宇多田ヒカル、涙と感激でMCができないほど歌に全精神を注ぎ込んだ日本武道館公演

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涙と感激でMCができないほど歌に全精神を注ぎ込んだラスト公演

2004年、2月3・4・7・8・10日の5日間に渡って日本武道館で行なわれた
宇多田ヒカルのコンサート<Utada Hikaru in Budokan 2004 "ヒカルの5">。
デビュー5周年を迎えてすぐのライヴが5公演、
そして五感、五体、五本の指などと人間の身体に関係のある数字ということで、
この名称が付けられたという。
<BOHEMIAN SUMMER ~宇多田ヒカルCircuit Live 2000~>以来3年半ぶりになり、
多くのファンの期待を集めた今回のコンサートは、彼女の全力を出し尽くした素晴らしいものになった。
ヒッキーの魅力を堪能できたコンサートの中身を紹介しよう。

光のシャワーの中でヒッキーは歌うことの楽しさを実感しているようだった

<ヒカルの5>  セットリスト
2004.2.10@日本武道館
1.光
2.traveling
3.Letters
4.Another Chance
5.In My Room
6.Can You Keep A Secret
7.Addicted To You
8.SAKURAドロップス
9.甘いワナ~Paint It,Black
10.Movin'on without you
11.蹴っ飛ばせ!
12.Wait & See ~リスク~
13.COLORS
14.First Love
15.Deep River
16.Distance
17.嘘みたいなI Love You
18.Automatic
アンコール
1.幸せになろう
2.B&C
アルバム


『DEEP RIVER』
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1.SAKURAドロップス
2.Traveling
3.幸せになろう
4.Deep River
5.Letters
6.プレイ・ボール
7.東京Nights
8.A.S.A.P.
9.嘘みたいなI Love You
10.Final Distance
11.Bridge (Interlude)
12.光

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『SINGLE COLLECTION VOL.1』

1.time will tell
2.Automatic
3.Movin' on without you
4.First Love
5.Addicted To You [UP-IN-HEAVEN MIX]
6.Wait & See ~リスク~
7.For You
8.タイム・リミット
9.Can You Keep A Secret?
10.FINAL DISTANCE
11.traveling
12.光
13.SAKURAドロップス
14.Letters
15.COLORS

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1.COLORS
2.少年時代
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Photo by 三浦憲治

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事前に関係者から、日を追うごとに良くなっているとの情報を得て、期待に胸をワクワクさせながらコンサート最終日の日本武道館に足を踏み入れる。開演を直後に控え、アリーナから2階席までを埋め尽くした超満員の観客は壮観だ。思えば<BOHEMIAN SUMMER>ツアーから3年半。まだまだ経験の足りなかった前回から、どれほどの成長を見せてくれるのか。また、その後にリリースした数々の名曲をどのような仕掛けと歌唱で魅せてくれるのか。広い会場は、抑え切れない期待感で胸をいっぱいにした超満員の観客が待ち受けていた。

コンサートが突然の暗転から始まると、それはまるで光の洪水。1曲ごとに赤、青、黄、白、紫と、ライティングの基調色が変わり、その中でヒッキーが伸び伸びと泳ぎ回る。楽しそうなヒッキーの表情が印象的だ。手拍子でノリノリの「traveling」では観客にサビの“traveling”の部分を歌わせフェイクを自由自在に操る。やはり5日間の最終公演ということで多少声がかすれてきているが、そのかすれ方が絶妙で、特にしっとりとした「Letters」や「Can You Keep A Secret?」では中音域から高音域に移る時の艶っぽさにジビれてしまう。

確実に上手くなっている。それはデビュー6年目に入って、歌うこと自体が上手くなっているのはもちろん、楽曲が彼女の中で十分に咀嚼されてきているからだろう。「SAKURAドロップス」での感情豊かな歌唱は、ベテランアーティストのそれと見まごうばかりの表現力だ。艶やかにこちらの全身をまったりと包み込んでくれる声はものすごく気持ちが良い。ビデオが流れて一旦彼女が退場し衣装を着替えて再登場。ここからのファンクっぽい曲やアップテンポの曲では、会場の拍手とともにヒッキーもノリノリ。ファルセットの声が良いカンジで響く。

そして「COLORS」「Deep River」というヒット曲では、バックバンドの音を凌駕するほどのヒッキーの声の存在感に圧倒される。低音、中音、高音、そしてファルセットと、彼女の声は音域によって明らかにトーンが変わる。それぞれが違った響きで、違った艶やかさを持っているのだ。声というものに、こんなに魅了されるのは滅多にない経験だ。

最終日、MCはほとんどない。途中で何度も喋ろうとするのだけど、胸が詰まって言葉にならない。客席と一体になれた感慨、5日間を戦い抜いた満足感、自分を温かく迎えてくれたファンへの感謝など、いろいろな思いが胸をかすめているのだろう。言葉を発せずに黙り込んでしまうヒッキーを客席の誰もが好意的に受け入れ、彼女の万感の思いを賛美するかのように拍手を送る。ヒッキーと観客の温かい関係性が武道館を包み込み、お互いが気持ちの良い場に居合わせている幸せを噛みしめている。

アンコールの「幸せになろう」では、曲間で泣いてしまって歌えなくなり、また最初からやり直すというハプニングも、この夜のヒッキーの満足度と感激度をよく表わしている。そして本人曰く「珍しく明るい曲」だという「B&C」で武道館5デイズは幕を閉じた。立ち去りがたくステージに残って観客の皆に挨拶するヒッキーの姿は、3年半ぶりのコンサートを大成功に収めた満足感と、観客への感謝の気持ちに溢れ、こちらも胸がジーンとなってしまった。

スタジアム級の会場よりも音が安定していて息遣いまで聴くことができ、また歌う姿をスクリーンではなく肉眼で見られる武道館を選んだことは大正解。ヒッキーを身近な存在と感じられればこその一体感があった素晴らしいコンサートだった。ヒッキーの声は、皆を温かく包み込んでくれる。そんな心地よさがあった。

取材・文●森本智

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