してくれたよ。「ここはハーモニーをつけたらいいんじゃないか」とかね。あれはありがたかった。あと、うちの弟のZach。22歳なんだけど、ビックリするようなジャズの名人でさ。どんな楽器でも、俺に合わせて弾けちゃうんだ。だから、あいつの意見は俺もマジで尊重してる。ただし、本人はロックは好きじゃなくて、ジャズとか、もっと知的な音楽に入れ込んでるんだけどね。まぁ、だからこそ俺としては、あいつの意見を何かにつけて聞きたくなるんだけど。

P-NUT:
いるとしたら、俺の彼女だろうな。スタジオから帰ると、録ってきたものを毎日一緒に聴き直したんだ。現場にいなかった人に聴いてもらうと、違った見方ができるようになる。彼女は「その調子でがんばりなさいよ。やってることは間違ってないわ」って、いつも励ましてくれた。それを言ってもらいたいんだよね。

LAUNCH:
レコーディングとツアーの合間、時間のある時には何をしているんですか。

NICHOLAS:
自由な時間があれば、たいていコンピュータのソフトとかデジタル編集の勉強だ。ヒップホップ、ドラムンベース、ジャングル等、色々ミックスをやってみてるんだけど、よくやるのはひとつの曲から次の曲へどんどんつながってく連続モノ。あと、フェイダーの使い方を覚えたり、人の曲をリミックスしてみたり、とにかく自分たちで全部やれるようになりたいから、がんばって勉強してるんだ。今まではスタジオで人に説明してやってもらってたけど、今はレコーディングのスキルを自分たちで習得中で、もうEQは使えるし、トリップ系の効果を出すには何をプラグインすればいいかもわかってきた。こっちの考えてることを他の奴にわからせようとするよりも、その方が思い通りにできるからね。

P-NUT:

オフの時間を使って曲を書いたんだ。リハーサルしながら、あとはゆっくり休憩。今回は取りかかる前にたっぷり4ヶ月の休みをとって、とにかく頭を整理することにしたんだよ。6年近くツアー浸けで、必死で働いてきたことだし。あれだけツアーをやって、毎年アルバムを出してきたからこそ、今の俺たちがあるんだが、ここはひとつすべてを休んで、集中して、できるだけ時代を問わない作品を目指そうじゃないか、とね。

LAUNCH:
バンドの中の力学は、どうなっているんでしょう。みなさん、かなり仲は良いんですか。

NICHOLAS:
あんまり仲が良いんで、自分でも驚いてるよ。幸い5人なんで、何を決めるにしても、最悪でも3対2に分かれるしね。たまに「どっちでもいいよ」って奴がいても、「いや、どっちかに決めろ」って言われる。うちの折り合いの良さは、当人ながら衝撃的だよ。だって、もう千本ぐらいライヴをやってきてるんだぜ。

P-NUT:
311に関して俺が一番感心するのは、常に変化してるってこと。曲作りや演奏にかけては、楽器と歌をうまく溶かし合うとか、できるだけタイトにまとめようとか、これでもかっていうくらいお互いに厳しいんだ。ただリフをかき鳴らした上に、ギリギリになって思いついた歌詞を乗っけてるだけじゃないんだぜ。すごく練ってあるし、すごくしっかりしてるんだ。こう言うと、えらい大変だったみたいに聞こえるだろうけど、スタジオはすごく楽しかった。時間をじゅうぶんにかけられたから、今回のスタジオは良い経験になったよ。出来る時には出来るんだから、無理はよそうぜってことでね。スタジオはいつもストレス満載だったから、あんなのは今回が初めてだった。

LAUNCH:
ヒットシングルを出すことと、ツアーバンドとして成功することと、あなた方にとってどちらが重要ですか。

NICHOLAS:
ヒットシングルを出すことは、俺たちの場合、生命線とはいえないだろう。“Down”でハジケる前から、ちゃんと生活できてたしな。今までの作品と、ツアーで培ってきたコアなオーディエンスと、それだけあればツアーもやっていけるはずだ。だから、べつにすごく重要ってわけではないけど、ただ、ラジオは誰もがタダで音楽を聴ける場だと俺は昔から思ってて、今もその考えは変わらないんで、ラジオで流れること自体には何も抵抗がないんだ。問題は、バンドの側が特定の形態に無理に合わせようとしてしまうこと。俺たちは昔からラップ調のロックをやってきたけど、当初はそういう形態はまだ設定されていなかったんで、逆にプレッシャーを感じることなく居心地が良かったよ。もっとも、常に前進して、努力を怠らないようにと、自らにはしきりにプレッシャーをかけてるけどね。

