エミネムのグラミー賞獲得に対するゲイ権利運動団体の反応

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グラミー賞授賞式当日の大きな話題は、ラッパーEminemをめぐる論争だった。授賞式までのこの1週間、テレビやラジオではNational Academy Of Recording Arts And Sciences(NARAS)がEminemをノミネートし、彼の作品の価値を認めることは正しかったか否か、また、彼の詞の内容についてEminemの支持者と反支持者たちによる熱の入った議論が溢れ返っていた。

同性愛者権利運動団体であるGay & Lesbian Alliance Against Defamation(GLAAD)は、授賞式会場となったStaples Center前で“Rally Against Hate(反憎悪デモ)”を行なったが、デモが終了する間近、GLAADのニュース・メディア・ディレクター、Cathy Rennaが携帯電話でLAUNCHのインタヴューに答えてくれた。デモには100名ほどが参加し、彼女の意見としてはGLAADは目的を達成したという。
「大成功だったわ。参加者の集まりもよかった。参加者の数がより増えることを望んだ多くのメディアも参加してくれたわ。すべての発言者が、私たちの団体が問題とする様々なことについて発言できたから、道の反対側でEminemが赤いじゅうたんを歩くの待っていた彼のファンにも、私たちのメッセージは明確に伝わったと思う。また、私たち(同性愛者)のコミュニティーの人間にとって、自分たちの意見を伝え、今回の件について危惧している内容について発言できた非常に良い機会であったとも思うわ」

授賞式が始まるなか、Rennaに、もし今までの議論や抗議にも関わらずEminemがグラミーを受賞したとしたら、GLADDの反応はどのようなものになるかと尋ねてみた。
「まあ、Ablum Of The Year(年間最優秀アルバム)は特にそうだけど、どの賞であれ授与されたとすれば、NARASとグラミー選考者たちの尊重心の欠如と偏見に対する容認の表れと私たちは受けとめるでしょう」

NARASの代表、Michael Greeneは、テレビでの討論で次のように語っていた。
「あなた方が当惑している理由は、彼が(人々の)反応を呼び起こしたからです。この反応(を刺激する)というのは、まさにアートがアートたる所以のひとつなのです」

結果的にEminemはAlbum Of The Yearは受賞せず、Steely Danが受け取った。しかし、GLAADの努力にもかかわらず、彼は3つの賞を受賞した。“The Real Slim Shady”でBest Rap Solo Performance(ベスト・ラップ・ソロ・パフォーマンス)、『The Marshall Mathers LP』でBest Rap Album(ベスト・ラップ・アルバム)、そして彼の師、Dr.Dreとの共演作品“Forget About Dre”でBest Rap Performance by a Duo or Group(デュオまたはグループによるベスト・ラップ・パフォーマンス)の3つだ。また、Dr.DreはNon-Classical Producer of the Year(年間最優秀プロデューサー:非クラッシック)を受賞している。

グラミー賞授賞式の終了後、GLADDのメディア・ディレクター、Scott Seominがコメントを発表した。
「Eminemの憎悪に固められた歌詞に対し、Album Of The YearというかたちでNARASからのいっそうの賛美や奨励が与えられなかったことに、GLAADでは満足しています。しかし、Eminemに3つのグラミー賞が授与されたことで、頭から水を浴びさせられたようでした。なぜならこの事実は、憎悪や偏見、性差別や暴力を促進させる歌詞に、NARASのメンバーたちが認可のスタンプを押す準備ができていることを示すものだからです」

GLAADでは授賞式以降も、Eminemに対する論議を続けていくとRennaが語った。
「これは大きな問題の一部であり、私たちにとって非常に重要な偏見や同性愛差別、性差別という問題について一般の人たちが考え、話し合う機会を作り上げるという、私たちの継続している活動の一部なのです」

Jason Gelman
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