学生のイベント企画チーム“POOL DUCK”が立ち上げたイベント<Hot Chili Noties>を密着レポート!

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歌うは即興、越えるは国境

安かろう悪かろうのイメージは遥か昔のmade in Korea。今やmade in Japanを見つけるのも一苦労。むしろ、製造場所なんて無関係、といった域に入った。

加えて韓国をとりまく歴史的事実は依然と深い根をおろし、新聞紙面を賑わすのだけれど、それとはまた別に、若者たちは別の角度から日韓を感じているようだ。

そう、2002年に行なわれる合同開催のワールドカップ・サッカーを中心に盛り上がっているのが、今の日韓交流なのだ。

で、そんな若者たち――学生によるイベント企画チーム“POOL DUCK”により立ち上げられたのが今回のイベント<Hot Chili Noties>。

イベントが行なわれた渋谷Quattroの階下にあるソウル・ファッション・マーケット“東大門市場”や、韓国文化を広く伝える雑誌“HOT CHILI PAPER”などがバックアップして、始まる前からちょっとしたお祭り気分なのだ。

そんななか、選りすぐられたのが、日韓のクラブ・ミュージック、ヒップホップ勢。今、日韓ともに現在、盛り上がっていて、ストリートに近いという意味での選択なのだろう。
お祭りムードすら漂よう、若者による若者のための画期的イベント!
オープニングには日本のヒップホッパーGWASHIが登場。4MCに1DJスタイルで、4人の息を切らさぬ言葉の弾丸は"パワー"となって会場を圧倒。そして次には朝本千可(ソプラノ・サックス)とAmbient7(MOMOと池淵秀一によるトラックメーカー)が、会場全体を別空間へ誘うようなサウンドで"穏やかに、そして、たおやかに"包み込む。
.~ASH.
そんなステージの流れをそのままに、朝本から韓国人シンガーASHへとバトンタッチ。キュートで癒し系のルックスに違わず、ソフトなヴォイスがスムースに流れる。韓国ではKiroroの「長い間」をカヴァー・リリースしたようで、ここでも披露。リズムの効いたクラブサウンドに、ASHの雰囲気ある歌は踊れながらも、爽やか。"シルキー"な声の耳障りだ。

次は日本からDelighted Mint。イタリア、カメルーン、日本といった多国
籍な4MCのこのユニットはとにかくキレがよくて、トラックも多彩。"押し引き"の効いたステージだ。

イベントも後半を迎え、オーディエンスも増えてきた。そんな中、客席側からステージを楽しむASHを発見! あまりのキュートさから声を掛けてみると、「今日はAmbient7と演ったけど、楽しかったわ。ええ、韓国でもハウスが流行っているの。私自身はR&BもHIP HOPも好き」と語っていた。ちょっとココロが和んじゃったロンチ・スタッフ2名あり。
.~Delighted Mint.



.~Baby・M
そしてステージはBABY・Mへ。

イギリスと日本のハーフのシンガーで、長崎在住。クリスティーナ・アギレラや、ブリットニー・スピアーズ風な活気あるステージで、“アメリカ~ン”な様相。そんな雰囲気とマッチた楽曲がいい感じで盛り上げている。

そして、次はTyler。3~5人のバックダンサーを従えて、「You never know」を披露。ダンスもバックダンサーとともにしっかり構成されたステージを観せる。常々私は、ダンサーであること、そしてシンガーであることの両立に意味があるのか?と思っていたのだが、ここで初めて分かった。Tylerの曲はすべてTylerが踊ることを基準に作られているのだ、ということ。Tylerが踊りたいと思う曲を、自らパフォーマンスする、そこに基準が置いてある歌なのだ、と思った。だから、きっちりとしたテクスチャーの上に成り立った踊りはもちろん、何気ない
動きひとつひとつもキマっている。それを姐御の風格で堂々としたステージングを見せるTyler。最後は最新シングル「Beautiful」で締めくくった。

そして韓国からのHIP HOPユニット、Master Planが登場。

ヘヴィでシリアスな雰囲気を醸し出している……んだろうなということはサウンドや彼らのラップスキルやスタイルから分かる。が、いかんせん韓国語。ラップという言葉主張が武器となる音楽で、それが理解できないのは非常に痛いところであり残念。字幕テロップが欲しい気分だった。特に中心人物のJOOSUCは、一言も二言も持っていそうなタイプなだけに、残念。が、とにかく「シリアス」さが染みたステージだった。
.~Tyler.
そして、ここで出演者が総出演(ラッパ我リヤ含む)他にも飛び入りゲストが参加して、1本のマイクを引き継ぎながらのラップ・リレーを繰り広げている。さすがみな、鍛え上げられているようで、トラックなしの即興で聴かせるラップのスキルとフレキシビリティを見せつける。見事! 「歌うは即興、超えるは国境」といったような内容の、日韓を意識したセリフが聞こえてきた。

……で、出演者全員出てきちゃったし、もしやラッパ我リヤのステージなし? なんて思ったら、クラシックの名曲「はげ山の一夜」とともにラッパ我リヤ、再登場。
.~JOOSUC.
.~ラッパ我リヤ
クラシックかと思えば、今度は三味線のような音も使ったりと、多彩でカラフルなんだけど、すごく安定感があるトラックで盛り上げる。そして、その上でQや山田マン、そしてゲストとして参画したINDEMORALの面々たちがライムを放つ。そのスタイルは、自身でラップを楽しみながらも、ファンを楽しめることを意識しているもので、やはりラッパ我リヤは兄貴肌!

強面のメンバーたちではあるが、すべてを包み込むフロウを叩きこむステージングは、「Do the GARIYA thing」で頂点に達し、これですべてのステージが終わった。

こういったライヴの合間に、韓国映画の紹介が入ったり、司会者とオーディエンスのやりとりありと、ただステージを一方通行に見せるものではなく、全体的にお祭りムードが漂っていたクアトロ。

オーディエンスみんなが韓国のことを、アジアのことを、ちょっとずつだけど意識させただろうか? こういった交流が、さまざまな形で、各地で続くことを願う。

文●星野まり子

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