普遍的な音を、同時に2000年の音楽としての表現を

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 一昨年、東京を中心にして起こった80年代リバイバル。
テクノ、エレクトロなど現在進行形の音楽とシンクロする形で、
当時のニューウエイブが改めて脚光を浴びることとなったが、そんな中、
ポリシックス、モトコンポとともに、「TOKYO NEW WAVE OFNEW WAVE」シーンを
牽引していたのがスプージーズだ。
 ギター&ボーカル、シンセ・ベース、ドラムスといったイレギュラーな編成。
サーフィン・ミュージックとテクノポップとをかけあわせた唯一無二の
オルタナティヴ・ミュージック。
シーンが一段落してからも、コンスタントにシングルリリースや
コンピレーションへの参加など精力的に活動してきた彼等が1年7ヵ月ぶりに
セカンドアルバムをリリースする。しかもそのアルバムにさきがけて、
リミックス・マキシ・シングルもリリース。
 予想を裏切る連続リリースで話題を呼んでいるスプージーズのリーダー、
松江潤の胸中にせまる! (インタビュア大野智己)
 

●アメリカツアーに行ってたそうですね。
 3月に2週間行ってました。テキサスのオースティンでサウス・バイ・サウス・ウェストに出た後で、ニューヨークの〈CBGB〉出て、シカゴ行って、サンフランシスコ行って、最後はシアトル。全部で7ヵ所。最初はサウス・バイ・サウス・ウェストに出るだけの予定だったんだけど、急遽、一緒に行ったナンバーガールやロリータ18号らとツアーすることになって。
●反応良かったんじゃないですか?
 すごくよかった。向こうの人が宣伝してくれてて、「ジャパン・ナイト」とかってポスターなんかも貼ってあったんだけど、どこもソールドアウトで、行列できたりして。ライブ自体もすごく反応良かったですね。英語のMCは面倒だったけど(笑)。
●今回はそんな海外ツアー帰りの松江さんに4月リリースされたばかりのリミックス・マキシと5月リリースのセカンド・アルバムとの話をうかがいたいんですが(笑)1年7ヵ月振りということで、その間をふりかえってみてどうですか?
 プラスチックスのトリビュートアルバムやったり、ミニ・アルバムを出したりしてるから久々ってかんじはしないし、音楽的な指向の変化はないですけど、ミュージシャンとしての意識は大きく変わりましたよね。それこそ当時は、バンドの中の一人って意識しかなくって、みんなと足並みそろえようとしてたんですけど、メンバーチェンジがあったりとかいろいろあって、自分をセーブしないで思いきりやるようにしたんですよ。そうしたらすごく自分の中で弾けるようなものがあって、いろんなことが出来るような気になってきた。しかも、それがきっかけで他のメンバーの意識にも変化が生まれるようになって。だから以前より個々のエネルギーが上がってるので、音のクォリティがとても上がってるのを感じますね。それと今回、レコーディングについては全部デジタルで、データをやりとりする方法をとったんだけど、音がうまく絡んでいて、かえってバンドっぽいかも。やりずらかったけど、さらに音の可能性が広がった気がしましたね。
●逆に変わってないっていうのはどうなんですか?
 やっぱり、ギターのロックな部分っていうことですかね。ニューウェイブにサーフ(サーフィン・ミュージック)入ってるサウンドってのは相変わらず好きですし。
●松江さんは以前からニューウェイブ好きって公言してますけど、改めて聞きますけど、どこが好きなんですか?
 僕にとってのニューウェイブっていうのは、音楽っていうよりも時代なんですよ。79?80年の時代の音楽を巻き込んだ社会現象っていうか。その時代に一番、影響を受けてるから、常にそこへ何事も集約されたちゃうんですよね。特にその時代の町の風景っていうとゲームセンターなんですよ。ゲームセンターが出来て、そこに通ってた。いまだと小学生のいくクラブみたいなものかな(笑)でもね、僕、ゲーセン行ってもね、お金ないし、下手だからゲームやらなかったんですね。だから、いつもラジカセもっていってたんです。録音してたんですよね。
●へっ?
 その頃から、機械音が好きでしたね。だから、それがSPOOZYSの音の原点なのかも
●今回のアルバムでもそうしたニューウェイブな音は健在ですが、音的な面で、特に意識した部分ってありましたか?
 SFからバーチャルへみたいな感じを強く意識しましたね。これまでは、50年代のSFみたいなイメージで、例えばタイヤのついていない自動車が走ってるみたいな世界感をもってやってたんですけど、2000年になったことでそれだけでは物足りなくて、さらにバーチャルなものっていうか、実際にUFOにさらわれた人の声を入れてみるとか、そういうもう一歩、踏み込んだものを意識してますね。それと録り方も、今まではわざと80年代っぽい感じにこだわっていたんですけど、今回はもっと新しい感じにしたかったんで変えてみたりとか。ギターの音っていうのは、より普遍的なものだと思うんだけど、そうした普遍的な音を出しつつ、いかにして2000年の音楽として表現するか。そこに気をつかいましたね。