P-NUT:
ヒットシングルは、俺らには意味ないよ。あればあったでいいもんだし、何も変わらなかったなんてことは、口が裂けても言えないけどね。実際、あれで俺らの立場は良くなったんだし。でも、俺らぐらい大々的にツアーをやってれば、ラジオもMTVもなくたって、何とか顔は売れるもんさ。そこらのバンドに言っとくが、ヒットなんて、オマケみたいなものなんだよ。とにかく必死こいてツアーしな。そうすりゃキッズはついてくる。でもって、ラジオもMTVもついてくる。キッズを第一に考えろ。すぐ目の前で、こっちの熱気を直に感じながら聴いてもらってるうちに、確かな絆を作っておくことだ。絆ってのは、そういうもんさ。目の前で音楽をキッズに叩き込んでおけば間違いない。それ以上に確かなものなんかないぜ。ラジオもMTVも移り気だ。何よりも移り気だ。とにかく、ライヴこそ肝要と心にとめておくといい。

LAUNCH:
一夜にして成功を収めるのと、じわじわと頂点に上り詰めるのと、どちらのシナリオが好ましいですか。

NICHOLAS:
最初のアルバムでヒットを出して、特定のライフスタイルにハマっちまったら、次のアルバムからヒットが出ないとフレストレーションの螺旋階段から脱け出せなくなるってこともあるだろうな。俺たちの前のアルバムには、そこまでのヒットはなかった。それでも、ツアーはそれまでにない大規模なものになったんだぜ。だから、場合にもよるんだろうが…もしも最初のアルバムでハジケてたら、俺たち、もっと危ないことになってたかもしれない。だけどツアーはやるだろうし、結局、時間の問題じゃないんだよ。

P-NUT:
ハリウッドじゃ昔からそうだろ。Jim Carreyが出て来て、昔みたいな漫談を披露したところで誰も相手にすまい。次々と自分を作り変えていかないと明日には忘れられちまう…ってのはChris Rockの言葉だが、まったくその通りなんだよ。それくらいのスピードで世の中は変化していて、世間の集中力はそれくらい続かなくなっているということだ。失敗からも成功からも、必ず何かを学ぶべし。成長し、適応し、そして自分らしくあれ!

LAUNCH:
あなた方が犯し得る最大の過ちとは何でしょう。

NICHOLAS:
俺たちが犯し得る最大の過ちといえば、ダンスの振付けを…Britney SpearsとかBackstreet Boysみたいな振りを付けられること。そんなの、当面はやりっこないけどさ!

P-NUT:
目下のところ考えられるのは、マスコミを信じてしまうことかな。昔の知り合いや業界以外の人間から現状を教えてもらわないと、夢の世界に自分を見失ってしまいかねない。それじゃダメだ。'80年代にCNNが取ったJames Brownのインタヴューで、彼は黄色のサングラスをかけていて、それが目に良くない気がするからって目を閉じたままでいたことがあったけど、筋が通ってないだろ。あれじゃまるで…誤解しないでくれよ、James、あんたのことは大好きだ。でも、あんたは自分の頭の中でずっと暮らしてきたから、世の中ってものがわかってないんじゃないのかね。周りからは口を揃えてグレイトだと称えられ、あんたがグレイトなのは確かなんだが、いつでもエンターテイナーでいるわけにはいかないだろ。ひとりの人間でいる時間も必要だ。素の自分でね。まぁ、あれが素のあんただってことなら、俺の完全な誤解だから謝りますけど。では、ご機嫌よう。

