新境地を開拓し続ける人気ラッパー・デュオ

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新境地を開拓し続ける人気ラッパー・デュオ

 

 

Outkastは近頃のヒップホップの成功の公式が誤っているということを、一貫して証明し続けている。平均的なラッパーが不滅のトレンドに乗じることが多いのに対して、そこから距離を保って何か新しいことにトライするアーティストはごくわずかであった。'94年に瞬く間に傑作となった『Southernplayalisticadillacmuzik』でOutkastがデビューしたとき、1stシングルの「Player's Ball」はグループの本拠地、アトランタに注目すべき場所というブランドを与えた。それ以降の6年間でAndreBig Boiのデュオは、'96年の『ATLiens』や雑誌「The Source」で満点の評価を得た'98年の『Aquemini』など、よりいっそう魅力的な一連のアルバムを出し続け、失望させることは決してなかった。最新アルバムの『Stankonia』で2人はタイトルを現実のものとし、Parliament~Funkadelicのフロントマン、George Clintonとさえ肩を並べるほどの、ファンクにインスパイアされたヒップホップという折衷ブレンドを先取りした。

彼らの子供の母親のそのまた母親に捧げたファンキーな賛歌「Mr. Jackson」のビデオ撮影用のセットで、AndreとBig Boiの2人は母と子のドラマ、ファンクミュージック、Macy Grayが彼らの曲「Git Up Git It」を使用したこと、そして完璧なアルバムを作ることのプレッシャーについて語ってくれた。



――Andre、あなたとErykah Baduの間に子供が生まれて以来、リスナーは「Mr.Jackson」を聞くとあなたとErykahのことだと思うでしょう。あの曲はあなた達が通り過ぎたいくつかの経験に基づいたものですか?

ANDRE:そうだね、あれはパーソナルな曲に思えるかもしれないけど、同時にああした現実生活のストーリーを描いたものではないんだ。もちろん俺の気持ちからできた作品で、彼女との関係がうまくいかなくなったというつらい経験の後で、子供のママはどんなふうに感じているんだろうと思いを巡らせたのさ。家族はどう思っているんだろうってね。もちろん彼らは地上で最高の存在として愛してくれているだろう。だがあんなことが起きれば、何だか少し気まずい気分になってしまうんだ。そんな思いが曲のインスピレーションになったのさ。

――“すまなかった”と言えるのは人間の大きさだと思います。人間関係に問題が生じ始めたとき、たいていの場合は戻ってきて謝るのは難しいことですよね。

BIG BOI:そのとおりだね。誰だって赤ん坊の母親やおばあさんに憎しみを感じることはないさ。それだけだ。だけど、ほとんど休戦状態みたいなものなんだ。つまり、俺も君も精一杯の努力をして友好に別れることができた、あるいは君がもし俺に怒りを感じたとしても、俺が君に対して怒ることはないよって感じさ。それが現実ってものだろう。


――タイトルの『Stankonia』はどのようにして考えたのですか?

BIG BOI:Stankoniaっていうのはね、すべてのファンクネスがやってくる場所なんだ。たまたま思い付いた、そんな感じの言葉さ。俺たちはスラング辞典を作らなくちゃいけないだろうな。スラングをいっぱい使っているから。リスナーが理解できるようにね。それに聞いたこともない言葉なら、頭にダイレクトに入っていくだろう? 本当にメロディックで、まるで楽器のような響きに満ちているんだ。Stankoniaとは地球上で最もファンキーな場所、いや地上ではなく宇宙でも一番さ。行ってみたい場所だが、地球の真ん中にある。でもファンクを引き出すためには行かなくてはならないんだよ。それが俺たちの考えた意味なのさ。

ANDRE:これは間違いなく2000年最初のオフィシャルなファンクのアルバムのひとつだね。Stankoniaはファンキーな場所で、あらゆるファンキーなものがそこから現われる。俺たちはリスナーをStankoniaに連れていこうとしているんだけど、そこは表面にあるものよりもずっとずっと深いところにある場所なんだ。つまり、今ラジオから聞こえてくるヒップホップの大半は表面的なヒップホップなのさ。今はやりの心地良いタイプのヒップっていうことだよ。俺たちはこの状況を違う方向に持っていきたいから、リスナーをStankoniaへと連れていこうとしている。そこは自由な場所だけど、“ついに解放された、全能の神よ、ついに自由になった”みたいな自由じゃなくて、精神の自由というか音楽的な自由なんだ。


――曲を作るとき、どの経験から引き出していくのか、どうやって決めていますか?

ANDRE:いつもパーソナルな部分からスタートする。そして時には別の誰かをその状況に置いてみて、そこの視点から曲作りに入るんだ。まるでニュースリポーターのように客観的に報道しながら、別の誰かの感情を理解しようと務めるのさ。最近では次のようなことを試している。自分が出会ったり親しくなったすべての人に対して自分を投影して、彼らの問題が自分の身に起きたように受けとめて彼らのことを理解しようとすれば、より多くの曲を書くためのインスピレーションが得られると思うんだ。道路のわきでバスに乗ろうとしている誰かを見て、彼らの生活全体をほぼ想像できるというのはとっても助けになることだよ。

多くのヒップホップ・アーティストにとって1stアルバムが最高傑作になるのは、彼らがそんなふうに曲を書けるからだ。最高とはいえないまでも、最も力強い作品になるのは彼ら自身が要素として含まれているからさ。俺は自分が今もストリートに、そしてゲットーにずっといるようには振る舞えない。もう25歳で子供もいるし、状況はまったく違っている。だからどこか別のところからインスピレーションを得なくてはいけないし、何よりも創造力そのものからインスピレーションを得るように努力しているんだ。



――今回のアルバムでそうした視点から書いた曲はありますか?

