演出過剰なステージとは無縁!クオリティ重視のツアー

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演出過剰なステージとは無縁!クオリティ重視のツアー

 

“豪華な演出なんかいらないから、中味のあるものを見せてくれよ”と思っているヒップホップファンは、ここしばらくお寒い状況の中に取り残されていた。その不満を解消してくれたのが、今年夏のthe Spitkicker Tourだ。これを良い見本として、この秋、the Okayplayer Tourがその後に続こうとしている。出演は、The RootsDead Prez、Talib Kweli、BahamadiaJazzyfatnasteesなど。頼りにできるメンバーである。

ニューヨーク、ハマーステイン・ボールルームの満員の客席には、地球上のあらゆる国の人々が詰めかけ、まるでミニ国連だった。そんな多様な観客の熱い歓迎を受けたのがLeonard、Kamal、Scratch、?uestlove、Black Thoughtの5人。伝説のThe Rootsのメンバーが集結したのである。The Rootsがエネルギーを取り戻すのに余計な時間は必要なかった。冒頭、Black Thoughtの“Hard-core”から、すでにリリシズムが火花を散らす。そして“The Next Movement”“Clones”と続くうちに、これから現れるマイクマンたちの疾走に観客が付いていく準備が整った。

続いてDead Prezが登場。彼らのスピリットは前向きで革命的だった。そしてTalib Kweliの知的なステージへ。彼は、まもなくリリースされる待望のアルバム『Reflection Eternal』のトラックを取り上げた。その中の“Too Late”や、アンダーグラウンドのスマッシュヒット“Move Somethin'”に合わせて、会場全体がホップする。続いてthe Jazzyfatnasteesが魂の叫びを上げ、そしてBahamadiaが砂利のようなしわがれた声を披露。その後のDice Rawは、DATやターンテーブルを多用しながら、アカペラでフリースタイルの歌詞を聴かせた-それはまさにハードコアヒップホップの伝統だ。そのステージにBlack Thoughtが登場すると、Dice Rawは“Adrenaline”と彼のニューシングル“Thin Line Between Raw And Jiggy”のヴァースを交換して、この後に続いて実現した共演の口火を切った。初めにこんなものを見せられては、後のアーティストたちは普段以上の力を出すほかなかっただろう。

第2幕には、強力な見どころがいくつかあった。ハイライトの1つは、Bahamadiaがドラムンベース風の“Pep Talk”でアクロバッティックなリリックを見せつけたときだった。さらに予定外のErykah Baduが登場すると、彼女はスマッシュヒット“Bag Lady”で先輩アーティストたちを祝福し、The Rootsとの共作でグラミー賞を受賞した“You Got Me”でスキャットを聞かせた。

また、観客の反応から判断するならば、この夜のステージで最も語るに値するのはthe Jazzyfatnasteesだろう。彼らの熱い“Something In The Way”は心と体を愛すること、魂と自己の大切さを訴えていて、感動した観客の口笛によって何度もかき消されるほどだった。その盛り上がりの後を継いだのはthe Dead Prezの“Mind Sex”で、この曲はSade風のブレークビートと“They Schools”と“Be Healthy”を融合していた。

入場料に値する良いコンサートがたいていそうであるように、この夜も、いちばんの見どころは最後に残っていた。トンネルの向こうに光が見えて来た頃、The Rootsはファンクのレヴェルを一段上げた。生意気なプリンセス、Jaguarにペースを合わせるためである。彼女はもったいぶって舞台を闊歩し、Mystikalの気持ちを観客に味あわせていた。フリンジの付いたパンツは、マイクを手にした彼女がシェイクするといっそうステージ映えする。しかし、彼女の見た目は、その歌声に比べればなんでもない。彼女が自信たっぷりに“It's What You Want”のコーラスを歌い上げ、Millie Jackson風のフリースタイルを聞かせると観客は熱狂した。それは付いていくのが大変なステージだったが、最後はこの夜の出演者全員が登場して、Dead Prezの盛り上がるトラック“Hip Hop(It's Bigger Than)”で締めくくった。

コンサートプロモーターたちは、一方の手で現金を数え、もう一方の手ではいつでもプラグを引き抜く準備をしているが、そうした中で、大人数が出演するラップツアーの魅力と将来性にようやく気付きつつある。しかし、彼らが考えるツアーは、たいてい中味よりもスタイル重視だ。いつも同じようなヒット曲、豪華な電飾や花火、ダンサーが大勢出てくるステージである(言うまでもないが、バカな客を集めるためには、大量のダンサーとミニムーヴィーと舞台上の乗り物が必要だと、ほとんどのプロモーターは考えている)。しかし幸いなことに、the Okayplayer Tourはその例に当てはまらない。だから準備しておいてほしい。彼らはあなたの住んでいる近くの町にも向かうはずだ。

 

 

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