対談 Little Tenpos & 大野由美子(Buffala Daughter)

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 Little Tempo & 大野由美子(BuffaloDaughter)対談
写真:tommy & maaaaaatsu 3 デザイン:木本園子
 常にどこにも属さないオリジナルなスタンスで活動しているリトル・テンポが海外のヴォーカリストをフィーチャーしたヴォーカル・アルバム『LittleTempo meets Voices of Flowers』を発売、そしてそれには同じようなスタンスでグローバルな活動を続けるバッファロー・ドーターの大野由美子がチェロ・パンで参加していると聞けば興味を持たない人はいないだろう。
 世の中はゴールデンウィーク真っ直中、みんな浮かれ足でレジャーにいそしむ中、こちらも青空の下でのキャンプ対談・・・とはならなかなかったものの、ガンガンに70・80年代ジャパニーズ歌謡ロックが流れる歌舞伎町の喫茶店で、リトル・テンポのメンバー3人と大野由美子さんにまったりと語っていただきました。

佐々木育真(以下、佐々木):大野さんの前のバンドってなんていう名前だっけ?
大野由美子(以下、大野):ハバナエキゾチカ。
佐々木:俺らハバナエキゾチカと一緒に演ったことがあるんだよ。
大野:ジャズボーンズでしょ?それは知ってるわ(笑)
佐々木:すっごい古い話だよこれ。(渋谷の)ラママで一緒に演ったんだよ。
大野:まだ大学生だったよね?だから、12年ぐらい前?でも全然しゃべらなかったんだよね(笑)ジャズボーンズの人は全然しゃべらないって有名で・・・。
佐々木:そんな事はないでしょ?(笑)
大野:本当だって(笑)
佐々木:2、3回一緒に演ったよね。ギターの彼女がね、ドレッドでさ、スゲー格好よかったんだよ。
大野:シュガーね。すごい暴力的だったよね。
佐々木:で、シュガーさんがめちゃくちゃギター上手くて。それで、彼女が引けた後にすごい沢山ピックが落ちてんだよ(笑)それが凄い印象に残ってる。
大野:リトル・テンポは前にサイレントポエツと一緒にやってたんでしょ?
SEIJI"BIGBIRD"(以下、SEIJI):春野(高広)とは昔レゲエバンドを一緒にやってました。
佐々木:DREAD BEAT AN' BLOODっていう(笑)ジャズボーンズのボーカルと一緒に・・・覚えてる?
大野:いや、だってみんな影が薄かったんだもん(笑)しゃべらないからさ。
佐々木:わりとスタイリッシュなバンドだったんだよね、多分。
土生"TICO"剛(以下、TICO):若気の至りで格好つけてたんだよね。
大野:ライブハウスに出る中ではおしゃれ系みたいな、いかにも美大生っていう(笑)
佐々木:その頃土生(TICO)はね、アコギブラザーズっていうのを演ってたんだよね。
TICO:アコギだけでブルースバンドみたいなのを演ってたの。
大野:土生くんとはあれだよね、レネゲイズ(スティールパン・バンド)を観に行って何回か会った。児玉(和文)さんと来ててね。 