LAUNCH:
コンピュータやインターネットに関しては、どの程度詳しいんですか。

NICHOLAS:
うちのバンドじゃ、テクノロジーを把握してるのは俺ってことになってるんだ。2台のコンピュータを稼動させ、サテライトシステムを駆使して情報収集に励む日々さ。俺はテクノロジーが大好きで、何も怖いものじゃないと思ってる。驚異的なコミュニケーション手段だよ。うちのホームページも、どんどん拡張したいと思ってるんだ。新しく、前のよりうんとクールなホームページを開設したばっかりで、動画とか立体写真も載ってるんだぜ。部屋に入って、色んな視点から眺めることもできる。音声も入ってるよ。俺としては、自分たちの曲のりミックスを作って、そこで無料で公開したいんだ。気に入ったやつに投票できるようにしてさ。何もかもがスピードアップしてる時代に、こいつは余暇の過ごし方として画期的なものになっていくだろう。そうやって考えると俺はワクワクしてくる。ヘルシーで自然な余暇の過ごし方じゃないか。テクノロジー、大いにけっこう。

P-NUT:
俺もみんなと同じで、インターネットやコンピュータ産業は既に、あらゆる人間の生活の大きな位置を占めるようになっていると思う。旅行ばっかりしてるとか、どこかの島で本を書いてるとかいう人は別だろうがね。電話のスピードで情報を引っ張れるんだから、かなりの速度だよな。しかも世界中の情報にアクセスできるんだから。ただ、ここでもやっぱり自分ってものを持っとかないとダメだ。引きこもってちゃいけない。画面に写るすべてが必ずしも真実ではないんだし、何事も少し差し引いて考えること。国内のニュースに関しては特にそうだ。MP3にしろリアルオーディオにしろ、何らかのデジタル音楽変換が近いうちにレコード会社に取って代わるとは、俺には思えない。どこかで金が消えてってるんだ。インターネットから手間隙かけて俺らの音楽を丸ごとダウンロードするくらい熱心な奴らは、アルバムが出れば真っ先に列に並ぶのと同じ顔ぶれさ。そういう熱心な連中こそが、アルバムを買いに出かけるゴリゴリのファンなんだ。うちのマネージャーなんか、髪の毛を掻きむしらんばかりだが、俺ら自身は別に害はないと思ってる。俺が保証するよ。

LAUNCH:
311にメッセージがあるとすれば、それは何でしょうか。

NICHOLAS:
311にメッセージがあるとすれば、俺が『Transistor』で書いた歌詞がそれだろう。つまりは、「売上が落ちないうちに、ひとつ言っときたいのは、前向きに生きろってこと。それと、自分の人生、大切に」ってやつ。それが俺たちの信念の根っこの部分だからな。人生、一度しかないんだから、とことんやらなくちゃ。キレイなものを片っ端から見て、生きてるうちに自分のものにするんだ。

P-NUT:
とにかく、前向きにってことだろうな。俺の頭がドレッドだからって、俺らは別に、周りにヒナギクが飛び交ってるわけでもなけりゃ、完全なるヒッピーってわけでもない。むしろ前向きに、楽しんでやってるわけで、ライヴで魅せるってことを心から大事に思ってるんだ。俺らならきっと、音楽の形じゃなくて、哲学で'70年代を立派に渡っていけたと思うよ。俺らのツアーは半端じゃない。思い切って休みをとったのは、これからも好きなだけツアーして、書いたまんまの姿で曲をみんなに届けていけるようにしたかったからなんだ。

LAUNCH:
シャワーを浴びながら一番歌いたくなるのは、どの曲ですか。

NICHOLAS:
それだったらたぶん、“All Of Me”だな。あの曲には俺、感じるものがあるんだ。

P-Nut:
俺がシャワーを浴びながら歌いそうなのは、日によって違うだろうけど、Tom Waitsの曲ってのが一番アリそうだな。喉がジャリジャリしてたって楽に歌えそうなやつ。朝は、よくそうなるんだ。じゃなかったら、Smithsの曲。今朝も気がついたらSmithsの曲を口ずさんでて、自分が恥ずかしかったよ。とにかく、俺と声域が同じ人じゃないとな。バリトンさ。じゃないと無理だ。

LAUNCH:
長いツアー先では、どんな音楽を聴いていますか。

NICHOLAS:
最近はどうしても、Breakbeat Eraっていう新しいドラムンベースのバンドになっちゃうな。Roni Sizeの新しいプロジェクトで、こないだリリース前のサンプルカセットをもらったんだ。

P-NUT:
まずはCurtis Mayfieldをかけて周囲の気分を和らげたところで、次はMelvinsで気合を入れてショウに備える。そんな感じかな。何か両極端なやつ。聴きやすいのに続けて、うんと騒がしいやつ。

LAUNCH:
セックスの時に聴く音楽は?

