タトゥー、がんばった。東京ドームは短時間だが二人の魅力がバッチリで大満足

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噂通りの観客の少なさではあった。アリーナでさえも埋まっていない。スタンドもバックネット裏のスペースだけ。そこでさえ空席が目立つ。それ以外のスタンドは閉鎖されて観客が一人もいないという状態。開演5分前にアリーナに足を踏み入れた瞬間、「ヤバイかも」という感情が芽生える。この不入りに気を悪くしたタトゥーの二人がまたまたドタキャンしてしまうのではないかという不安、それでいて「当日開場してからのドタキャンを見られるなんてラッキー」といった不埒な思いが頭をもたげてくる。しかし、そんな大人のイヤらしい思惑とは全く関係ない位置にいるのが、本当にタトゥーが好きで応援しているファンの子達だ。タトゥーのコスプレをした若い女の子達が顔を高潮させながら開演を待っている。客席がガラガラだろうと関係ない。彼女達は純粋にタトゥーの音楽が好きで、そして二人のことが好きで、きっとお小遣いを工面して定価でチケットを買ったのだろう。地方から泊り込みで来ている子も多かったと聞く。

ステージ上は白いスロープ、そのステージを取り囲むように5つの巨大スクリーン、そして80m近くある長い花道。これだけのセットはめったに見ることができない。それくらい力の入ったものだ。6時45分に客電が落とされ観客が総立ちになるものの、延々と続くDJのプレイと繰り返し流される意味不明の映像に飽き飽きしてまた座り込んでしまう。

引っ張るだけ引っ張った30分以上のプレイの後、「All The Things She Said」のイントロが流れステージに二人が登場する。白いシャツにジーンズ、白いブーツといった彼女達らしいファッションだ。かっこいい。スロープを降りてきて歌が始まると同時に耳をつんざくマグネシウムの爆発。一気に観客席は盛り上がり、少女達は椅子に立ち上がって係員から注意を受ける。畳み込むメロディをきれいなハーモニーで歌い、最後には二人がステージ中央で抱擁して熱く長いキッス。悲鳴に似た声援がドームにこだまする。そこからは休むことなくステージは進み、お互いにカメラで写し合ったり観客を写したりした映像が巨大スクリーンに投影される。長い花道をいっぱいに使って、時にはじっくりと歌いこみ、セクシーなダンスで観客を挑発し、先端まで行ってスタンドの観客に手を振る。そこにもここにも盛り上げる仕掛けがいっぱいだ。カメラを録ることに夢中になって手拍子を打つことができなく、今ひとつノリの良くない客席に向かってできる限りのパフォーマンスを繰り広げる二人。歌の方も手抜きなんか感じられない。精一杯だ。しっとりした曲では荒い息遣いが聞えるほどの感情移入で歌い上げる。オール口パクなんてありえない。彼女達の持つ楽曲の水準の高さ、歌唱の素晴らしさ、個性が客席にまで確実に届き、実に内容のあるコンサートになっている。

約1時間のコンサートはあっけなく終わった。アンコールもない。しかし、ティーンのファンの顔には満足した表情が浮かんでいる。だらだらと長いMCで2時間行われるコンサートなんかより、かっちりとコンパクトにまとまっていて、瞬間瞬間を楽しむという意味において、不満のないコンサートだと感じた。数々の不祥事で嫌われているという現状はある。しかし、ステージ上の彼女達は確かにプロだった。それを強調しておきたい。
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