ラップはハードさを打ち出すための表現方法

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ラップはハードさを打ち出すための表現方法


日本にはほとんど女性ラッパーがいない中、鋭いラップとしなやかな歌で異才を放つ女性アーティストTiger
とても細くてきれいな彼女があえてラップに挑戦したきっかけや 最新シングル「Please」について訊いてみた。

私、もともとはパンクあがりなんで・・・(笑)

最新シングル

『Please』

BMGファンハウス 発売中
BVCS-29050 1,260(tax in)

1 Please
2 Rio de Janeiro Blue
3 Please-Captain Funk 'Night Flight' Mix



TigerからコメントVTRが届いてます!!!


“TIGER FOOD”
「Please」リリース・パーティ
2001年8月8日@Club Yellow

若者の間で絶大なる支持をうける、ヒップホップやR&Bシーン。渋谷、六本木界隈でも路地裏ではガラスに向かって踊る女性ダンサーなどを見かけるが、まだ女性ラッパーの活躍はあまり目立たない。しかし2000年、本格派女性ラッパー&シンガーとしてメジャー・デビューを果たしたアーティストがいる。それがTIGERだ。言葉を弾丸のように詰め込む非常にスキルの高いラップは男性からも指示を得る。彼女は“歌+ラップ”という独特のスタイルから最新作「Please」では歌を前面に押し出すという、ちょっとした“変化”があり、そんな彼女の今を確かめるべく新作のリリース・パーティに向かった。

お客さんはやはり、女性客が多く、サングラスをかけたり、とてもオシャレでセクシーな人達が集まった。DELiTED MINTやsmorgasがライヴを行なった後、いよいよTIGERの登場。ギター、ベース、キーボード、ドラム、DJ、コーラス3人とフル・バンドを従えながら、サングラスをかけた細くてスタイル抜群のTIGERが登場。力強く鋭くも、セクシーにしょっぱなからラップを披露、オーディエンスは盛り上がる。パンチのきくラップでオーディエンスを煽り、その女性として力強さにはポジティヴなエネルギーを感じた。また、2曲目でDJ GOUがスクラッチをしている間に、ステージの照明が消え、TIGERは上着を脱ぎ、サングラスをはずし、帽子をかぶって衣装変えするなどの女性らしい演出も光っていた。

そして後半、「Randy Crawfordが好き」と語ったTIGERは、新作のカップリング収録曲でもあるRandyのカヴァー曲「RIO DE JANIRO BLUE」を披露。夏らしい南国色たっぷりのトラックでさわやかに歌い上げた。続いて「切ない曲なので味わってください」と一言述べ、最新作「Please」を披露。歌とコーラスで固めたこの曲は難しいメロディ・ラインをTIGERらしく、大人の色気と力強さで歌いこなしていた。また、自身が書いた切ない女心を描いた歌詞も、ラップよりゆったりと“歌う”ことで聴き手には伝わりやすかった気がする。確かにTIGERの歌はいい。しかし、個人的にはあまり他の女性が挑戦していないちょっとワイルドでセクシーなラップの方が、より魅力的に感じ、もっとこだわって、表現しつづけて欲しいとも思った。最後には次作に収録予定という「Sun Shine」をsmorgasとDELiTEDのメンバーを呼んでラップと歌を披露。男性軍のなかでも引けをとらないラップに素直に“かっこいい”と思った。

ちょうど1年前にこのClub Yellowでデビュー・イヴェントを行ない、今回は一味も、二味も大人の色気、そしてラッパーというよりもシンガーとしてこのステージに戻ってきたTIGER。トータル的な魅力を増し、歌うことへの愛情と自信を感じた。今後の方向性、そして女性としてヒップホップ、R&Bシーンへの関わりがとても気になるところだ。
ラップという表現方法

――8月8日Club yellowでの「Please」発売イベントを終えての感想は?

