桑田佳祐、待望の2枚組ベスト・アルバム『TOP OF THE POPS』をリリース

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新曲も収録!2枚組ソロ・ベストアルバム『TOP OF THE POPS 』 をリリース

流れ行く時代と不変の琴線、可変の音楽性をあらゆる角度から追い続けて堆積した楽曲の数々

2枚組ベストアルバム

『TOP OF THE POPS

TAISHITA 2002年11月27日発売
VICL-61006~7 3,600(tax in)

<DISC 1>
1 波乗りジョニー
2 黄昏のサマー・ホリデイ
3 白い恋人達
4 踊ろよベイビー1962
5 月
6 哀しみのプリズナー
7 Blue~こんな夜には踊れない
8 悲しい気持ち (Just A Man In Love)
9 Journey
10 飛べないモスキート(Mosquito)
11 真夜中のダンディー
12 可愛いミーナ

<DISC 2>
1 素敵な未来を見て欲しい
2 MERRY X'MAS IN SUMMER
3 BAN BAN BAN
4 スキップ・ビート
5 ONE DAY
6 鏡
7 いつか何処かで (I Feel The Echo)
8 遠い街角(The Wanderin' Street)
9 誰かの風の跡
10 クリといつまでも
11 奇跡の地球
12 光の世界
13 ヨイトマケの唄
14 祭りのあと



桑田佳祐が、サザンではないソロのステージを展開するとき、やはり人ひとりの寂しさが曲間に滲んでくると思うのは果たして僕だけであろうか。そして、その寂しさは転じて、ある種の官能的感覚を運んでくるとも思う。

サザンとソロ、どちらが完全体なのかは、観る人・聴く人によって見解を異にするのだろうが、僕は、寂しさや官能性が浮かび上がってくるソロの方に、年齢とともに共感が増すようになった。

桑田佳祐のソロ活動を遡ってみるとき、'80年代に入り、サザンオールスターズのメンバーがソロ活動を展開し始めた時期が“始点”だと言っていいだろう。桑田自身は半ば余興的バンドでカヴァー曲を主体としたライヴをおこない、アルバム『嘉門雄三&VICTOR WHEELS LIVE!』('82年)をリリースした。

しかしながら、桑田が本格的にソロ活動を始めたのは、'86年のことであったのだ。その年の1月、桑田は松田弘、今野多久郎らと1年間の期限付きのバンド:KUWATA BANDを結成した。

KUWATA BAND解散後は、桑田佳祐名義でソロ活動を続け、小林武史、藤井丈司との共同プロデュースで制作された初の個人名義(ソロ)アルバム『Keisuke Kuwata』をリリース。さらに、'91年には日清パワーステーション(東京・新宿にあったライヴハウス)でおこなわれたソロライヴ『Accoustic Revolution』に参加した主要メンバーがSUPER CHIMPANZEEというユニットとなり、シングルをリリースした。

これらの活動は、桑田佳祐のソロとして展開されてきたものではあるが、それは、サザンオールスターズの音楽にも結実していく貴重な実験でもあったのだ。そして、’94年、桑田の“硬さと深淵”を目の当たりにできる異色のソロアルバム『孤独の太陽』がリリースされる。 そして、ときは巡りて、21世紀。'01年「波乗りジョニー」からの再びのソロ活動は、皆さんも御存知の通りだろう。KUWATA BANDまでのソロを第1期とするならば、小林武史らと『Keisuke Kuwata』を作り、さらにSUPER CHIMPANZEEというユニットにまで発展していったのが、第2期、『孤独の太陽』とそれに伴うツアーの時期が第3期。そして’01年から現在までは第4期と画定することができるかもしれない。

今年’02年は、昨年の2枚のシングルとは真逆のベクトルを持つ制作過程を経て、桑田の音楽的土台の重要構成要素になっているロックミュージックを年輪とともに直視した『ROCK AND ROLL HERO』をリリースした。現在の第4期、特に今年は、THE BALDING COMPANYというバンド名を与えた音楽仲間と「東京」をはじめとする“喪失感”を感じさせる楽曲を生んだ。
 
今回リリースされる2枚組のベストアルバム『TOP OF THE POPS』は、嘉門雄三&VICTOR WHEELSを除く桑田佳祐ソロの軌跡が濃縮された作品である。ソロ楽曲の重要な曲を網羅しているほかに、新曲「素敵な未来を見て欲しい」を収録。この曲は、ファンクラブ(サザンオールスターズ応援団)のネット限定企画として「あなたにとって一番大切な人へのメッセージ」という形で寄せられた20字ほどのメッセージを元に桑田が歌詞を書き下ろしたもの。アレンジ&音使いは、ソリーナのような原始的エレピとアナログシンセを強調した仕上がりで、愛の普遍的感情をクリスマス的雰囲気の中に歌ったものだ。当たり前の幸せを願ったナンバーと呼べるかもしれない。クリスマス・ソングとしては、KUWATA BAND時代の“夏のクリスマス・ソング”「Merry X'mas in summer」や昨年の12月の、ソロとしては初めてクリスマス・コンサートをおこない、雪が路肩に高く積まれた札幌~月寒グリーンドームで堪能した「白い恋人達」もしっかり収録されている。

このアルバムに『TOP OF THE POPS』という名前が冠されているのは、シャレでも奇をてらったものでもないと僕は思う。20余年をかけて、桑田佳祐は、“ポップスのオールラウンダー”になったことの微かな表明だと思えるのだ。もちろん彼は最初から(才能はあったかもしれないが)万能ではなかった。流れ行く時代と不変の琴線、可変の音楽性をあらゆる角度から追い続け、その結果、堆積した楽曲の上に桑田佳祐の現在形を築いたのではないだろうか。そして、気付けば音楽キャリアをスタートさせてから四半世紀。続行の精神は、さらに先に延びているのである。

文●佐伯 明

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