音楽業界からかけ離れた異端児

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LAUNCH JAPAN: ホフディラン取材記事
~

今の音楽業界からかけ離れてるね

2ndアルバム『ミーのカー』の衝撃から、早1年8ヶ月。

未だにこのアルバムは新鮮であり、でもロックの普遍性のツボをついたものでもあり。そして、いかにもヤバい様相を醸し出しながらも、メロディはキャッチーだったり…。

そんな思いを燻らしているうちに、遂に3rdアルバム『ゆらゆら帝国III』が2/21に出る。
これを機に、一気に幅広く聴かれるんじゃないか!と狙いを定め、ロンチ・ジャパンはゆらゆら帝国ヴォーカル兼ギターの坂本慎太郎氏にインタヴューをお願いした。

そして、初対面となる筆者の勝手な"坂本さんはヤバい人に違いない(だってライヴはMCなし、もとより歌詞が独創的すぎだから)"、という思い込みに反し、実際お会いしてみると、彼は非常に穏やかな人。ゆっくり独自のペースを保ちながらも、しっかりと人の目を見て話す人物だった。

そんな彼に楽曲作りの発想、そして『ゆらゆら帝国III』について話を訊いた。

『ゆらゆら帝国III』
ミディ 2001年2月21日発売
MDCL-1405 ¥3,150(tax in)


1. でっかいクエスチョンマーク
2. ラメのパンタロン
3. 幽霊の結婚式
4. 待ち人
5. ゆらゆら帝国で考え中(ALBUM VERSION)
6. 男は不安定
7. 砂のお城
8. 頭異常なし
9. 頭炭酸
10. 少年は夢の中


――アルバム『ゆらゆら帝国III』が出るわけですが、今作を含め、坂本さんが書く歌詞はとにかく独創的ですよね。すごく頭の奥深いところで巡っているような映像を表現しているようで。詞は、日常の生活からよりも、好みの作家、映画、漫画などから触発されるのですか?

坂本:
基本は曲から作るから、その音的な響きから作ることが多いんだけど…。そうだな、いろいろ影響受けてるんだろうけど、分かんないですね…。自分で後でから詞を読んでみるんだけど、「どうしてこういう言葉が出たんだろうなぁ」って思いますし。それに、そういうほうが僕はおもしろいって思うしね。好きな映画…、いっぱいありますよ。昔から好きなのはスタンリー・キューブリック。"時計仕掛けのオレンジ"とか"シャイニング"とか。芸術っぽいのはあまり好きじゃなくて、やっぱり娯楽が好きですね。娯楽になってるんだけど、ちょっと気が利いてるっていうか、しゃれっ気があるっていうか。だるいのは観ない。

――そうなんですね、だるそうな映画も観そうだと思いましたが。タイトルで「頭炭酸」という曲がありますが、"頭"と"炭酸"って言葉を思いついても、それがくっつきはしないですよね。

坂本:
ですね。でも、そういう思いつきを大切にしたいなってのはありますね。そういう組み合わせで、また新たに感じたことを書いてみたりしてね。詞を書くきっかけは、そういうひらめきって多いかもしれない。

――作曲のクレジットはゆらゆら帝国ですが、元となる部分は坂本さんが作るのですか?

坂本:

そうです、だいたい。半出来の状態でスタジオに持っていって、みんなでジャムセッションみたいに演奏しながら合わせていって。それで感じがよくなっていったら歌ってみたりかな。今回は2曲目(「ラメのパンタロン」)は亀川くんが持ってきたギターのリフを元に作っていきました。


――曲と詞では、曲が先にできるんですか?

坂本:

そうですね、わりとそうです。でも、何個かのコード進行やフレーズが決まってきたら、そこに鼻歌みたいに歌詞を乗せていくパターン。で、ハマったときに、イメージしたものが固まっていっていくから、曲を作りつつ、歌詞考えつつ。両方からちょっとずつ作っていく。そうやってちょこちょこ変えては膨らませていくから、すごい時間かかるんですよ。1曲作るのに。


――では、このアルバムも曲作りには時間がかかっているんですね。

坂本:

そうですね。結局レコーディング中も作ってましたからね。だから余分に作った曲ってないですね。今回のアルバムが10曲入りですけど、この10曲しか作ってない。ボコボコできるタイプではないな。


――ゆらゆら帝国は激しい曲と逆にスローな曲と両極な2タイプの曲の印象があって、そこのユニークな歌詞が乗るせいか、すごくドラッギーな感じがしますよね。

坂本:

そうですか…。ん~、そういうこと、言われたり言われなかったりするけど…、そこらへんどういうのを指しているのか…分からなかったりするんで……ね(笑)。


――この『ゆらゆら帝国III』の収録曲のなかで、思い入れのある曲、大変だった曲はありますか?