佐々木:バッファロードーターは今はライブやってるの?
大野:今はね、レコーディング中だけど、後1週間ぐらいで完パケになるのでは、と。
SEIJI:ライブもバンバン向こうでやるんでしょう?
大野:うん、前の出したときは半年間は向こうだった。プロモーションで最初2週間だけヨーロッパで行って、その後2ヶ月アメリカ行って、ヨーロッパで1か月ライブ演ってその後日本に帰ってきて「はぁ?」って思ったら、もう一回6月にチベタンがあるからってアメリカ呼ばれたら、夏のライブが決まっちゃってて(笑)で、7、8とアメリカ回ったら、今度は評判が良かったから秋もやれっって言われて(笑)また秋に1ヶ月行ってきて。
SEIJI:じゃあまたアルバム出したらそうなっちゃうんだ?
大野:今度は絶対いやだからって言ってあるけど・・・。やっぱりレーベルが向こうだから。もうね、アメリカ何周したかわからないぐらい(笑)
佐々木:大野さん達が向こうで活動するきっかけは何だったの?
大野:日本で、うちの音楽を聴いてくれる人が圧倒的に少ないって思ったから。でも世界的に考えたらもっといるんじゃないかと思って「例えばアメリカで活動始めたらどうかなあ」って事で。テープ送ったりもしてたんだけど。直接のきっかけはルシャス・ジャクソンの子にCDを渡したらルシャスの子がすごく気に入って、ビースティー(ビースティー・ボーイズ)に渡して、それで一緒にやることになったのね。
佐々木:なるほどねー。やっぱりアメリカとヨーロッパだと受け方が違う?
大野:アメリカはね、歌詞が面白くないと、とかすごいポジティヴな力がガーってでてないと、あんまり聴いてくれないの。だからちょっと難しい。
佐々木:ヨーロッパのほうがやりやすい?
大野:ヨーロッパだとわりと雰囲気で見てくれるからね。私はヨーロッパのほうが好き、すごい繊細な部分もわかってくれるのね。でもアメリカはほとんどの人が、ただ単にライブで「オーッ」って言ったりお酒飲んで叫びたいっていう人だから。
TICO:食いモンがやっぱそうだから。
大野:そう、まさにそう。
SEIJI:そりゃステーキ食ってりゃそうなるよな。
大野:だからアメリカでやるライブとヨーロッパでやるライブは曲変えたりアレンジちょっと変えたりするもん。

SEIJI:大野さんはバッファローでパン(スティールパン)やったりしないんですか?
大野:バッファローではね、私はベースとムーグと歌やってて、いっぱい楽器があるからもう、そんな無謀なことは考えない(笑)
SEIJI:どうしてチェロパンを始めたんですか?
大野:最初始めたきっかけがヤン富田さんの主催するアストロエイジ・スティール・オーケストラで、前から興味があったからパートを与えてもらったんだけど、まずチェロパンは場所を取るじゃない?で、その時私実家に住んでいて車も持ってたからヤンさんが「おまえやれ」って(笑)
佐々木:いいねそれ。「身体デカイからベースやれ」っていうのと同じだよね。
SEIJI:それ俺と一緒じゃん。
大野:「ベースパンとまではいわないからチェロパンぐらいなら行けるんじゃないか?お前ベースやってるし」って言われて。そしたらヤンさんがトリニダードに行くことがあって「買ってくるから」って買ってきちゃったんだよね(笑)でもその音聴いたら「もう絶対やりたい」って。
TICO:あの音聴いたらね、スペースがあったら買うよね。
佐々木:なんか、すごいいい音だよね。どうしても今回のアルバムみたいなのではどれがチェロパンか、っていうのはよく耳を磨ぎ澄まさないと聴こえないけど、『燃える音』なんですよね。もしかしたらスティールパンで一番いい音域っていうかさ、あんまり金属っぽくもないし。
TICO:金属感がない繊細なところなんですよ。
大野:よくエレガントな音だっていわれるけど、聴いたことない音だよね。でも置き場所にちょっと苦労しますね。(笑)

