来日ラッシュのあおりをくらった日本公演。それでも、ライヴに一切の手抜きなし!

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来日ラッシュのあおりをくらった日本公演。
それでも、
ライヴに一切の手抜きなし!

P.O.D.の誠意はいつ何時も嘘や偽りのないものだ

最新アルバム

SATELLITE
east west japan 2001年11月07日発売
AMCY-7315 2079(tax in)

1 Set It Off
2 Alive
3 Boom
4 Youth Of The Nation
5 Celestial
6 Satellite
7 Ridiculous
8 The Messenjah
9 Guitarras de Amor
10 Anything Right
11 Ghetto
12 Masterpiece Conspiracy
13 Without Jah,Nothin'
14 Thinking About Forever
15 Portrait
16 Rock The Parth(RTP)Remix


昨今、“ラップ・メタル”と呼ばれるバンドは数多くあれど、P.O.D.が昨年発表したアルバム『サテライト』は、中でもその完成度において世界で1、2位を争うほどの高品質なアルバムだった。サウンド・アプローチには斬新な試みこそないものの、そのガッシリとしたサウンドの安定感と確実な演奏力、ミディアム~スロー系の楽曲にみられる卓越したメロディ・センス、そしてキリスト教の教えに基づくポジティヴなメッセージ性など、説得力の高さにおいては今のアメリカでも間違いなくトップクラス。事実、昨年9月11日の米同時多発テロの後、アメリカのロック・ステーションにおいて、クリードに次いで彼らの曲が至るところで流れていたという事実も大いに頷けるところだ。アメリカでは今や押しも押されぬ大アリーナ・バンドのP.O.D.。それだけに当初から僕の期待も高かったのだが……。

いざ蓋を空けてみれば、日本の現実はまだまだ寂しいと言わざるを得ないものだった。この日の渋谷クアトロの状況は満員には遠く、これには僕もいささかショックを受けてしまった。アメリカの状況には及ばないとはいえ、CDだってそこそこ売れていたというのに。確かに、2月という日本にとっては異常とも言える来日ラッシュの中にあって、P.O.Dの知名度が比較的まだ地味であることは否めない。とはいえ、テロの後に、どんなチャリティ・ソングにも増して傷ついたアメリカ人の心を癒す役割を果たしたバンドなのに、そういう事情はやはりここ日本までは伝わっていなかったようだ。アメリカのライヴでは数千から数万人規模の会場が当たり前のP.O.D.。そんな彼らが、この状況を目の当たりにして機嫌を損ねないだろうか。

しかし、そんな僕の心配はどうやら杞憂だったようだ。その誠実でひたむきな歌詞と同様に、P.O.D.の連中はとにかくホットないい男たちだった。体つきはメンバー4人とも、プロレスラーなみの強靱な肉体美を誇る大男たちで、その体から放たれるグルーヴも実にマッチョな力強さに溢れたものだが、演奏そのものは丁寧で軸は一切ブレていない。そして、その演奏に乗せてヴォーカルのソニー・サンドヴァルがバイタリティ溢れるラップを披露。その実力は、誰がどう客観的に聴いても、そこいらのバッドボーイ気取りのラップメタル・バンドとは明らかに性質を異にする。

そうした手抜きなしの演奏もさることながら、ソニーと観客との間に交わされる少ないながらも熱くて密なコミュニケーション。これが一番の見ものだった。“生きているのが当然だと思っていた”と命の大切さを歌い、テロ後のアメリカ人の心をとらえた名曲「アライヴ」や、やはりアメリカの高校で起こった銃撃テロを題材にした「ユース・オブ・ネーション」といったマストなナンバーにおいて、ソニーは観客の中に入り込んで大合唱を煽り、観客たちも必死の形相でそれに応えた。これが今回の日本公演の悲しい現実の中で唯一の救いだった。この光景が目撃できただけでも今回の来日公演は、成功だったと言えるのではないか。なぜなら、P.O.D.の誠意が、いつ何時も嘘や偽りのないものだということがハッキリと伝わったはずだから。そしてその答は、彼らが次に日本にやって来た時、何倍にもなって返ってくることだろう。

文●沢田太陽

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