人類への5ステップ

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人類への5ステップ

 

ステップ1:ケースからAutechreのCDを取り出す。

ステップ2:CDプレイヤーに入れてプレイボタンを押す。

ステップ3:周囲のかすかな変化を聞き逃さないように注意する。その場で聞こえる偶然の音は、すべて意味をまとっている。その自然の言葉は、ヒップホップとテクノから音の文法を借りたコンピュータコードに翻訳される。

ステップ4:音に身を委ねる。

マンチェスターのデュオ、AutechreのRob BrownとSean Boothはつい最近、彼らのイメージどおりにエレクトロニックミュージックを再構築するとどうなるかを示してみせた。博士号をいくつも壁に飾っている物理学者でさえ、この分野では彼らに口出しできない。

Autechreは、Aphex TwinやMu-Ziq、Speedy Jといったインテリジェンス・ダンスミュージックの教祖たちと並んで、'93年の画期的コンピレーション『Artificial Intelligence』(Warp)に収録されていた。その時点で彼らはすでに、だれも聞いたことがない感触の音、それでいて驚くほど根源的な音を開拓していた。Brownによると、彼らは「自分たちで見つけた音を選んで、おたがいに影響を与えながら」そうした音楽を独自に作り上げたという。

スタートの時点で、すぐに問題にぶつかったよ。ある種の音の特徴を表す言葉を、自分たちで作らなきゃならなかったんだ。アカデミックな領域では、人間に知られているすべての音の特徴が分類されている。果たして僕らは、何がしかのことができてるのか。それとも、すでに何かがなされていて、どこから先が未開拓なのかを正確に分かってないだけなのか。僕らは、そういうグレイゾーンにいるんだ

Autechreの音は、年を経るにつれて変遷してきた。『Chiastic Slide』のモノクロのノイズから『LP5』の折衷主義を経由して、最新のEP「Peel Sessions」へ。しかし彼らの音楽はウィルスのようなもので、たとえ生存競争の過程で突然変異を起こしても元来のプログラムは保存されている。実際、RobがAutechreの音楽について語るようすは、まるで生きている有機体の話をしているようだ。「いまリズムとメロディーをどう考えてるかというと……、僕らはビートを書いて曲を書くんだけど、いい曲っていうのはたいてい、その両方が同時に進化したときのものだね」というふうに。

そうやって書かれた音は機械を通って加工される。しかし、音がループになって無限に繰り返しているときでさえ、わずかな変化を施すことでAutechreの複雑性が現れてくるとBrownは言う。

2つの音が(同時に)あると、それは2つの元素が結び付いているようなもので、そのあいだにひとつの価値が生まれる。ループを作ったり音を重ねたりすると、自分が何を聴いているか分からなくなる瞬間が来る。そのとき、音がひとり歩きを始めるとぼくは思ってるんだ。3週間後に理解できるとか、3年後に理解できるとか、そんなものは分からなくてかまわないよ

その考え方は、Autechreのライヴパフォーマンスにも一貫している。彼らは、演奏を各会場のセッティングに合わせて決めている。「音は演奏する場所ごとに違う」とBrownは言う。「室内には反射音があって、壁や配管の具合によって共鳴を起こすバスドラムの周波数が違うんだ。音楽で会場をよじらせることができるんだよ、やろうと思えばね

最終ステップ:以上、すべての経験を要約する。

Autechreの足跡を振り返って「こんなことを自分たちがやれると思ったなんて、かなり神経の図太いやつらだよね」とBrownは言う。「結局うまくいったけど

By Justin Hampton/LAUNCH.com

 

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