喜びと苦しみと……

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喜びと苦しみを経て……

 

 

Dave Hollisterの時代、ついに到来か? 前作『Ghetto Hymns』がゴールドセールスを達成し、「Baby Mama Drama」「Can't Stay」「My Favorite Girl」などのヒットを放ったHollisterは、ニューアルバム『Chicago '85...The Movie』でマルチプラチナムへの突破口を狙っている。「俺自身は何も期待しないようにしてる。とにかくベストを尽くしたんだから、あとはなりゆきを見守ろうってね」と元Blackstreetのメンバーだった彼は、ためらいがちに、しかし楽天的に語る。

『Chicago '85』でHollister は、自分の心の内をありのままにさらけ出している。アルバムタイトルは、彼の人生の中で最もつらく苦しかった年を表したものだ。「'85年という年は、俺が今まで経験してきた中でもおそらく一番へヴィな時期だったんじゃないかな」。シカゴのウエストサイドで牧師夫妻のもとに生まれ、治安の悪いサウスサイドの中でも悪名高いRockwell Gardens Projects地区で(他の10人の子供たちと一緒に)少年時代を過ごしたHollisterはこう回想する。「あの時代は最悪だったね。実家を飛び出して、危ないことばかりやってたよ。自分自身がこんなふうに変わり始めたのなんて、何年か後のことさ。けど、何とかここまでやってこれた。人間なんとか生きていけるもんだってことを、他の人にもわかってもらえたらと思うよ」。こうした人生における嵐のような日々から得たエモーションを彼は、心臓をつかまれるように内省的な「Doin' Wrong」や、深い後悔の念を吐露した「I Don't Want To Be A Hustler」など、ニューアルバムの収録曲の中で蘇らせている。

といっても、『Chicago '85』に収められているのはこういった刺々しい曲だけではない。Hollisterの妻に捧げたラヴソングもあるのだ。第1弾シングル「One Woman Man」などは、『Ghetto Hymns』収録の「Baby Mama Drama」と比べて明らかに甘く優しい。「結婚してることをまわりに話すなって言われてた時期があったんだ。俺のキャリアに傷がつくからってね。で、俺もそいつらのもくろみにまんまとハマってたってわけさ」とHollister。「けど、あれから俺たち夫婦の愛は再燃した。前よりも深く愛し合うようになったんだ。俺はカミさんにまた惚れ直しちまったし、今はもう結婚のことが誰かに知られたって、何とも思わないね

Hollisterは新作で描いた「愛に対する思い」が、彼と同じ男たちの心を捉えてくれればと願っている。「俺はブラザーたちに、もし誰かと一緒に暮らしてるなら、その人を大切にしろよって言いたいんだ。凶悪犯だって恋に落ちるんだから」。彼はまた、子供を大切にしろというメッセージを男たちに送っている。「Baby Mama Drama」では無責任な母親たちを批判した彼だが、今回は「Yo Baby's Daddy」を通じて、だらしのない父親たちに語りかけているのである。

だが、最近のHollisterが変わったと言われるのは、なにも歌詞の内容だけではない。その声には以前にはなかった意志の強さがはっきり現れるようになり、彼自身もまたそれを認めている。彼が断固とした決意を持って臨んだ『Chicago '85』のレコーディングは、わずか28日という短い期間で完成した。「スタジオでタバコ吸って、酒飲んで、プレステばかりやっていて、それで高いスタジオ代を払ってる奴らもいるけど、俺はそんな仕事のやり方はしない。前はやってたけどね。今はスタジオの中では仕事に集中している」と彼は断言する。「俺にとって、スタジオに入るってことは、自分のやるべきことをやる準備ができてなきゃいけないってことだ。だって仕事だろ?

確かに仕事かもしれない。しかし、それはまた同時に家族の行事でもあった。Hollisterは彼の心の奥にある感情を表現しただけでなく、その表現を形にするために、いとこのK-Ci(もちろんK-Ci & Jojoのである)や他の親戚たちにヘルプを求めたのである。彼らは快くレコーディングに手を貸し、「Keep On Lovin'」にゲストとして参加した。

Hollisterにとって歌のない人生は今も昔もありえない。幼少の頃から父親の教会で歌っていた彼は、わずか2歳にして自分の声の魅力に気付き、ヤングアダルトと呼ばれる年令に達すると、当時まだ発展途上であったTeddy RileyのBlackstreetに加入。彼の在籍中、Blackstreetは「Joy」や「Booti Call」「Baby Be Mine」「Before I Let You Go」(この曲はHollisterのペンとプロデュースによるもの)などのいくつかのヒットを放った。しかし、間もなくして彼は、Rileyとの衝突が原因でBlackstreetを脱退することになる。それについてHollisterはあまり多くを語らないが、「Blackstreet時代の経験から、俺は自分がすぐに人を信用しすぎる人間だってことが分かったよ

幸いにも、その後Hollisterを待ち受けていたのはソロとしてのキャリアだった。それが現実化するきっかけとなったのが、EPMDのErick Sermonとの出会いである。SermonはHollisterを、創設したばかりのDef Squad Recordsというレーベル(後にDreamWorksに併合)に迎え入れる。だが、ソロデビュー作のレコーディング中も、Hollisterはさらに厳しい人生勉強と直面することになった。

前のアルバムはものすごく良かったのに、奴らがメチャメチャにしちまった。今さら文句をいう気はないけどね」と彼は肩をすくめる。「それほど熱心にものを作った経験がない連中と仕事するってのは、フラストレーションがたまるものさ。奴らは汗水流したわけじゃないし、俺みたいに責任を負うわけでもない。自分の情熱を他人と分かち合うのは難しいよ

しかし、『Chicago '85...The Movie』に対するこれまでの世間のリアクションから判断するに、Hollisterの情熱は大勢の人々に浸透しつつあるようだ。それは、この「映画」が入場料を払う価値のある作品だという何よりの証拠である。

 

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