シーンのトップ・クリエイターから飛び出したドラムンベース離脱宣言

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シーンのトップ・クリエイターから飛び出したドラムンベース離脱宣言

 

 

'90年代半ばのロンドンでは、芽生えつつあったドラムンベースのサウンドに合わせて熱狂的な騒ぎが起きていた。そしてPhotekことRupert Parkesは最も崇拝される人物だった。その後、Parkesは20代前半にして、そのジャンルにおける謎めいた異端児となったのである。Goldieが高解像度の夢のようなサウンドスケープを創造し、LTJ Bukemがニューエイジのソウルジャングルを考案したのに対して、Parkesは一部の知られざる地下世界で密かにでっちあげられた企ての中で、Miles DavisやElvin Jonesをサンプリングしていたのだった。Photekのアルバム『The Hidden Camera』('96)と『Modus Operandi』('97)はドラムンベースの古典的名作である。

だが、ニューアルバムの『Solaris』においてParkesは、自分が隆盛に手を貸したジャンルをほとんど捨て去り、より大衆向けのハウスミュージック的なダンスビートに取り組んでいる。

現在の状況では、僕とドラムンベースには共通する部分は何もないよ」。ロンドンの自宅からインタヴューに答えたParkesは宣言した。「ドラムンベースは情熱のすべてを失って、攻撃性だけが残った男性ホルモン的な怒れる音楽になってしまったんだ

『Solaris』にはドラムンベースのトラックもいくつか収録されており、Parkesはドラムンベース用の別名、Special Forcesでシングルリリースを続けているにもかかわらず、そのスタイルは多くの人にとって親しみ難く、歓迎されないものであるというのが彼の見解だ。「女の子はみんな離れてしまって、スピードガラージュのクラブに流れていったよ。そこなら顔に肘鉄をくらったり、ビールをかけられたりせずに、セクシーで可愛いダンスを踊ることができるからね。ドラムンベースはそんなふうになってしまった。音楽的な面では誰が何を言っているかではなく、誰がいちばんでかい声で叫べるかを競うような状況なんだ

ドラムンベースが変貌を遂げたように、Photekも変化している。現在28歳でインディペンデント系映画の監督と結婚したParkesは、若いころよりもリラックスした様子で、しかも音楽的な探求をさらに進めていく気構えだ。『Solaris』でのParkesはシカゴスタイルのハウス、テクノ、ガラージュに加えて、さらに実験的なサウンドを取り入れている。「ハウスっぽいものは僕にとっては、よりノスタルジックなものなんだ」とParkesは説明する。「もっと冒険に乗り出して、Photek流にやりたいのさ。何か問題があるかい? このアルバムの準備には6カ月を費やして、何を作ったら許されるのかずっと迷っていたよ。それで“ちくしょう、作りたいものを作ればいいんだ”ということになったのさ。リスナーが自分の音楽を気に入ってくれることを保証する最善の方法は、自分自身が気に入るっていうことなんだ

一部のリスナーにとって『Solaris』のハイライトは、PhotekとFinger Inc.のRobert Owensによるコラボレーションということになるだろう。ディープなハウスのクルーナー歌手であるOwensは、催眠的なトラック「Can't Come Down」と「Mine To Give」にヴォーカルとヴァイブで貢献している。Owensのソウルが注入されたおかげで、ParkesはリミックスDJのDave Moralesによる協力もあって、初めてリミックスシングルでの成功を経験している。

本当に舞い上がっちゃったよ」とParkesは笑って言う。「“Mine To Give”はバズチャート、クールカッツ(英国のアンダグラウンドDJのチャート)、それにPete TongのEssential Selection(BBC Radio Oneの番組)でNo.1になったんだ。ありそうもない話に聞こえるだろ? この曲のビデオまで作る予定なのさ。今のところはまるっきり違った世界、リフレッシュされる変化といったところかな

現在進めているサウンドトラックの仕事(本人いわく「Paramount映画の大作、それ以上は言えないよ」)、リミックス作業、さらに自らのPhotek Productionsレーベルから出る彼自身と英国のドラムンベーズ仲間であるPeshayのシングルなどを抱えているParkesだが、彼は形式が機能を追随するのに任せる方針という。だが、これからも彼は実験を続けるのだろうか?

“勘違い”とマークされたセクションで終わってしまわないように注意したいだけなんだ」と彼は答えた。「“実験的”という言葉で表されるスタイルの音楽には、僕がその一部にはなりたくないようなものもあるのさ。トラックを作るときには実験をしたいけど、実験的なアーティストとは見なされたくはないね。評論家がエッセイを書いてくれるような音楽じゃなくて、リスナーを本当に感動させる音楽を作りたいんだ

 

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