●あまり80年代にこだわってない、と。
 いわゆる僕らの80年代の捉え方は、みんなのイメージと実は違うんです。80年代をやろうとか、もう少し出しちゃってもいいじゃないかとかって実はあまり考えてない。むしろ、宇宙ロックっていうのに近いかも。いわゆるおきまりのニューウェイブのカテゴリーにはめられるものをやろうっていうんじゃなくて、結局は好きなものが、そういう感覚に収まってるってだけで。
●たしかに、SPOOZYSは、ニューウェイブというよりもロックにこだわってる印象がありますよね。
 もちろんニューウェイブは大好きなんですけどね。でも、ニューウェイブっていうには、どうしてもクールにやれない。つい熱くなっちゃう。思わずはみだしちゃって、どうにもダメですね(笑)。
●そのはみだし具合がSPOOZYSの魅力ですよね。でも、1曲目の「ハイウェイ・ヒプノシス」っていう曲なんて、大きな道を走っていたらUFOに誘拐されて・・・って曲ですけど、松江さんは曲を書くとき、そうやってヴィジュアルイメージみたいなものを意識してつくるんですか?
 いや、そうじゃないですね。わりと、リフとかどんどん浮かんできて、まるで落書きするみたいな感じですね。曲をつくろうと思ってつくかんじじゃない。僕にとってそういう曲をつくる過程はとても楽しいですよね。なんせ落書きですから(笑)割と日常的にやってるだけですね。
●なるほど。じゃぁ、天然で曲が浮かんできて、それが最終的にヴィジュアル・イメージなりに結びついていくわけですね。
 そう。
●その意味では、一つのイメージをみんなで壊して再構築するようなリミックスをSPOOZYSの曲でやったらどうなるか気になりますが、今回、アルバムに先駆けてリミックス・マキシ・シングルが出るんですよね。
 うん。
●それにしても人選が面白いですね。(註:チボ・マットの本田ゆか、くるりの岸田繁&佐藤征史、福富幸宏の3組が参加している)
 それはSPOOZYSの重要な3つの要素なんですよ。福富さんにお願いしたのは彼が信頼できるリミキサーだからで、つまり自分たちも現在進行形の新しい音楽の展開をやっていきたいということ。チボマットは、アメリカで生活しているアーティストですけど、日本だけをホームにするんじゃなくて、海外に住んでいても東京とまるで同じように音楽活動をしている姿勢に共感を覚えるってこと。そして、くるりは、東京で同じ目線で活動できるアーティストとは今後もともに歩んでいきたいってこと。こうした僕らの、3つ姿勢を見せたいということでそれぞれ異なるスタンスの3組にお願いしたんですよね
●なるほど。自分の曲を人にアレンジされるのはどうですか?
 ずっとやりたかったから、とてもよかったです。今後も人の曲のリミックスをやりたいし、自分のもどんどんやってもらいたい。
●最近はDJも時折、やってますよね。DJをやる影響とかってあります?
 うん、ありますよね。演奏していても曲の聞かせ方についていろいろと考えるようになった。曲全体に影響を与えてるかも。バンドやってても、打ち込みでやる以上は、テンポだったり、あまり大きく変わるってことはないんだけど、DJって表現として、コンピューターを逆にヒューマンなかんじでうまくコントロールできる気がするんですよね。そこがやってて面白いところですよね。でも、DJプレイに関していえば、僕の場合は感情に走っちゃって、勢いに任せちゃうんで、普通のDJとは違うのかもしれませんけど(笑)。
●いかにもギタリスト的DJというか(笑)それにしても、いろんな形で、いろんな展開がますます期待されるSPOOZYSなんですが、最後に、冒頭で海外でのライブを行ったって話がありましたけど、今後、海外で拠点を置いてやろうなんてプランはあるんですか?
 えっ(含み笑)・・・う?ん、実は考えてます。これからもっと具体的になっていく予定なんですよ。まだ、あんまり言えないんですけどね(笑)でも、メンバー全体の意思としてはかなり固まりつつあります。
●向こうのレーベルからのオファーがすでにいくつもあったり。
 それもあるんですけど。まだ内緒で(笑)
●SPOOZYSは、次のアルバムの予定は(笑)。
 そうですね、とりあえず年末にもう一枚くらいは出したいですよね。すでに曲もたまっていってますし。
●レコーディングの合間にいまから英語のMCを練習してたりとか。
 まぁ、そのあたりのコメントはもうしばらく待ってくださいよ、ね(笑)。

2nd Album
『SPOOZYS』
Remix Maxi Single
『ASTRAL ASTRONAUTS』
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