独りの旅立ち

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独りの旅立ち

 

VerveのフロントマンだったRichard Ashcroftは、このインタヴューの最初に盛り始めたマリファナに火をつけようとしている。だが、会話に夢中になりすぎて、彼が腕を大きく振る動作がマッチの火を消し続けていることに気付かないらしい。

彼は今でもマリファナを吸っているかもしれない。しかし、このRichard Ashcroftは、Verveの1stアルバム『A Storm In Heaven』でデビューした7年前とはかなり違っている。Ashcroftは今や夫であり、新米パパであり、田舎の家を持っているだけでなく、正真正銘のセレブリティだ。Ashcroftが街の歩道を気取って歩いている姿をフィーチャーしたVerveの'97年の大ヒット“Bitter Sweet Symphony”のビデオのおかげで、最近は通りで人々がすぐにAshcroftに気付く。

たとえ彼らが俺たちの音楽を好きでも嫌いでも、俺がどんな顔かはわかるように作られていた」とAshcroftは説明する。「俺が通りを彼らの方へと歩いていくと、まるでビデオの再現みたいだった……

しかし、そのちょっと前、Verveの2ndアルバム『Northern Soul』が'95年にリリースされたとき、Ashcroftはバックパックに入った衣服以外何も持っていなかった。田舎の貴族という新しい地位も、何ら影響を及ぼしていないと彼は主張する。

どれくらい金を持っているかが根本的な影響を及ぼすとは思わない」と彼は言い切る。確かに、人生において数多くの大きな変化を体験したにもかかわらず、Ashcroftは変わっていない。今もなお、心配しながら、客観的に世界を見つめている。今も人々を気づかう。今でもジャーナリストと話す時間を作る。そして今もなお、謙虚だ。

Ashcroftのソロデビュー作『Alone With Everybody』は、Charles Bukowskiの詩からタイトルを取った傑作で、人が皆持っている人間の感情を取り上げている。『Urban Hymns』(Verve最大の、そして悲しきかな最後のアルバム)のレコーディングに参加したChris Potterと再びチームを組み、Ashcroftはロックスタイルの4分のシンフォニーを作リ上げるというVerveの伝統を継承した。事実、Ashcroftの必然的とも言えるソロキャリアへの基礎が築かれたのは、『Urban Hymns』を作っている時だった。

『Urban Hymns』のレコーディング中に、俺はすでに変わっていて、俺のやりたい方向へ進み始めていた。レコーディングのためにスタジオを押さえた時点でね」と彼はゆっくりと考えながら言う。

俺はレコードを作りたかったのか、あるいは、レコードを作るためには時間を無駄にしなくてはならないと思いながら80%の時間を無駄にしたかったのか? 俺はついに朝の11時に、自分にもできると気が付いたんだ

Ashcroftは明らかに、変化に順応できるタイプだ。事実、彼はそうして成功している。「自分ができることとできないことの意識を捨て去ること。それが究極だといつも思ってきた」と彼は言う。

人はそれを高く評価する。だからビデオ・ディレクターのSpike Jonzeも今は映画を撮っているんだ。俺にとってはそれ自体、小さな革命だ。もっとやれば、もっと良くなる。実験的なダンスミュージックのパイオニアたちや、俺みたいな奴らがもっとメインストリームに近づけば、もっとよくなる。でも……」と言って、彼はいたずらっぽく付け加える。「俺たちにとっては、メインストリームなんてクソくらえ、だけどね

 

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