坂本:

1曲目の「でっかいクエスチョンマーク」って曲。これが一番最初にできたんですけど、今までにない感じだったんですよ。弾けた感じというか、…なんか単調なんだけど。なんとなくこんな感じで次のアルバム行きたいなって見えてきたのがこの曲だった。実際録音すると思ってた感じになるには時間がかかって、苦労しましたけれど。


――サウンドが形になるのが?

坂本:

うん。頭のなかではもっと派手な曲だったんだけど、録ると結構、地味な曲になっちゃって。だから、全部録り直したり、録り方変えたり。ミックスでもいろんなこと試行錯誤しましたね。


――前アルバム『ミーのカー』はスローナンバーで始まり、20数分の大曲で終わってますよね。それに対して、今回は全体的にスタンダードで分かりやすいんだけど、個性が出てますよね。

坂本:
「でっかいクエスチョンマーク」を元にアルバム作ってきたわけだけど、結果的にこの曲をやりつつ、結構バラバラになりつつ…。だけど全体的には今までよりか、明るい印象になったかな。感触が。

――このアルバムで、初めてゆらゆら帝国を聴くという人が増えると思いますが、そういうの想像して、どう思いますか?

坂本:
うん。今回、深く考えなくても聴ける曲がいっぱい入ってるんで、なんも考えないで……軽く聴いてくれていいんですけど。でも、僕らの自由な環境…、いわゆる身内で遊びながら作ったんですけど、こういった、今の日本の音楽業界で出回ってるCDとはかけ離れた環境で作ったものが全国で聴かれると思うと、うれしいですね。

――昨年出た先行シングル「ゆらゆら帝国で考え中」は坂本さんがデザインを担当していますね。

坂本:

今までのCDのジャケットも僕が作ってるんです、チラシとかも全部。もともと美術の学校行ってたんで。


――なるほど。シングルは、曲が攻撃的でハードなものだったのに対して、ジャケットは小学生の遠足の集合写真ですよね。曲の真意はこういうイメージだったんですか?

坂本:

ん~。ああいった曲に、こういうジャケットのイメージをぶつけるとおもしろいかなと。反対のものをぶつけたほうが、イメージが広がるしね。


――ワザとハズす感じですか?

坂本:

いや、僕のなかではジャケットと音の関連性はあるんです。どのCDでも。でも、それを説明しちゃうとイメージが限定されちゃうんで…ね。


――では、アルバムのほうはどんな?

坂本:
アルバムは…爆発したようなものです。

――なるほど。それだけ聞いて、あとはジャケット見て、音を聴いた人のイメージに委ねましょう。ゆらゆら帝国は活動して12年、メジャー流通をして3年、アルバムは1年8ヶ月ぶりってことですが、坂本さんが感じるバンドの変化ってありますか?

坂本:
どんどんアンサンブルが混ざってきたというか、3人の演奏の絡み方が複雑になってきたっての、ありますね。あと、全員メロディ楽器であり、全員リズム楽器であり、そこにアンサンブルがまず頭にあって…。それが昔からの理想なんで、それに近づいてやってる気がしますね。

取材・文●星野まり子

●2001年ゆらゆら帝国のライヴスケジュール

【LIVE2001】

2月21日(水)東京LIQUID ROOM  〔問〕hot stuff 03-5720-9999
3月16日(金)福岡DRUM LOGOS   (問)kyodo nishi nippon 092-714-0159
3月18日(日)神戸CHICKEN GEORGE  (問)greens 06-6882-1224
3月20日(火)名古屋DIAMOND HALL (問)diamond hall 052-265-2665
4月13日(金)札幌PENNY LANE 24  (問)wess 011-614-9999
4月15日(日)仙台JUNK BOX (問)kyodo tohoku 022-296-8888

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