SBDの音楽性と男気が、今なお剥けようとしている“熱い”ライヴ!

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SUPER BUTTER DOGの飄々たる立ち位置と、
“熱さ”が象徴的だったクアトロ。
彼らの音楽性と男気は今なおも剥けようとしている!

 まったく人間ってものは、なんだってこう“熱いモノに弱いんだろう。熱い演奏、熱い歌、熱い歓声に熱い想い──ついでに、際限なく盛り上がる場内の熱気にクラクラきたりなんかして、つくづく弱い。SUPER BUTTER DOGの“COMMUNICACION JAPAN TOUR 2000最終日の渋谷クラブクアトロは、まさにそういった人間の性質として弱い部分を闇雲に刺激しまくるライブだった。精神的にも身体的にも、かなりキた。
 ムギュムギュに詰まった観客の前に飄々とした面持ちの5人が現われ、まずはカリプソ一歩手前のアレンジが、微妙なゆったり感と粘っこいノリを生み出す「ボク・モードキミ・モード」からライヴはスタート。スモーキーで、だけど時折ヒステリックな表情をちらつかせる永積のヴォーカルがサウンドの色気を操っていく。とりたてて速いテンポの曲ではないのに床を
揺らすほど観客をノせてしまうのは彼らの演奏力以外の何ものでもないが、ものの2、3曲で自分たちの持つメロディーの良さを当然のものとして認識させたり、彼らのようなスタイルのバンドに“歌詞”が存在していることの意味を悟らせるあたりが、さすがは趣味流行だけで音楽を始めた人たちとは違っている。イントロのワウ・ギターが響くだけで歓声が上がるほど、歌もの好きな日本人の情感を煽る「まわれダイヤル」、池田のキーボードと竹内のギターがシンクロするごとにジャジーなムードを駆り立てる「Give Me Delightーいーじゃない'99ー」など、要するにSUPER BUTTER DOGのライブにおいて“ここがいいなんて要点を絞ったような快楽は存在しないのだ!

ということを再確認させられた気がした。ファンク好きであろうがロック好きであろうがフォーク好きであろうが、その時々のリズムでノせてしまう、それが彼らの最もフォーマルな音楽観なのだ。その証拠に、メンバー全員自らが演奏しながら曲の良さに酔えている。そんなバンドを見ること自体が、ごく久々だった。
「俺さ、最近ヤンキーのしゃべり方ができるようになったんだよ。“アフロすげえなー”(←ダミ声で)って、どう?」(永積)
「それはおかっぴきだよ!」(池田)
とか何とか小池のトークを中心にMCでも場を沸かしつつ、スケール感のある英語詞ナンバー「コード」をじっくり聴かせ、かと思えば「外出中」から後半は再び観客の腰から下を狙ったナンバーをぶつけていく。中でも「みんなやってる? 私はこれでテニスをやめました!」と羽子板を振り回す小池の振りが強烈にツボを突く「マッケンLO」は、そんな彼らのショウ的センスと、それを丸め込んでしまうくらいのロック的カッコ良さを物語っていたように思う。
 デビューから3年が経ち、その頃に比べればふた皮もみ皮も剥けたSUPER BUTTER DOGではあるけれど、その音楽性と男気は今なおも剥けようとしているのだと実感させてくれたライヴ。身も心もフラフラになってしまったが、いくら毅然としていようにも心がうち震え、むせび泣いてしまうのだからしょうがないのだ。けれど会場を出るとともに体に染み付いていたそのけだるさは、心地よい爽快感に変わっていた。
●文/川上きくえ
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