NICHOLAS:
一番いいのは、アダルトフェイヴァリットのラジオを流しとくこと。うちの衛星放送に入ってるんだ。Perry Comoとか、Frank Sinatoraでも安っぽいやつとか、Nat "King" Coleとか、Mel Tormeとか、おぞましいのばっかりかかる局なんだけど、俺のノリもそんなだから。

P-NUT:
俺としては、シ~ンとした中でセックスするのが非常に好ましい。ハイスクール時代は音楽で不快なノイズを掻き消すのが気に入ってたんだけど、俺も大人になったんでね。最近は、そういう音も聞いていたいんだよ。その方がずっとロマンチックだ。沈黙って、いいもんだぜ。そういえば高校時代、セックスしながらお互いに歌いかけるっていうカップルがいたけど、すげぇ話だよな。俺だったら、むしろ息遣いを聞いていたい。

LAUNCH:
ステージ上であなたの身に起こった、最も奇妙な出来事は?

NICHOLAS:
ステージ上で俺の身に起こった出来事で、記憶にある限り一番奇妙だったのは、P-Nutの方を見たら、こいつがゲロ吐いてたってやつ。こいつ、すっかり盛り上がっちまってて、吐きはしたけど演奏は止めなかったんだ。ビートのひとつだってはずさなかった。それくらい気合が入ってたんだよな。あれは'92年か'91年のことだ。

P-NUT:
俺は、ニューオーリンズのすごく有名なクラブで、今一緒に住んでるガールフレンドと知り合った時のことだな。すぐ前にいたノリノリの女の子が、俺の目の前に立ちはだかったんだ。実際には数秒ってとこだったんだろうが、俺には数分に思えて、ちょうど彼女の腹のあたりに、ケリを入れちまった。そんなに痛い思いをさせたわけじゃないが、こっちはアドレナリンが爆発してたんで、思わず彼女を蹴り落としちまったわけ。それからショウが終わるまで、彼女はずっと俺を睨んでたよ。俺もすごく嫌な気分になって、バスに戻ってから落ち込んじゃってさ。悪いとは思ったんだけど、自分の持ち場を取り戻したい一心だったもんで。

LAUNCH:
311以前に就いた仕事で、一番マシだったのは何ですか。

NICHOLAS:
LAのダウンタウンでウェイターをやってたことがある。朝食の時間帯を担当して、他に人がいないのをいいことに、現金払いの分の伝票をちょこっといじって金を自分のポケットに…なんてこともあったな。

P-NUT:
俺の人生が恵まれてたことのひとつに、あんまり仕事をしないで済んでるってのがあって、唯一就職したのがファミレスの皿洗いを2週間てやつ。アンプを入れるラックケースが欲しかっただけなんだ。店の支配人と知り合いだったんで、自分のペースでやらせてもらえたし、金がたまったらサヨナラさ。他には、うちの母親の手伝いで家の掃除とか。母親が不動産屋をやってた関係でね。もらった仕事について、文句を言えた立場じゃないよ。どれもそんなに酷いもんじゃなかったし、短期間のばっかりだから。

LAUNCH:
ロックバンドで成功しなければ、何を仕事にしているでしょう。

NICHOLAS:
ロックスターじゃなかったら何をしてるかって? Branch Davidiansの新しいリーダーかな。

P-NUT:
俺はベースの先生。オマハでは15歳にしてベースを教えてたんだぜ。すごく楽しかった。俺は何らかの形で音楽に関わってると思う。6歳から9歳までヴァイオリンをやって、10歳でギターを始めて、それから11歳でベースを始めて…と、音楽はずっと俺の人生の一部だったんだから、他には考えられないよ。

