まず僕の“歌”と“詞”を聴いて欲しい

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名だたるアーティストのサポート・キーボーディストとして活躍を続けるSunnyがソロ作品をリリース、これがまたすごい。
'80年代洋楽のセンスをブラッシュアップさせ、現在の日本シーンにすんなりと溶け込ませるそのクオリティは、ちょっとうるさいその辺の洋楽マニアをもうならせる特筆作品が目白押しである。

取材・文●ロンチ・ジャパン

■ピアノってこれでいいんだ…!

ロンチ・ジャパン:強力な作品が出来上がりましたが、こういった音楽性が形成されてきたその過程に興味があるのですが。

SUNNY:
そうですね…僕が今、音楽的に演っているものというのは、上京してきた19歳の頃に舞い戻った形なんです。その頃僕が聴き出した'70年代初頭のソウルとか大好きな音楽にやっと戻ってこれた…リスペクトしながらね。いろんなアーティストのサポート活動をしながら約10年間かけて、自分の音楽として戻すことができたという感じです。

ロンチ・ジャパン:そうそうたるアーティストのサポート活動歴、そしてセンス溢れる作品、高い音楽的素養…いったい“Sunnyって何者?”というのが素朴な気持ちなんですけど(笑)。

SUNNY:

あの、僕の場合、幸い幼少の頃から家にピアノがあったので、それを弾いて慣れ親しんでいたというのもあるし、あと、7歳上と9歳上の兄がいまして彼らがちょうどビートルズ世代のちょっと下ぐらいなんですね。まあ、それで小さい頃から、そういう音楽がいつも溢れてたという事が音楽にのめりこんでいくきっかけなんだと思います。


ロンチ・ジャパン:幼少のころからおませな環境で。

SUNNY:
そうですね。おませな悪ガキ。

ロンチ・ジャパン:ピアノもあったり…音楽一家だったんですか?

SUNNY:

いや、全然。なんか古ぼけたピアノがなぜか一台あって。小さなアップライトですよ。
ロンチ・ジャパン:ピアノの教育は受けたんですか?

SUNNY:
一応、習いに行ったりはしたんですが、その頃は音楽よりもサッカーのほうが好きだったんで(笑)、それを理由にピアノのほうもやめちゃったりして。

ロンチ・ジャパン:幼少時代のピアノ教育が、トラウマのように苦い経験として残ってしまうことも話に聞きますが、Sunnyさんの場合は?

SUNNY:

まあ結果だけ見てみると、すごく活きています。やっぱりそのピアノと出会ったからこそ今があるというのが正直、事実ですね。ただ練習は嫌いだったのも事実ですけど。


ロンチ・ジャパン:ポピュラーミュージックに不可欠な “コード”“ビート”あるいは“ボイシング”…といった概念への取り組み方が、クラシック・ピアノにはありませんよね。その点で苦労はありませんでしたか?

SUNNY:
そう! そうなんですよ。クラシックは聴いている点ではすごく良かったんですけど(笑)…。それに、あの教育方法…スパルタな点がどうも…。

ロンチ・ジャパン:指間の水かきを切ってストレッチ伸ばす!みたいな。

SUNNY:

小指を叩かれたりとか、そういう部分でもどうしてもしっくりこなくてね。僕はミッキー吉野さん(ゴダイゴのキーボーディスト)のプレイを見たときに身体に電流が走ったんですけど、それはもう、ピアノがピアノという楽器じゃなかった


ロンチ・ジャパン:こんなプレイでいいんだ!って?

SUNNY:
もう、そうです

ロンチ・ジャパン:ああ、太っててもいいのね、とか(笑)。

SUNNY:

ルックスじゃないんだ…って、そうじゃないですけど(笑)、とにかく、それが最初のロック衝動ですかね。


ギターで弾くフレーズじゃないよ

ロンチ・ジャパン:キーボーディストと言いつつ、ギターで書かれた曲もあれば、ベーシストとしての経験もあるようですね。

SUNNY:

一番最初に音楽で仕事したのがベーシストとして、なんです。ひとつのバンドでツアーを周ったというのが始まり。たまたま兄がベースで仕事をしていたこともあるんですけど、ある時ポリススティングを観て、すごいカッコいいと思って3ピースのベース&ヴォーカルのバンドを始めた事がそもそものきっかけです。


ロンチ・ジャパン:ピアノという楽器の経験、そしてベースとヴォーカルの共存スタイル…、そこで“音楽の根幹を牽引するベース部分”と“主役のメロディ”をポリで捉える感覚が身体に染みついていったんでしょうね。

SUNNY:
そうですね。ベースはやっぱりリズム楽器である…自分でリズムを引っ張っていける、というのがすごい魅力的で、ベースには本当にハマりました。もしかしたら楽器の中で一番好きな楽器かもしれない。

ロンチ・ジャパン:一方で、曲作りというのはまた全然違う世界でしょう?

SUNNY:
ええ、それこそアマチュアの頃は電車に乗っているときによく曲ができたかな。頭の中をニュートラルにして流れる景色を眺めていると、なんかいろんな波長が出て来てですね…曲も出来やすかった気がします。

ロンチ・ジャパン:電車の中でどうやってメロディを書き留めておくんですか?

SUNNY:
覚えるんです。というより、ずっと覚えたまま頭に残っているものはやっぱりいいものなんですね。そうでもないものは忘れちゃいますから。

ロンチ・ジャパン:電車でいいメロディが浮かぶこと自体は多くの人が経験していることとも思うんですけど、それを実際の楽曲として完成できるかどうかが重要ですよね。そこの過程が大きなポイントではないですか?