Tiger:Tigerとして活動し始めてから、1年半経ってるのですが、フル・バンドを入れてライヴをしたのが初めてだったのでそこがポイントだったかな。

――DJがトラックをまわして歌うっていうスタイルが多かったのですか?

Tiger:ダンサー+DJと私とか…。例えばブースの中でライヴをやったりするときには必然的に曲数2、3曲でDJとふたりとか…。今回のライヴでは曲数的にも多くできたし、いっぱいゲストがでてくれたってことがうれしかった。

――DELiTED MINTSmorgasのメンバーが最後の曲で参加してましたね。

Tiger: そうですね。特にsmorgasのアイニー(MC)はもう6、7年くらいの付き合いなんですよ。smorgasもハードコアとはいうよりミクスチャーというか、ノリ的にはロックなんだけどかなりいろんな要素を全部消化している人たちなんです。

――Tigerさんはロックとか聴いて歌ったりしたんですか?

Tiger:自分で歌うっていうのはないんですけど、私、もともとはパンクあがりなんで…(笑)。

――えーっ、そうなんですか?(そうは見えません!)

Tiger:そうですけど、一応小学生でその辺は卒業したんで…。セックス・ピストルズとかストーンズとかひととおり聴きましたよ。UKものが多かったかな。

――そんな中、ラップをやるきっかけってなんだったんですか?

Tiger:ブラック・ミュージックに触れたきっかけは、初期のLL.クールJRUN-DMCエアロスミスの曲「Walk This Way」とか、パブリック・エネミーの初期だとか…まあ、その辺から入ってずーっと並行し'60年、'70年代のソウルを聴いてたんですね。というよりはむしろR&Bよりも歴史が長いくらいずーっと好きで聴いてたんです。あとMUROくんの曲(「三者凡退」のカップリング曲「Delivery」)とかラッパーの曲にフィーチャーする機会があって、ずーっと身近にあったからいずれ時が来たら自分でやろうと思ってたんですよ。

――どんな詩をラップで表現したいですか?

Tiger:ハードな面かな。特に女がやる場合、ヤローな面みたいなものを、R&Bの歌でやるっていうのは結構、難しいですよね。ちょっとアプローチを変えないと…。人間なかなか叫んだりとか大喧嘩しているときってやっぱ怒鳴るじゃないですかー。

――それがラップ…。

Tiger:いやーわかんないですけど今、思いついたので(笑)。でもなんかやっぱりハードさっていうのはでるのかなーっと。曲に強さを与えたいっていうか…。

――それはTigerって名前にも由来するんですか?

Tiger:ラップもやるっていうことがなければなかなかTigerって名前つけないですよ(笑)。

――1フレーズに言葉を詰め込むのがとても特徴的なスタイルですが。

Tiger:言葉を詰め込むのはMUROくんの影響かどうかも訊かれるんですけど、サウスものの影響が大きかったのかな。わりと間合いをとってというよりはムチャクチャ詰め込むスタイルってのが結構おもしろくて、またそれが歌に近くて、メロディみたいにうねりがでて・・・。

――言葉あそびみたいなのは?

Tiger:ラップ自体が言葉あそび的だと思うんです。内容が胸にしみて気持ちいいっていうよりは生理的快感みたいな感じだと思うんですね。だからそういうところを求められたら逆にそういうところをついていかないとなーって思ってます。

――日本は女性ラッパーっていないじゃないですか。そこであえて挑戦するっていうのが女である私からみて“かっこいいなー”って思ったんです。この前のライヴも女の子のファンとか多かったし…

Tiger:女の子にそういってもらえると本当にうれしいです。むこうとかは完璧に分かれている感じがあると思うんですよ。今は、ファッションとかも含めてですけど女性は女性らしく、独立してますよね。私はもともとの考え方が女の人のことしか考えてないんです。

