“二世アーチスト”のレッテルを返上する静かな闘争

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“二世アーチスト”のレッテルを返上した静かな闘争

 

 

『Breach』はどのくらい売れるだろう?Wallflowersのフロントマン、Jakob Dylanはバンドの最新作について尋ねた。「おそらく数多くの記録を塗り替えることになるだろう。たぶんオリンピックのテーマにもなるだろうし。『Bringing Down The Horse』の少なくとも2倍は売れなかったら不思議だね。冗談で言ってるんじゃないよ

本当のところは「もちろん冗談だよ」とDylanは笑って言う。そして正直に付け加えた。「前作より今度の作品のほうがずっと気に入っているんだ。『Bringing Down The Horse』を仕上げたときは、各パーツは気に入っていたけど自信はなかった。今度のレコードはずっと時間をかけたから、前のやつよりもうまくいったと思っているんだ

青い目をした上品な皮肉屋として知られるDylanが、Wallflowersをブレイクさせたセカンドアルバム『Horse』について不安を感じていたとは想像しにくいことだ。ルーツ志向でメロディック、思索的な作品だった同アルバムは、最終的には圧倒的な大成功を収め、4枚のシングル(「Sixth Avenue Heartache」「One Headlight」「Three Marlenas」「TheDifference」)を生み出している。『Horse』の爆発的なインパクトは、それまでの経緯を考えればとりわけ印象的なものであった。グループ名を冠したデビュー作は音楽業界であまり注目されずに終わり、Wallflowersにとって惨敗だった。この最初の試みに続いてこのアルバムはリリースされたからである。

だが、Dylanはこのデビュー作を真っ先に擁護した。「本当のことを言うと、このデビュー作は大成功になると予想していたのさ」と彼は指摘する。「ぼくらはみんな21歳で、誰もが初めて取り組むレコードだった。それに全米でもかなりビッグなアーティストと一緒にツアーをして、4万枚のレコードと多少のTシャツも売れていたから、けっこうイケると思っていたんだ。まわりの人たちは失望していたけど、僕としては次はもっと売れるレコードを作ってみせる、なんてつもりは全然なかったよ

伝説的な音楽のパイオニア、Bob Dylanの息子だと誰もが知っているJakobにとって、こうしたクールな正当化は一貫して自身を守るための優雅な鎧であった。したがって、Dylan二世は極度に批判的なあら探しの格好の標的(それが公正であろうとなかろうと)になっていることを自覚して、これに対処するための効果的な戦略を開発する必要に迫られたのである。彼は防御的なスタンスをとるのではなく、七光りの問題には明快かつ直接的に対処しながら、バンドの音楽そのものに語らせるという静かな方法を選択した。それは、これまでのところ成功している。『Horse』の圧倒的なインパクトの後では、Dylan親子を同じ土俵の上で比較することは困難になったのだ。Jakobの音楽的な面でのフォーク・ロック志向と叙情的な歌詞のスタイルを除けば、両者のサウンドの共通点は極めて乏しい。

人間は常に何らかの先入観を持って他の人間に接するものさ」とDylanは肩をすくめた。「我慢してやり過ごすだけだよ。時が経つにつれて別の姿をわかってくれるかもしれないからね。僕はそれでオーケーさ。人間にはイマジネーションを働かせる必要があるんだ

彼が親の七光りであるという大衆の意見について、Dylanは「多くの場合、人間は間違った考えを持っているものだけど、時にはそのほうが真実を知るよりもいいことだってあるのさ」と語っている。「防御的な考えになることはないし、何かを一掃したいとも思わないな

『Horse』のリリースによって父親というテーマとの深い取り組みを終えたDylanには、もっと重要な関心事があるようだ。彼とバンドメイトのMichael Ward、Mario Calire、Greg Richling、Rami Jaffeeは『Breach』という謎めいたタイトルが付けられたWallflowersのサードアルバムに関心を向けようとしている。

この単語には現時点で数えきれないくらいの意味があるんだ」とDylanはアルバムのタイトルについて語っている。「最初この単語が目にとまったとき、本当に際だった言葉だと思ったよ。つまり、ブレイクスルーや約束を破るという意味もある。eを2つ使う別の綴り方もあるし、かなりのアピールがあると考えたんだ

アルバムの構成についてDylanは多くを語ろうとしない。「最初のアルバムと今回の一番大きな違いは、8年の歳月ということだろう」と彼は真顔で言ってのけた。「だから、多くの点で違っていると思うよ。メンバーがかなりの演奏経験を積んできたのは確かだし、僕も曲作りの経験を重ねてきている。時が経つに連れて、ものごとを見通せるようになるものさ

制作時間の問題も『Breach』が以前の作品とは違っている要因である。Dylanはレコード会社からのプレッシャーの類についてほのめかすことは避けつつも、次のように賢明な言い方で指摘してみせた。「最初のレコードの曲は2年から10年かけて作ってきたものだが、そこから先は1枚の作品に収める曲を数カ月で書かなくちゃいけないのさ

Dylanの内省的で感動的な歌詞(父親ほどのインパクトはないにせよ、より繊細である)を書く才能は、これまで以上に『Breach』の各所で顕著だ。しかし、この点に関してもDylanはコメントを控えており、「本当のところは他の作品と比べて特にパーソナルだとは思わないな。そんなふうに思えるのは曲の歌詞がちょっとシンプルに、そしてダイレクトになったからだよ」とだけ述べる。

それでも彼は、自分の作品が他のアーティストよりもこと細かに分析されているという事実は認めている。「自分では1インチといったつもりのことが、1マイルだと思われてしまう傾向はあるね。誰か別の人の作品だったら、極めてパーソナルなレコードなんて言われることはないと思うよ

リスナーはこの作品は本当はこうだろうと想像してしまうんだろうね。だけど僕としては、そうだともそうじゃないとも言ってないんだけどな」とDylan。だが彼はここでもすべての判断を保留にして、オーディエンスの手に委ねているのだ。

これを防御と言うこともできるだろうが、それ自体おだやかな防御策である。だが、充分に効を奏しているようだ。明らかにこれは、自立したアーティストとしての地位を確立するベストな方法が、着実な生産性を貫くことにあると学んだ、名門の子弟がとった戦略である。その人の作品が本当に優れているのであれば、余計な説明はまったく必要ないのだ。

しかし、一方でDylanが準備を整えていることも存在する。ミュージシャンの子供であり自身も父親である彼は、音楽が小さな子供たちに与える影響を確信しているのだ。
小さな子供はみんな、本当に音楽を好む傾向があるよ」と彼は主張する。「だから彼らを教育するんだ。家中で音楽をプレイするのさ。それも思索に富んでいると思える音楽をね。子供たちが成長するに連れて、その影響が現われるはずさ。いろんなアーティストが親にParliamentを聞かされて育ったとか、家ではBeatlesが鳴っていたとかしょっちゅう話しているだろう。実際に子供たちがそれを意識してようとしてなかろうと、結局は影響を与えることになるんだよ

青い瞳のネオ・ルーツロッカーも、この件に関してはついに最新作を擁護するのにためらいを見せなかった。「親たちには僕らのレコードを家でプレイするように薦めている」と彼は誇らしげに言う。「幼い子供たちにとっては、本当に勇気を与えてくれるレコードなんだ

 

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