ANDRE:「Speed Ballin'」のような曲がそうだね。母親から聞いた話では、一緒に育った仲間のひとりの弟が射殺されたそうだ。麻薬かなんかの類をそのへんで密売していて撃たれたんだ。たぶんまだ14、5歳くらいだったんじゃないかな。そんな年頃の若者たちがストリートへ出て、何でそんなことをするのか考えてみたのさ。いたるところで“ヤクは売るな。分別があるならヤクを売れば殺されることがわかるだろう”みたいなキャンペーンをやっているっていうのにね。それは若者たちが人が持っているものを見て欲しくなるからだ。そしてフードの陰でつぶやくのさ。“大騒ぎ(ballin')したいんだ。大物たちと一緒に盛大なパーティを”。だから本当にお祭り騒ぎをしようとするなら、そしてスピードボールのように転がっていくなら、それはまるでコントロールを失って転がってるとか、すべてのパワーを使ってそのレベルに達するまで何でもやるっていう意味なんだ。本当にスピードが出ているっていうのはそういうことさ。この曲の最初のラインは“神のご慈悲によって生き/悪魔のペースで暮らす/人生はハードだ/俺達はスピードボールのように転がるのさ”という感じで始まる。それはつまり今の若者が経験している状況を歌っているんだ。

BIG BOI:俺たちのアルバムはいつも日常生活について語っているだけさ。そして自分たちの人生の歩みや普段の生活ぶりについての視点を取り入れている。「GasolineDreams」のような曲では若者たちと、彼らにとってのアメリカンドリームがどんなものかについて歌った。誰もがおかしくなりそうだと思っているけど、本当は自分の話を聞いてほしいだけなのさ。歌全体としてはすべての夢は炎となって燃え上がるみたいなことを歌っている。「So Fresh, So Clean」はレイドバックした、ノリの良いポン引きの溜まり場の歌だ。アルバムの「Red Velvet」みたいな曲はお金に関する歌だけど、その曲自体はヒップホップの現実を歌ったものだ。“ケーキはみんな俺のもの、チーズもみんな俺のもの”ってね。パウンドケーキを赤いヴェルヴェットへと変えてしまう若者たちもいるだろうが、俺たちの見方からすればすべてのケーキを独占してしまうことは、まっすぐに自分へと跳ね返ってくるだろうし、そうしたらいったい何が残るというんだろう? このアルバムの内容は深いのさ。


――アルバムカヴァーにある白黒のアメリカ国旗には何か意味があるのですか?

ANDRE:俺の考えるところでは、今の若者は死んでいるようなもんだ。白と黒はアメリカが死んでいることの象徴さ。だから俺たちは元気づけようとしているんだ。


――それがあなた達流の選挙に対する政治的な宣言というわけですか?

ANDRE:たとえば、俺たちが“OK、ゴアにいれようぜ”って言えば多少は違ってくるだろう。それが世界一のチョイスとは思えないけど、何らかの選択はしなくちゃいけないのさ。


――Macy Grayが『Southernplayalisticadillacmuzik』に収められたあなた達の曲「Git Up, Git Out」を自分の「Do Something」で使用したことについてどう思いましたか?

BIG BOI:そうだな、最初リリース前に聴かせてもらったときは、“クールだね”って感じだった。ただ俺たちが言いたいのは、グラミー賞であれMTVであれ、インタヴューで彼女がオリジナル曲の存在についてまったく言及しなかったということさ。俺たちの曲を知っている人なら世界中の誰にでもわかるけど、彼女のファンには俺たちの曲を使ったということはわからないんだ。たくさんの人が聞いてきたよ、“君たちが先にやったの? それとも彼女のほうが先だったの?”ってね。『Southernplayalistic』は'94年に出ているんだよ。だから俺たちはあのメス豚とはツアーに出ないことに決めてるのさ(笑)。だけど、まったく分け前がないとかそういう不満では全然ないんだ。必要な場面ではクレジットを明確にしてほしいということなんだよ。


――『Aquemini』はThe Source誌でマイク印5つの満点を取りました。そのことは『Stankonia』を制作するにあたってプレッシャーになりましたか?

ANDRE:頭の中に別の自分が現われて囁くんだ。「リスナーは次に何を期待しているんだろう」ってね。だけど、それと同時に俺たちはいつもと同じやり方で制作した。つまりまっさらの状態でスタジオに入って、小さな赤ん坊と同じように初めて取り組むような姿勢でアプローチするのさ。そうやって新鮮な角度からものごとを捉えて新曲を作り、それをリリースしてリスナーが関心を持ってくれるように祈るんだ。それがすべてだよ。世界中で最高にいかしたMCやいかしたプロデューサー、あるいはいかしたミュージシャンになれたとしても、リスナーが共感してくれなければ、自分だけの世界で最高だと思っていても意味がないのさ。

BIG BOI:このアルバムは俺にとって、内心では誇るに値する内容だと思う。いろんなところで評価を見ているけど、もう少し点を上げるべきだね。マイク7つ、あるいは6つは付けてほしいところさ。今まで見たところではみんな4つとか4つ半といったところだけど、少なくとも5つ半くらいには点を上げるべきだよ。これじゃ何年も前からずっと同じことを繰り返しているようなものさ。連中には新しいひらめきみたいなものがまったく感じられないよ。

 

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