少ない動員数ながらX-ecutionersが大健闘

ポスト

少ない動員数ながらX-ecutionersが大健闘

 

歌詞と曲の両方で世間をノックアウトした'93年のデビュー作『'Til Infinity』から7年、Souls Of Mischiefは今なおロックし続けている。その事実がはっきりと証明されたのが、先ごろL.A.で行なわれた彼らのショウである。'95年の『No Man's Land』以来となる新作『Trilogy』のプロモーションライヴだが、今回もいつも通り絶好調で、シンプルだが極めて強力なステージを披露してくれた。

L.A.の美しく歴史あるEl Ray Theaterに集まった熱心な観衆の数は、確かにそう多くはないかもしれない。しかし、必ずしもそれがベイエリアを拠点とするこの4人組の人気の衰えを物語っているわけではない。なぜなら、アルバムのリリースもプロモーションもすべて自分たちでやる、というのが彼らの選択だったからだ。前作から最新作を発表するまでの長いインターヴァルの間、彼らは自分たちのレーベルHieroglyphics Imperium(HieroglyphicsのアルバムやDel The Funky Homosapienの新作をはじめとする作品をリリース)を立ち上げることに時間を費やしてきた。実際、この日のショウに出演したBukue One、Pep Love、X-ecutionersは、全員Hieroglyphics Imperiumの所属アーティストである。

Soulsのライヴの観客は200~300人。会場の約半分といったところだが、この日最も苦労したのは、わずか50人ほどの客を盛り上げなければならなかったオープニングアクトたちだろう。Bukue Oneなどは、そのフリースタイルラップの中で「20人だろうと、200人だろうと、2000人だろうと、俺はロックするさ」と観客動員数の低さを歌ったほどである。英語とスペイン語を駆使した彼のパフォーマンスは、確かにその場ではよく健闘したといえる。しかし、グラフィティやスケートボードを題材にした彼のラップに、オーディエンスの反応は冷ややかで、踊りだすどころか、ただ立って首を縦に振るだけだった。

その後、Pep Loveがステージに登場。Bukueのやや単調なリズムから一転して、クラシックなラップスタイルとベーシックで余分なものを削ぎ落としつつも豊かなトーンを強調したビートを打ち出すと、観客の盛り上がりも少しずつ増し始める。彼らのこうしたスタイルは、Wu-TangやRZAを彷彿とさせた。

しかしながら、この日最も独創的なパフォーマンスを披露したのは、何といってもX-ecutionersだろう。なぜステージ上に6つものターンテープルが置いてあるのかは、彼らの姿を見て初めて理解できた。30分の持ち時間の間、この4人のDJチームが人間業とは思えないような見事なターンテーブル芸を見せてくれたからである。個人やペアによるパフォーマンス、そして時には全員が一斉にターンテーブルを回すことによって、彼らは様々なビートを組み合わせ、それを全く新たな作品に作り変えていった。そしてグランドフィナーレでは、2つのターンテーブルを使い、メンバーが1人ずつ順番に、ほんの1小節足らずの短いプレイを次々に繋げていく、というパフォーマンスを見せてくれたのである。これにはオーディエンスもハートをわしづかみにされたようだった。

クラシックなヒップホップ(最近のMTVでは見られないようなもの)を基調とするショウとなると、やはりSouls Of Mischiefのそれは、たとえ集客率は低くても、安心して観に行くことができる――彼ら自身も言っているように、まさしく「本物のショウ」なのである。

 

 

この記事をポスト

この記事の関連情報