他に例えようもないからeX-Girlなのだ

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eX-Girlのライブを観ながら、バンドの個性というものについて考えていた。いわゆる「~系バンド」にもいいアーティストはたくさんいる。ただし「~系」といわれるからには似たようなバンドがたくさんいるはずである。唯一無二の個性を誇るアーティストは世界にはたくさんいるけれど、日本には少ない。日本の状況を見ると、自分も含めて唯一無二であることを重んじていない。まだまだそういう文化なのかもしれない。しかし一歩国際的な舞台に上がると、唯一無二であることが、参加するための絶対的な条件となるといっても過言ではないだろう。
なぜそんなことを考えてしまったのかというと、彼女たちeX-Girlの目線を見ていたら、この日ライブハウスに集まったオーディエンスを見る眼が、あまりにも他のアーティストと違っていたからだ。それもそのはずである、彼女たちは数々の海外のフェスティバルや海外のオーディエンスの前で、日本人アーティストとしての自分たちを戦わせつづけているのであった。彼女たちの目指す目線の先にいたのは、この日のオーディエンスの先にあるもの、つまり東京とか日本とかそんな限られたエリアのことではなくて、eX-Girlという価値観を理解する、可能な限り大きなエリアに向けて、その目線が向いているように思えてならなかった。
eX-Girlはいろんなことをする。eX-Girlであることを見せつけるために色々なことをするのである。見たこともない奇抜な衣装で登場するし、ノイジーなアンサンブルのすぐ横に全編アカペラの曲を配置したり、必要な音があれば、フロアに置いたミニシンセをヒールの高い靴でなでつける。また必要がなければドラムからバスドラムをも排除するのである。歌詞はすべて英語であるが、日本の文化が英訳されたものではない。「Revenge of KERO KERO」という具合にeX-Girlなのである。もちろん変わっていればいいというものではないことは、百も承知である。それを誰も見たことがないくらいに貫いている、それも自然にである。そうでなければカッコ悪いだけだ。
もし世界で「個性的なアーティストしか生き残れない」という大恐慌が起こったら、eX-Girlは、日本を代表するいくつかのアーティストのひとつとして生き残ることができるだろう。しかし、この日のeX-Girlは、ライブハウスを酸欠にするほど客を集めていなかった。非常にもったいないことである。「~系バンド」だったら酸欠ライブは可能なことだろう。でも海外の何千人、何万人のフェスティバルで賛辞を受けることはできないだろう。
この日のeX-Girlは、レコーディング中の新曲を交えながらステージは展開された。関係者によれば、比較的リラックスしたステージであったとのこと。私ははじめて観た強烈な個性に少々動揺気味となった。恥ずかしながら、心のどこかでロックバンドの「お約束」を期待していたのかもしれない。それをことごとく裏切られたのでどぎまぎしたのだろうと思う。こんなリスナーが多いから、日本から国際的なアーティストが表舞台に出て来れないんじゃないか?などと悩みながら帰った。
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