最小限の音を人力で紡ぎ出し、パワーに昇華させる恍惚世界

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ビートを紡ぎ、独特の空間を創造

ミニマル・サウンド。

直訳すれば“最小限の音”。ROVOのサウンドはまさにその繰り返しだ。ともすれば、難解、ともすれば、音響系とも言われるが、そこを“人”が演奏するという生音で演奏することで温度を加える。

……と言ってみても、要は感じるままに感じるしかない!ということで、BARKSは究極ともいえる音を追求しつつ、ライヴを熱狂させてしまうROVOのことが、めちゃくちゃ気になって、取材を敢行!

ROVOは勝井祐二と、山本精一(ボアダムス)の2人の思いつきがきっかけとなり結成されたのだけれど、他のメンバーも八面六臂で活躍する凄腕ミュージシャンたちばかり。そんなメンツで作られるROVOサウンドについて、勝井氏(Violin)に話を訊いてみました。

サイズやフレーズはまったく決まってなくて、“出来事”だけが決まってるんです

NEW ALBUM

『SAI』

Hi-Fidelity Flag Disc WINN-82073
2001年6月21日発売 2,000(tax in)

1. 極星
2. VIDA
3. RANO
4. SEER


Split Single CD
「PAN-AMERICAN BEEF STAKE ART FEDELATION/SINO」
Date Course Pentagon Royal Garden/ROVO
P-VINE PCD-18501
2001年7月10日発売 3,150(tax in)



勝井祐二氏からビデオメッセージが届いてます!




LIVE SCHEDULE 2001 Summer

7/28(土)<FUJI ROCK FESTIVAL '01>
@新潟苗場スキー場Field of Heaven
8/7(火)<『天幕渋さ』京都公演>
@京都大学西部講堂前
8/30(木)<百鬼夜行2001>
@Zepp Osaka
9/1(金) <百鬼夜行2001>
@Zepp Tokyo
9/13(木)
@新宿Liquid Room

――一番最初のROVOを始めようとしたときの、アイデア・きっかけはどんなものだったんですか?

勝井:
山本(精一)さんと話していて、シンプルにひたすら同じことを繰り返す音楽をやろうということで始めたんです。ミニマル・ロックみたいなものに加えて宇宙的な広がりのあるイメージ。シーケンサーのスイッチをひとつ押せば済むところを一生懸命人力で繰り返すような音楽っていうのが、最初にあったイメージですね。

――その段階から今のようなプログレッシヴでありつつダンサブルなスタイルになっていった過程は?

勝井:
やはり大きかったのは“場”の影響ですね。'97年くらいからDJ FORCEくんの<Rhythm Freaks>っていうパーティと一緒にやるようになったのが大きいと思う。FORCEくんとは昔からずっと友達で、ほかにも元フリクションで今はDJをやっているHIGOさんとも一緒にハードコア・レイヴのパーティをやっていたことがあるんです。FORCEくんが初めて僕らを見たときに「今、自分がプレイしているドラムンベースのビート感にすごく近い」って言ってて、それでお互い興味を持ったんですけど、彼らとやり始めて単にライヴハウスで演奏するというよりは、DJプレイの流れを途切れさせないでどうやって参加すべきかって目的が生まれてきた。DJのかけているレコードとクロスフェードする感じで演奏してみたら、よりフロアがアッパーなノリになったんです。「これは面白いことになるんじゃないか」と感じましたね。

――その当時ドラムンベースみたいなクラブ・ミュージックに対してどう思ってましたか?

勝井:
('97年に)ROVOの編成がツインドラムになったことで、シンプルな中にも複雑なビートの絡みが生まれてきたんです。たとえば普通に8ビートを叩いていても、お互いのドラマーのダイナミズムが変化していくことで、ドラムンベース的な複雑な構造が生まれるのは演奏しながら実感してましたね。で、ドラムンベース的なリズムを生バンドでやってみようという発想を持った人は世界中にいくらでもいたと思うんです。でも、それを普通にライヴハウスに出ていって演奏しても僕らのパーティで起きるような……たとえばダイヴする客が出るような熱いノリは生まれなかったと思うんですよ。僕らにはビートのアイデアに加えて独特の空間を創造するという意識があって、それは世界中で僕らだけだったと思いますね。

――そういった意味でもROVOにとってライヴは音楽活動のなかでも重要な位置にあるようですが、ライヴでの即興の割合はどのくらいなんですか?

