“ロックの名球界入り”メンバーたちが繰り広げる懐かしくも楽しいライヴ

Ringo Starrに対する評価はあれこれあるが、目立ちたがりでないことは確かだ。公然とベッドインを敢行するわけでも、オラトリオをものにするわけでもない。しかし独自の音楽という面で、ここ20年ほど大した動きがなかったのも事実。気立ての良さが邪魔して仰々しい行動を起こさなかったわけだが、これは音楽的に見て美徳とも制約ともなりうる。他の元Beatlesメンバーのように、アーティスティックな名声を得ることは決してなかったとはいえ、昔は多くの自作ソロ・ヒットを放ったのだ。

今のAll-Starr Bandのリーダーという立場は、自分自身をさらけだすのはいやだが、持てる才能を最大限活かしたいというタイプの彼にはぴったりなのだろう。Ringoは今回、新曲を書く代わりにイベントを企画した。単なるノスタルジックなツアーではないが、スーパーグループと呼ぶにはやはり物足りない、メガスターにはなり切れないミュージシャンたちとスポットライトを分け合って、Ringoはみんなが大好きなクラシックロックを、なんら恥じることなく聴かせてくれた。

“Yellow Submarine”“Act Naturally”“Every Time I See Your Face”。確かにエネルギー溢れるはつらつとした曲ばかりで、文句を言う人はいない。ステージに登場した瞬間から観客の大歓迎を受け、Starrは心からうれしそうだ。だが、“The No No Songs”や“You're 16”といったダルい曲を入れてくるとなると、やはりこのライヴは顔見せ程度なのか。

そう思い始めたころ、スポットライトが有名どころのバンドメンバーに移動。オールドヒットを立て続けに（というほどでもないが）繰り出す。まずGreg Lakeが、なぜかKing Crimsonの冗長な代表曲“In The Court Of The Crimson King”をプレイし始め、観客は呆気にとられた。さらにIan Hunterが“Cleveland Rocks”をハスキーな声で歌い、ご丁寧にもアンチョコを見ながら地元シカゴを歌詞に取り入れる。

他のメンバーはこれよりはマシだった。Roger Hodgsonは地味ながらも“Give A Little Bit”と“The Logical Song”を丁寧に歌い上げ、Howard Jonesは威厳を保ちつつ、心を込めて“Things Can Only Get Better”を披露。そして、Sheila E.はパワフルな“The Glamorous Life”で、ショウの人気をさらってしまった。

こうして今夜は、過去の思い出の小道をいくつか辿る楽しい夕べとなったのである（Sheila E.の乱打パフォーマンスは別として）。即興のジャム・セッションも、ことさら感動的な出来事もなかった。ただ、Ringoのギグとはどうしても思えなかった。音楽のお遊びという感じ。でも、それも悪くない。

By Tim Sheridan/LAUNCH.com