テクノDJとしてナチュラルな姿を映し出した『EXHIBITIONIST』完成

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「自分のやってきたことはエレクトロニック・ミュージックっていう大きな枠で考えると
本当に1点にしか過ぎないんだけれども、
今、それを記憶しておく必要があるんじゃないかって思ったんだよ」


世界中のダンスミュージック・ファンを常に魅了してきたJeff Mills
今となって肥大化してきたエレクトロニック・ミュージック・シーンの中で自身が述べるように
彼の活動は1点かもしれないが、その1点の存在が今のシーンに大きな影響を与えてきたことは
言うまでもない。

そして今回、衝撃的に“これで最後”と断言したミックスCDと共に
DVD『EXHIBITIONIST』(日本語訳:露出狂)をリリース。
そのタイトルからも想像できるようにDJの姿をそのまま映し出した直球な作品となっている。
しかし、逆をいえば、"テクノ・ゴッド"と称される彼だからこそ作れたDJ作品なのだ。
JEFF MILLS自身、シンプルに捉えつつも、あらゆる角度から楽しめるように考えて作り出された作品。
そこに込めた想いを訊いた。

最後のMIX CD=僕が持ってるものを全て出し切った

最新DVD

『EXHIBITIONIST』
DVD
Axis Records 2004年1月9日発売
AXJDVD-001 3,500(tax out)

<収録内容>
■Axis Mix
「この作品の中で唯一、マルチアングルが自分で選択できるオプションになっているんだ。ズームができたり、スローモーションができたりするので、一番DJ講座的に使うというか、僕の技を見るには一番適しているし、DJのディテールを表現している。内容的には僕のAXISレーベルの作品だけをミックスしている」

■Purpose Maker Mix

「この中でもスペシャルなミックスで、Ramdom Noise Generationのライヴが挿入されているんだけど、お客さんが実際にライヴへ行って、最初にDJがあって、次にライヴが始まって、またDJに戻るっていうのをそのまま表現したかったんだ。要するにライヴパフォーマンスをDVDでそのまま表現できるっていうのをやりたかったんだ」

■Tomorrow Mix
「ラジオで聴くような感じのミックスを前提に意識して、会話が入っているんだけど、BGMのように音楽が流れているんだ。TomorrowレーベルとAxisレーベルから何曲か使っているんだけど、よりエクスペリメンタルな感じの音を使っていて、会話はTomorrowレーベルの一番に収録されている会話をそのまま使っている。これは僕じゃなくて、全然別の映像なんだけど、MediumLPのエクスペリメンタルな映像を利用していて、ジョフリー・バレエ団のダンサーにアブストラクな踊りをやってもらっている」

■Exhibitionist Mix

「世界中のアーティストの作品をミックスしていて、これが最新のミックス作品になるわけだけど、この72分のヴァージョンがCDになるんだ」


↑Exhibitionist Mixを!

・Jeff Mills Interview
・Randam Noise Generation interview
・Making of the Exhibitionist
・Credit

これが最後のMIX CD

『EXHIBITIONIST』
MIXCD
Axis Records 2004年1月9日発売
AXCD-001 2,600(tax out)



official site:
http://www.axisrecords.com/jp/
※全ての画像と文章の無断転用を禁止します。
――『EXHIBITIONIST』の全てのアイデアはどこからきたんですか?

JEFF MILLS: 音楽のDVDはある特定のライヴを録画したものだったりとか、その場だけを捉えたものっていうのが多いんだけど、あえて自分はそれをやめて、"マルチファンクション"=多様性がある機能を使えるようにと考えてこの作品を企画したんだ。だから、単に家で観てもらうだけでなくて、いろんな風に使って欲しい。そのうちのひとつはライヴ・セッティング。パーティだったり、ライヴとかのセッティングで、このDVDを映し出して使ってもらいたいなって。

――それは長年DJをしてきて、感じることがあったからですか?