――けれどもラップってなかなか女の子には浸透しないですよねー。チャレンジャーがいないっていうか。

Tiger:クラブとかではやっている人がいますけど、絶対数が少ないですよね。


最新作「Please」について

――新作「Please」は本当に夏らしいジャケットから、しっかり“夏”のイメージですが…。

Tiger:Boogie Suiteと組んで作っている楽曲は、わりと秋・冬っぽい感じになっちゃうんですよ。でも本当に珍しく夏っぽくて、サウンド的にも歌的にも“夏の恋”みたいな曲かな。

――印象的だったのはランディ・クロフォードのカヴァー曲「Rio De Janiro Blue」はTigerさんにバッチリ合ったカヴァー曲でした。

Tiger:ランディはもちろん大好きで、「Rio De Janiro Blue」は『Pastels Highway』というアルバムに入っているのですが、以前から原曲に近い形でBoogie Suiteと一緒にやってたんですよ。わりとアコースティックな雰囲気で…。それで「絶対あの曲いいからなんとか日の目を見せよう」ってことであのトラックになったんですよ。

――トラックもかっこいいですよね。2stepで疾走感もあって…。3曲目はCaptain Funkのリミックスですね。

Tiger:以前から彼の1stアルバム『Encounter With…Captain Funk』が好きでよく聴いてて、わりとブラック的な要素っていうかファンクの要素がかなりあるダンス・ミュージックを作られる方だったので。

――仕上がりの感想は?

Tiger:結構、意外は意外だったんですよ。BPMは早くなるだろーって思ったんですけど、ラテン・フレイヴァーになるとは思わなかったので、意外でしたね。

――デビュー当時からDJ SPINNAとかニトロのライヴでやっているDJ HAJIMEなどのリミキサーを起用したりしていますが、今後一緒にやりたいアーティストは?

Tiger:いつも具体名はあえて言わないんです(笑)。デビューしてから本当に多くの人に見てもらえるようになったってことと、リミックスでいろんな人と絡ませてもらったってことが一番自分としてはうれしいんです。多少ジャンルが違っても志というか音楽に対して思っている気持ちが同じ人とだったらこの先、どんどんやっていきたいですね。んー(少し間があいて)また、向こう(海外アーティスト)の人たちとやりたいかな(笑)。

――ニュー・アルバムも制作しているそうですが、どんな感じに?

Tiger:今までの3枚のシングルの中でカップリング曲やリミックスとかでちょっと違う音楽の色ってでてきたと思うし、やっぱり最初はラップの印象が強いところから今回は全部歌だったりとか、歌の表現手段にしても音楽のジャンルにしも多岐にわたってきた感があるので。

――4つ打ちとかテクノっぽいのはどうですか?

Tiger:もともとすごく好きで、分け隔てなく聴いてましたから。昔の話ですけど、いろんなジャンルのクラブでよく遊んでましたよ(笑)。

――それっていいことですよね。結構ジャンルにこだわるヒップホップやR&Bのアーティストは多いので・・・。

Tiger:だってパンクあがりなのでそんなこと言ってられないんですよ(笑)。今ごろそんな気どったこと言ってられないですよ。ただ残念なのは、今の自分の立ち位置がまあR&Bで、新人とかがいっぱいでてきて、聴きたいものとか聴かなきゃいけないものとかいっぱいあって、時間もないからなかなか他のジャンルが聴けないんですよ。でもいろんなところでセンスのあるヤツを捕まえて教えてもらったりとか、一般の人が知ってるようなのは買って聴いたりとか…。なるべく他の音楽も吸収したいですよ。いろいろ気になるって言うのは悪いことではないと思うし。

――ヒップ・ホップって客演が多くて様々な繋がりがあって、またロックとかとは違うムーヴメントを見せていると思うんですが、またジャンルを越えてやってほしいですね。

Tiger:そうですよね。そこが一番大事かなーって。本当にいろんな形で広がってきていると思うし、浸透すればいいなーって思ってます。

取材・文●伊藤(バークス編集部)

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