新たな“フィーリング”を獲得したハウスミュージックの次世代クリエイター

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新たな“フィーリング”を獲得したハウスミュージックの次世代クリエイター

 

 

ハウスミュージックの生徒たちは早くから“フィーリング”が重要だということを学ぶ。どこの国の誰であっても、そのフィーリングをダンスフロアに溢れさせるノウハウをつかんだ者が、シーンを活性化させているDJやプロデューサーが作る大きなコミュニティへのコネクションを手にすることができるのだ。

ドイツのIan Pooleyもまた10代の頃から、そうしたフィーリングをつかもうと努力してきた。'90年代の初めには当時のパートナーだったDJ Tonkaとチームを組んで、ハウスの伝統のルーツを熱心に学び、それから次へと進んだのである。

Tonkaは音楽の教育を受けた人で、一般的なクラシックの素養はあった。けど、それ以外はまったくの試行錯誤だったよ」とPooleyは振り返る。「僕たちは尊敬するデトロイト系の人たち、Derrick MayとかKevin Saundersonなんかがどんな種類のマシンを使っているかをすぐに発見した。昔のローランドやヤマハなどのそうしたマシンは簡単に見つかったよ。当時は誰も興味を持っていなかったからね。機材が揃ったところで活動を開始したけど、最初は自分たちが楽しむためにやっていた。2年ほどかかってリリースに適したトラックをいくつか完成させることができたのさ

『The Celtic Cross』などの初期のEPの成功によって、ついにPooleyはVirgin Recordsとの契約にこぎつけ、彼自身がアーティストとしてのファーストアルバムと考える『Meridian』を'98年にリリースした(厳密にはForce Inc.が'96年に出したコンピレーション『The Times』が彼のソロデビューとなるが、アルバムとしてのコンセプトによる彼の最初の作品集は『Meridian』だ)。さらにPooleyは、その時点ですでに自分が作ってきたハウスミュージックと南米のポップミュージックとのリンクを模索し始めていた。

自分にとって目新しい音楽を発見したときには、いつでも歴史全体を含めてすべてを取り入れてみたくなるんだ。だから『Meridian』の前からブラジル音楽には取り組んでいて、ボサノヴァ界の最重要アーティストのコレクションを進めていたのさ

そうすることでPooleyは、最新アルバムの『Since Then』で展開された甘く華麗なトラックへと作品をつなげることができた。DJ的な反復要素を静かにかわしながら、ジャズ(「Bay Of Plenty」)、バラード(「Menino Brincandeira」)、ブレイクビート(「Since Then」)といった領域に踏み込むことで、ハウスミュージックのボキャブラリーを拡げたのだ。それはドイツで猛威を振るうコマーシャルなトランスとは対極にあるものだが、これこそPooleyのやりたいことなのである。

'91、92年頃にドイツでシーンが盛り上がり始めたころ、急激に有名になって大規模なレイヴで回し始めたDJたちが、ひどい音楽をリスナーに押しつけて、世界で最高のものだと欺いたんだ。リスナーは世界には他にもクールなスタッフがあることを知らずに、良くないテクノだけを聴かされるはめになったのさ。今のトレンドはこんなふうに確立されて、それ以来ずっと続いている。だけどドイツでも多くの人々がハウスミュージックが何であるかを学び、テイストを磨いてきている。だから、変化の兆しは見られるよ。トランスミュージックでさえ、本当はクールな種類の音楽ということとは無縁なんだ。実際には単なるポップミュージックだということがわかってしまった。だから僕にとってはもうどうでもいいことなのさ

 

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