大野:今回のアルバムとか、歌詞は誰が書いてるの?
佐々木:歌う本人。
TICO:俺らはインスト・バンドだから、ベーシックを送ってそれを聴いてインスパイアしてくれって。
大野:面白いね、特に違う国の人だと「おおっ」と思うこともありそうで。
佐々木:でもね、本当にハッピーな歌詞が一個もないよね。去年はエディ(エディ・リーダー)とLKJ(リントン・クウェシ・ジョンソン)に歌ってもらって、今回は3組でしょ。どれも大ハッピーっていうのはないよね。
SEIJI:そういうのは自分らじゃわかんないけど、やっぱりそうなのかな?
佐々木:独特な哀愁が出てるんだろうね(笑)『ベイビー』の時に元曲のタイトルが『ツェーナ・ツェーナ』ってつけてあって、それ自体は別に意味はなかったんだけど「これは名前なのか?男か?女か?」ってしつこく尋問みたいにされてさ。
SEIJI:こんなドレッドに言われたらさ怖くてさ、「どっちかっていうと女かな」って答えちゃって。
佐々木:そしたら「やっぱりそうか」って言われて、それで曲名が『ベイビー』になっちゃった(笑)あれタイトルが違ったら全然違ったものになったよね?
大野:でもやっぱり意味は気になるよ、すごく。
佐々木:全くヒントがないと難しいかもね。
SEIJI:バッファローは歌詞の内容はどうやって決めてるんですか?
大野:歌詞はね、シュガーがその時すごい気になっている事とか、興味のある事とか、曲調に合わせて基本的にシュガーが書くのね。でもボーカルは半分半分ぐらい。
SEIJI:俺たちも歌詞書いてみるか?
佐々木:俺は昔書いてたことあるよ。初期の頃はねボーカルがいたんですよ。その時は彼が基本的に考えて来たものを「こういうふうに変えない?」とかやってたんだけど、やっぱり歌は歌う人のもんだと思うんですよね。日本だと歌詞も曲もあって歌う女の子がいるっていうのが結構普通だけどそれはちょっとナンセンスだなって思うんですよ。歌う人がその人のイマジネーションで「こうしたい」っていうのを持ってるほうがこっちもやりやすいし。向こう(海外)の人とやってみたらほとんどお任せでできて、あっという間に録り終わって帰れる。俺らが向こうに楽器持っていって録ったらそれはまたそれで違うだろうね。気持ち良いと思うよ。
SEIJI:でもいつも思うんですよ。毎回ボーカル録りの時に一緒に演奏したら気持ち良いだろうなって。それがいつも残念で・・・。
大野:レコーディングっていつもどうしてるの?
佐々木:曲の構成はベーシックを土生が作ってきて、それをああしよう、こうしようって。
大野:あんまり人のバンドのレコーディングって行かないけど、リトル・テンポはすごい仲良くて「一緒に音を作ってます」って感じで。私、感動したもん。
佐々木:(爆笑)本当?でもそれはやっぱ時間も限られてるからじゃない?
大野:いや、その割にね、仲いいもん。ちゃんとそれぞれに分担してちゃんと相手のこと考えてやってるのが、なんかバンドだなって(笑)
ささき:(爆笑)えっ、バンドって感じした?
SEIJI:バンドって響きはずかしいなぁ(笑)
TICO:気持ち悪いよ・・・。

大野:一緒に演ってみたいバンドっている?
SEIJI:ギター・ウルフ。
佐々木:ギター・ウルフ、マッド3、ゆらゆら帝国・・・。
TICO:俺、昔マッド3のギターのヤツと一緒にバンドやってて、国分寺のライブハウスで演ったりしてたの。そういう時にギターウルフのドラムの人もよく遊びに来ててみんなでつるんで・・・みんなその頃はパンクだったの。
佐々木:土生の暴れん坊時代。
大野:そうなんだ、土生君もパンクだったの?じゃあこれから頼みたい人とかはいる?
SEIJI:とりあえずシングルのレコーディングがあるから大野さんにパンをやってもらいたいってことは決まってる。
大野:わかった、じゃぜひライブも(笑)
佐々木:大野さんに歌ってもらおう。
TICO:あ、それもありだよ。バッファローのカヴァーやろうか?
大野:あ、それ面白い(笑)やってやって。
佐々木:でも俺らかなりライブいい加減になってるから(笑)ちょっとムカつくかもしれない(笑)
SEIJI:最近ね、イントロ演ってその後全部フリーっていうそういう曲ばっかだもん。
TICO:これでいいの?!みたいな(笑)

****大野由美子****
Buffalo Daughterのメンバー。ベース、ムーグ、ヴォーカル担当。元々ハバナ・エキゾチカとして活動していたシュガー吉永と大野由美子により93年に結成され、後に山本ムーグが参加。現在ではアメリカのレーベルGrandRoyalに所属し、国内外でも絶大な人気があり、数々のアーティストのリミックスも手掛けている。8月には待望のアルバムをリリース予定。

****Little Tempo****
メンバーは土生"Tico"剛(Steel pan & melodica)、佐々木育真(G)、Seiji"BigBird"(B)。武蔵野美術大学在学中から現SILENT POETSのメンバー下田法晴、春野高広らとルーツ・レゲエのカヴァーを中心としたダブバンドで活動し、解散後にTICO、Seiji"BigBird"、下田、春野とSILENT POETSを結成。92年にTICOとSeiji"Big Bird"によってLITTLETEMPOが結成される。翌年佐々木が参加し、95年には元フィッシュマンズのHAKASE(現在は正式メンバーからは脱退しているが)もメンバーとなる。99年にはカッティング・エッジよりマキシ・シングル『UsualThings』、デビューアルバム『Ron Riddim』を発売。その他プロデュースやリミックスなど多数参加している。

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