勝井:
サイズやフレーズはまったく決まってなくて、“出来事”だけが決まってるんです。僕が合図したらドラムのフィルが入って次の展開に行くとか。曲によってはフレーズも含めてかなり決まっているものもありますけど、ほとんど即興で運んでいく内容の曲もある。“方向性を持った集団即興”かな。それに加えてお客さんも含め、自分たちもトランス状態に持っていけるようなものを演奏するということですね。あまりにもトランスし過ぎちゃうとただの変な音楽になってしまうので(笑)、同じくらいクールな部分も必要だと思いますよね。

――今回のアルバム『SAI』の制作は、即興風にスムーズに進行したのですか?

勝井:
前半2曲は、僕らにしては珍しく以前からライヴでやっている曲なんですが、そういう曲は迷いもなくできましたね。ただそれもいまだにライヴではアレンジが変わってどんどん進化しているんですよ。録音自体はすごく早くて1日で全部録ったりするけど、その後のミックスしていく作業がすごく長かった。ミックスでアレンジを考えていくし、曲の方向性も決めていくんです。演奏自体はスタジオでの漠然としたアイデアから膨らんでいくことが多いですね。「風のような4ビートを叩いて」というような抽象的な言葉で始まって、そこにほかのメンバーが音を重ねていく。そうやってだんだんビルドアップしていく感じですね。

――なるほど。今年2001年の7月にはアメリカ・ツアーに行くそうですですね。

勝井:
サンフランシスコのKUSFってFM局で『imago』(註:'99年8月リリースのアルバム)がヘビーローテーションになっているんですよ! それで向こうからCD売ってくれって問い合わせがすごくて、結局そのラジオ局のスタッフが『imago』を出すために新しいレーベルを作ったんです。そもそものきっかけは、僕が別のバンドでNYの<CMJ Music Marathon>ってイベントに出たときに、会場に日本のオルタネイティヴが好きなラジオ・ディレクターがいるって聞いてCDを渡したことなんですよ。それを彼がずっとかけていたみたいで、そこから火がついたんですけど。サンフランシスコでは1,000人くらい入る結構大きな会場で演る予定です。ほかにはニューヨークなど5都市を回りますよ。

――日本でのライヴは?

勝井:
帰ってきてからはFUJI ROCK FESTIVALの2日目(7/28)に出て、8/7には“渋さ知らズ”(勝井氏参加のフリージャズ・ビッグバンド)と一緒に京都大の西部講堂でやります。あそこも変わったノリのあるところで面白いですよね。その後は8月末と9月のはじめに大阪と東京で1ヶ所ずつ、くるりと一緒に演るのと、9/13にCD発売ライヴを新宿Liquid Roomでやる予定です。場所の持っているエネルギーが強いところだと、演奏にも当然影響が出てきますね。逆にLiquid Roomみたいな場所でやると、集中した感じが出てそれも好きです。良かったら観に来てください。

取材・文●巽 英俊


about ROVO

バンドの中心メンバーである勝井祐二とボアダムズのギタリスト、山本精一が「何か宇宙っぽい、でっかいのをやろう」という思いつきでスタート。

'95年に法政大学、'96年に高円寺の20000Vでライヴを行ない、現在のROVOとなる基礎を築いた。

現在のメンバーが揃ったのは'97年。勝井祐二(Violin)、山本精一(G)、益子樹(Syn、Key&Efx)、芳垣安洋(Dr&Per)、岡部洋一(Dr&Per)、原田 仁(B&Harmonica)。

勝井がドラムンベース界で勢いのあったDJ FORCEとの出会いをきっかけに、FORCEをはじめMOOCHY、KAJIのDJチーム“リズムフリークス”とROVOの共同パーティを恵比寿みるくで行ない、デビューを果たす。

生楽器によるミニマル・ミュージックを追求した結果の“トランス”という形のサウンドが、ダンスミュージック界を中心に口コミで広がる。

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'98年、12インチEP「Vitamin!/Cisco!」リリース、コンピレーション作品『Shock City Shockers』参加、また 同年7月にミニ・アルバム『Pico!』を発表。'99年も作品を次々と発表し、8月には1stフル・アルバム『Imago』をリリース。

2000年4月には早くも2ndアルバム『Pyramid』を発表。

同年は7月に行なわれた<FUJI ROCK FESTIVAL>をはじめ、さまざまなイベントに参加。ライヴの圧倒的なパフォーマンスは、ロック及びダンスミュージックなどジャンルを超えた多くのオーディエンスを魅了した。

また、10月に行なわれたイベント<soundohb>にSUPERCARと出演したことがきっかけで、SUPERCARの「FAIRWAY(White Speed MIX)」を制作。

'01年、益子もメンバーであるDub Squadの中西宏司(Syn&Key)が参加。同年6月には3rdアルバム『SAI』をリリース。

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