JEFF MILLS: クラブではお客さんがたいていDJのほうを向いて、踊っているだろう? DJからするとお客さんが自分に何かを求めているってすごく感じるんだ。でも実際、自分はレコードをミックスするので手一杯だから、DJは音楽的なことしか与えられない。それ以上の別なものは与えられなくて、フラストレーションが溜まるんだよね。それが発端で、DJする自分をシミュレーションとして作り上げて、それが自分の分身として存在すれば、お客さんに与えたいものが、より別の形で与えられるんじゃないかってね。'90年代の後半にDJがスター的な存在になってきたっていう要素もあると思うんだけど、エンターテインメントとしてDJがこの先何ができるかって考えたときに、今回のDVDだったら曲のタイトルを映し出すとか、そういう情報をエクストラであげることもできる。そういう風に他の人のパーティでも使ってもらえるかなって。

――なるほど。それにしてもやはり"DJの真の姿"が伝わる内容ですよね。

JEFF MILLS: たいていDJブースは平らにセットされているからパーティに来ている人にとって僕がどんなDJをしているか実際に観ることは少ない。だからそれを見せようということで、今回はマルチアングルで上や横から撮ってもらうことによって、僕のDJも理解することができるし、エレクトロニック・ミュージックそのものをより理解してもらいたいって思ったんだ。あとは若い世代にDJというものを実際に観てもらって教えていきたいとも思った。

――そう思ったのはどうしてでしょう?

JEFF MILLS: 自分が若かったときに、ヒップホップとかグランドマスター・フラッシュとかのDJビデオで手元が観られるようなものがあればものすごく参考になっただろうなって思ったから、そういう気持ちで次の世代の人にはDJのビデオを観て学んで欲しいってね。僕はアメリカで何人かのDJからいろんなことを教わったけど、ヨーロッパのDJはほとんど独学なんだ。僕は若いとき、DJとしての何個かルールみたいなもの教わって。……例えば、お客さんの前で絶対に飲み物を飲んじゃいけない、背中を向けちゃいけないだとか、レコードはしゃがんで見えないようにとるとか、汗をかかないようにするとか、DJのために針をきれいにしておく、DJブースは自分が入ったときと同じ状態で去るとかね。そういうマナー的なものを教えられて、今でもそれは守ってるんだよ。それもDVDに入れればよかったかな~(笑)。でもそんなことを考えているヨーロッパのDJはあまりいない。なぜなら教える人がいなかったからね。

――そんな中で“DJになりたい”と思う人にとっては本当に素晴らしい作品になったことは間違いないですよね。でも、簡単にみえてそれをやり遂げた作品が今までに無かったですよね。

JEFF MILLS:  そういうことはまあ、悲しい事実だよね。実際、レコードをミックスするっていうのがDJの仕事だから、僕にとって本来の一番ナチュラルな姿の作品なんだよ。音楽としてこのビデオを観てもらうことで、テクノDJとヒップホップDJがどう違うかとか、レコードのどういう要素を取り出してミックスし作っていくのかとか、テクノDJを理解してもらえると嬉しいんだ。あとは自分のクセやちょっとしたトリックとか、僕というパーソナル的なところもね。自分のやってきたことはエレクトロニック・ミュージックっていう大きな枠で考えると本当に1点にしか過ぎないんだけれども、今、それを記憶しておく必要があるんじゃないかって思ったんだよ。まあ、他のDJも同じように考えてくれてこういう作品が増えれば、これから先に価値のあるものになると思うんだけどね。

――今回DVDと同時にリリースするCDが最後のMIX CDということですが……。

JEFF MILLS: DVDも含めてなんだけど、内容的に僕がDJとして今やれることを表現したから、今後、これ以上DJ MIXでやりたいことがあるかって考えたときに、いわゆる"MIX CD"という形でやるのはここである意味、僕が持ってるものを全て出し切ったと思ったんだ。だけど、DVDっていうフォーマットで考えた時には、ミックスかは分からないけど、今後も積極的に考えていきたいね。

――それでは最後、DVDやインターネットに対する考えをお訊かせください。

JEFF MILLS: ヨーロッパではDVDがCDに代わる音楽メディアとしてかなり台頭してきてるんだけど、アーティストはDVDとしてみせるコンテンツがないとだめだから、アーティストの力量がより問われる時代になるし、DJっていうのをより上の段階に持っていけるメディアでもあると思うんだ。インターネットもDVDに似ているけどもっとブロードバンドが進んでいけば、もっと動画とかでよりたくさんの情報を簡単に入手できるし、アーティストのパーソナリティをもっと提示していくことが可能になるんじゃないかな。

取材・文●イトウトモコ

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