LAUNCH:
このバンドに起こった最悪の事件は何ですか。

NICHOLAS:
俺たちに降りかかった最悪の事件といえば、'93年のツアー車の火事で決まりだろう。何もかも燃えちまった。命からがら脱出さ。機材も服も、現金もパァ。それでも次の晩には、機材を借りてショウをやった。ひとつの標石にしてやろうと思ってね。これを切り抜けることができれば、何だって切り抜けていけるって。

P-NUT:
俺はあんまりクヨクヨしない方だから、考えないと思い出せないな。何だろう…そんなに何度も酷い目に遭ってはいないよな。例の車の火事だって、大したことはない。ちょっとした通行妨害っていう程度さ。俺たちは、かえって一致団結して強くなった。あれでポシャっちまうか、あるいは新たな出発と見なすか。俺らは進み続けた。そうするしかなかったし、他に考えもしなかった。とにかく、無事だったトラックにさっさと乗り移れ、と。足止めを食らうか食らわないか、ふたつにひとつだったんだ。

LAUNCH:
Backstreet Boysでは誰が一番好きですか。

NICHOLAS: 
Backstreet Boysの誰が一番好きかって? 髭の奴かな。

P-NUT:
Backstreet Boysにはいないような奴が一番いい。ただ、ボーイバンドの猛攻が進んでるのは、マジでクールだと思う。連中のお陰で、311は全面的に正当化されていく。あいつらは、どこかで聴いたような曲ばかり書いているから、「へぇ、この曲のこのパートはすごいな!」とは決して思えない。自分で枠を広げなきゃダメなんだよ。俺がああいうバンドの一員だったら、言ってやりたいのはそれだね。俺が311を楽しんでるってのは、そこなわけ。ミュージシャンが自ら仕切ってるバンドに対して、彼らはマネージャーに仕切られてるバンドってことさ。

LAUNCH:
Spice Girlsのメンバーになるなら、誰になりたいですか。

NICHOLAS:
Spice Girlにならなきゃならないなら、Scary Spiceがいいや。あのコが一番、やる気を感じさせるから。

P-NUT:
Spice Girlsも含めて、その辺はみんな作られたバンドだ。そのうち愛想を尽かされるさ。オリジナル曲を書かないんじゃ、余計に早く飽きられる。先の見込みがないんじゃ、No.1になったって何の意味もないよ。俺の服装は、あの中ではSporty Spiceがいくらか近いと思うけど、彼女たちのことは全然詳しくないんで、言えるのはそのくらい。服装のことぐらいだ。歌えるのも彼女だけだって話も聞いたし。

LAUNCH:
自分の人生が最も似通っていると思うものは何ですか。

NICHOLAS:
たまに思うのは、テレビ番組の『Dr.Katz』に出てた息子のBen。我ながらどうしていいのかわからないまま家で悶々としてたりすると、『Dr.Katz』のダメ息子に共感することがある。

P-NUT:
俺の人生と一番似てるのは、マンガだな。何でもアリで、物の形も普通じゃなく見えることがよくあって、色合いもちょっとボケてるし、登場人物は完全にいかれてるし。

LAUNCH:
今まで耳にした、最高にバカバカしい歌詞は?

NICHOLAS:
バカバカしい歌詞? だったら、「子供たちは私たちの未来だと、私は信じている」(Whitney Houstonの“The Greatest Love Of All”より)ってやつだな。あんなくだらない歌はない。見え透いてんのも、わざとらしいのも、あそこまでだろ。

P-NUT:
これは難しいよ。曲にはバカな台詞が山ほど詰まってるもんだからな。酷い歌詞を自信なさげに歌えば笑われるだろうが、自信持って歌えばそれで通っちまうもんだ。けど、そんなこと言えた義理か? 自分でやる度胸もないくせしてさ。俺は自分の楽器とか手とか、自分で作った音楽とかの陰に隠れてる人間だ。歌詞を書く人って、ほんとスゴイと思うよ。だって、それって何百万という人の前で、素っ裸になるようなもんだろ。この質問は難しい。俺はパスしとく。

LAUNCH:
消えそうなトレンド、もしくは人物は?