SUNNY:
…思い当たるところ、まあ、アマチュアの時もプロになってからも“狙って書いたことがない”ということがそもそも一番大きいのかな。自分から出るものを素直に形にして、詞に関しても思いついたものを素直に書き留っていったということ。あと、常に思っていたことに“人と違うことを”という点がずっとありましたけど、それがやっと日の目を見る形になった…それが今の形ですかね。

ロンチ・ジャパン:個性的なテンション遣いや気の利いたコード進行、アコースティックな透明感が奏でる気持ちよさなど、もう一聴して“あ、Sunny!”みたいな個性のかたまりですよ。

SUNNY:
そうですね。アマチュアからの蓄積、昔からの活動の結果が今出ているんでしょう(笑)。これから出ていく作品に関しては、徐々に変わっていく部分もあるだろうとは思うんですけど。

ロンチ・ジャパン:やはりキーボーディストとしての素養が強い武器になっているんでしょうね。

SUNNY:
あのね、アマチュアの時にバンドやってた頃、その時僕はギタリストだったんですけど、僕が曲を作ってメンバーにそれを伝えると「これ、ギターで弾くフレーズじゃないよね」ってよく言われたんですよ(笑)。

ロンチ・ジャパン:おもしろいエピソードですね。

SUNNY:
…というところから考えてみると、やっぱり僕は基本はキーボードで、ギターで曲を作ってもボイシング(編集部註:コードを構成する各音程の並べ方/選び方のこと)はキーボードっぽいのかな…。後で考えなおしてみると、そういうところもあるんじゃないかと…。

ロンチ・ジャパン:それは“血”ですね。

SUNNY:

そうですね、単にギタリストとしてギターを弾いているんじゃなくて、言わばキーボーディスト的な解釈で曲にこういうフレーズを吹き込んでいたわけで、ひょっとしてギターのフレーズじゃないのかもしれない。キーボードのフレーズの曲をギターで弾かせていた…のかもしれないですね。もともと“この楽器はこうじゃなきゃ!”みたいな感覚も最初からまったくないので。


ロンチ・ジャパン:サポート・キーボーディストとしてではなく、ソロアーティストとしての活動となると、リスナーに伝えたい焦点は大きく変わるんでしょうね。

SUNNY:

はい。まずはルックスですかね。

ロンチ・ジャパン:はぁ。

SUNNY:
あれ、聞いてない!?!?(笑)。ま、冗談はともかく、やっぱり現時点では“Sunnyと言えばキーボーディスト”という認知だと思うんですね。

ロンチ・ジャパン:サポート・キーボーディストとしてステージ上でSunnyを観ている人は何万人もいるでしょうから。

SUNNY:
だから、手紙をくれる人の中にも“CDを買ったら歌が入っててビックリしました”とか、そういう認知をされるんです。

ロンチ・ジャパン:あぁ、この人歌も歌えるんだ!みたいな?(笑)

SUNNY:
そうそう。なので、やっぱり特にキーボードを弾いていなくても、まず僕の歌をみんなに聴いて欲しい。“歌”と“詞”を。そこがまず今の目標ですね。

ロンチ・ジャパン:アマチュアの時代からヴォーカリストでもあったとお聞きしましたが、ボイストレーニングは?

SUNNY:
いや、まったくやってないですね。

ロンチ・ジャパン:楽器は誰しも練習なしでは巧くなりえませんが、歌ってのは、上手い人は最初から上手いですよね、カラオケなんかでも。Sunnyさんも最初から歌えちゃったクチですか?

SUNNY:

いや、僕はアマチュアの頃はもっとモゴモゴしてた…はっきり歌わなかったと思うんです。それもまあ、特徴といえば特徴なんですけど、今やっとみんなに向けて“バーン”と歌えているのは、やっぱり歌う内容とかそのメロディ…作った“メロディ”と“歌”が合致したという結果だと思います。やっとみんなに伝わる歌が歌えてきたかなと思います。そういう状況やそんな気持ちになってきたのも、今までの経験の積み重ねで、現時点での集大成だからですよ。

ロンチ・ジャパン:でも、既に気持ちは次のステップに向かっていたりして。

SUNNY:
ええ。もう次の作品の制作に入っていますよ。友達や知人には“もうやってんの?”ってかなり驚かれるんですけど(笑)、でも常に自分の中を浄化してもう出なくなるまでどんどん出したいなっていうのが今の目標なんで…。今までそういうこともなかなか出来なかったので、もう出来る時に。

ロンチ・ジャパン:アクティヴですね。

SUNNY:

実は今も充分に忙しいんですけど、その合間で“瞬発力”でやってしまわないとどうしようもない状況なので。逆に、それを楽しめてる今は、とてもいい状況だと思いますね。


ロンチ・ジャパン:あとは、やっぱりライブが楽しみですね。

SUNNY:
月1回のMonthly In Store Liveはレコード店でやっているんですけど、8月には渋谷On Air Westで演ります。

ロンチ・ジャパン:ツアーのご予定は?

SUNNY:
そうなんですよ、自分のライヴで日本中を廻るのが目標ですね。でも、まずはいろんな人にアルバムを聴いてみて欲しいです。

ロンチ・ジャパン:ありがとうございました。

※Sunnyの2nd maxi single「正直ジョナサン」のプロモーション・ビデオはこちら
※Sunnyからロンチ・ジャパンのメンバーへメッセージが届きました
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