“仮面の凶人集団”徹底的なエンターテインメント・ワールド

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“仮面の凶人集団”徹底的なエンターテインメント・ワールド

激烈轟音をブッ放しながらも、見事なタイトさとグルーヴを自在にコントロール


SLIPKNOT JAPAN TOUR
2002/03/26 @CLUB CITTA'

(515)
People = Shit
Liberate
Left Behind
Eeyore/Get This
Disasterpiece
Purity
Gently
SID Solo
Eyeless
JOEY Solo
My Plague
Heretic Anthem
Spit It Out
Wait And Bleed
(SIC)
SURFACING

最新アルバム

『IOWA』

Roadrunner
RRCY-11146 2,548(Tax in)

1 515
2 People=Shit
3 Disasterpiece
4 My Plague
5 Everything Ends
6 The Heretic Anthem
7 Gently
8 Left Behind
9 The Shape
10 I Am Hated
11 Skin Ticket
12 New Abortion
13 Metabolic
14 Iowa
15 Liberate (live/日本盤のみボーナス・トラック)

ステージ上には幕が下りたままの状態で、ひたすらオーディエンスをじらすように、延々とオープニグSEの「515」が鳴り響く。

既に、フロアを埋め尽くした血気盛んな連中は暴発寸前だというのに、何だかコレがやたらと長い。しかし、それだけに幕が上がるやいなや強烈なブラスト・ビートと共に「People = Shit」が炸裂した瞬間の破壊力たるや、溜まりに溜まったガマン汁が一気にブチまけられ、まるで全てを混沌と暴音に呑み込んでしまうかのようだった──。

“仮面の凶人集団”スリップノットの真髄は、やはりライヴにある。そんな当たり前の事実を、ライヴ開始わずか数秒で思いっきり思い知らされることとなった。

pic by Shigeo Kikuchi
とにかく、ステージ上は常に“暴虐のテーマパーク”状態。のっけからドラム・セットは宙高せり上がっていて、ステージ左右前方に設けられたパーカッションも自在に浮き上がり、また回転して地獄の遊園地といった光景が繰り広げられる。

当然、2人のピエロ──(3):クリスと(6):ショーンは演奏そっちのけで、フロントマンであるシンガー、(8):コリーの存在さえ気に掛けることなく、これまた仕事をやってるようで結構遊びまわってるターンテーブル担当のガスマスク野郎、(0):シドと一緒になってステージを縦横無尽に我がモノ顔で駆け回りまくり。

ただ、そんな百鬼夜行の乱行三昧の裏で、実のところ、メンバー全員の演奏は限りなくタイトこの上ない。特に、恐ろしく正確に鬼のようなビートを叩き出す(1):ジョーイの奇跡的なドラミングは、彼等のライヴ・サウンドの文字通り“
要”と言えよう。 また、ブッとい重低音の刻みで悪魔的グルーヴを生み出す(4):ジェイムズ&(7):ミックのツイン・ギター・コンビのテクも、実際には並みではないのだ。

激烈轟音をブッ放しながらも、見事なタイトさとグルーヴを自在にコントロールしてみせることができるからこそ、彼等は時代の寵児として瞬く間に全世界を制覇してしまったのだろう。

pic by Shigeo Kikuchi
しかも、激ヘヴィにして爆裂ビートと超重低サウンドを駆使しながらも、聴かせどころではしっかりキャッチーなサビ・メロが用意されていたりするのだから。もうこれは、恥かしげもなく“最強”なんて言葉を使いたくなってしまう。

流石に、オヤヂの道へとっくに足を踏み込んでしまっているワタクシなどは、ピョンピョン飛び跳ねることも…モッシュしまくることも…人の頭の上をクラウド・サーフしていくこともなかったが──きっと今が盛りの10代のオーディエンスだったら、コレを聴いてジッとしていられるハズなどない。

終始、気持ちヨク暴れて、叫んで、圧倒的音圧に身を委ねるのみ? いやいや、魅せ場もしっかり用意されてます。特に圧巻だったのが、後半、上へ下へ右へ左へ…と蠢くドラム・セットを90度前へ倒した姿勢のまま、驚くべきドラム・ソロを披露した(1):ジョーイだ。

また、何とも流暢な日本語でMCしていた(8):コリーが、「
シャガメ!」とフロア全体のオーディエンスを座らせ、合図と共にジャンプさせたりするのも、もはや定番となっているのだろう。ただ、個人的に一番感動したのは、印象的なリフレインが大合唱となった「Wait And Breed」──実は彼らのレパートリーの中でも、この曲がマイ・フェイヴァリットだったりするのだ。

まぁ…まさかいないとは思うが、彼らのことを未だに“見てくれだけのエキセントリックなパフォーマンス集団”などと思っている人が、もしまだいるのだとしたら、一度はあの楽しいショウに足を運ぶことをオススメする。

一部では早くも“21世紀のKISS”などとも呼ばれているらしいが、あの徹底的なエンターテインメント・ワールドは、確かに今後も、もっともっと幅広い層を取り込んでいくに違いあるまい!

文●奥村裕司/Yuzi Okumura

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