NICHOLAS:
希望としてはGeorge W. Bush。消えそうな人物? Backstreet Boysかな。

P-NUT:
マネージメント主体のバンド。自分たちで仕切れてないバンド。独創的でないバンド。ちょっとでも、かすかでもいいから人を驚かせることをしなくっちゃ。自分らのために何かやる…自分らを納得させることだ。そうすれば、みんなわかってくれる。でなきゃ、この世界じゃ後退してくことになって、あっという間に忘れられちまうよ。

LAUNCH:
有名人のお似合いカップルといえば?

P-NUT:
俺とLes Claypool。一緒にベースのアルバムを作るんだ。ベース2本のアルバム。しかも、いやらしいやつ。めちゃくちゃいやらしくて、彼と俺以外、誰にも理解できないようなやつ。

NICHOLAS:
すぐ思い浮かぶのは、Carmen Electra。Carmen ElectraとDennis Rodman。これ以上クレイジーな組み合わせは考えられないよ。あの2人にはヨリを戻してもらわなきゃ。離れられない仲ってやつさ。応援してるぜ!

LAUNCH:
誰かを崖から突き落とすとしたら、誰を?

P-NUT:
意地の悪い質問だな。わかんないよ。ボーイバンドの背景にある哲学は、崖から突き落としてやる必要があると思うが、ああいう音楽が良いとか悪いとか、俺には言えないもんな。あれも人によっちゃアートなんだし、あれがすべてだって人もいるんだろうから。それに、創造性のフィールドが全然違うから、俺にはよくわからないんだ。でも、世間はお見通しだと思うよ。無理にくっつけられてることは、バレてるはずだ。「さぁ、この人と一緒にバンドを組んで」ってね。くだらねぇ。本当の絆ってのは、一緒に色々と経験しなきゃ生まれないものなんだよ。ああいう連中に本物の絆なんて俺には感じられない。今まで浮き沈みを越えて311が一緒にやってこられたのは、まさにその絆があったからこそなんだ。

NICHOLAS:
俺は、ボーイバンドはまとめて崖から突き落とされちまえばいいと思う。良い音楽を書いてるバンドはいくらでもいるのに、自作の曲を演奏するバンドから、世間はどんどん離れていってしまっている。仕組まれた音楽が、ヘンに復興してきてるんだ。けど、最終的にはそれも良いバンドに道を譲ることになるさ。きっと揺り戻しがくる。ティーンものにばかり金が注ぎ込まれてるのは不思議だが、そのうちきっと、パンクの揺り戻しがくるよ。

LAUNCH:
聞き飽きた曲は?

P-NUT:
それが、俺はあんまりラジオを聴かないんだ。欲の皮が突っ張らかってるもんで、どうしても自分たちの曲がかかるのを期待しちゃうんでね。でも、どうだろう。これは難しいよ。その手の音楽にドップリってわけじゃないから、嫌いになったり、聴きたくなくなったりっていうところまでいってないし。ああいう音楽は、ずっと聴いてると、どうしたってそうなるよ。曲線が一切なくて、直線ばっかりだから。そういう連中を全員集合させて、次はオリジナリティのあるものを作ってこいって言ってやりたい。

NICHOLAS:
俺としては、誰であれあんまり攻撃したくないな。故人を選ぼうか…う~ん、いいのが思い浮かばないや。

LAUNCH:
無人島で身動きできなくなって、人肉を食うしかなくなったとします。最終的に自分が食べなければならなくなる、一緒に足止めを食らう相手は誰がいいですか。

P-NUT:
しばらく食えるように、デッカイ奴がいい。こいつはキツイな。バスケの選手ばっかり浮かんでくるよ。Shaqには会ってみたい。会えたら嬉しいし、Shaqだったらかなり食いでがあるだろう。Shaqの干し肉もできるし、タイ風Shaqもできるし、あの人なら脚1本で一通りのメニューに使い回せそうだ。俺は是非、Shaqとご一緒したいね。

NICHOLAS:
俺は太った奴。うんと油っぽいステーキが好みなんだ。Monica Lewinskyを一切れ、とかね。人肉を食うしかないとなれば、たぶん彼女だな。

by dave_dimartino

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