MAGIC ROCK OUTライヴ・レポート【後編】 イギーの迫力に感動
そして、今回の再注目アクトのはストゥージズ! イギー・ポップ率いるデトロイト出身のこの伝説のバンドがもし存在していなかったならば、グラム・ロックもパンクも、グランジ・ロックも、ホワイト・ストライプスも果たして今のように存在していたかどうか……。商業的成功も一般知名度も高くはないものの、間違いなく今後のロック史にも燦然と輝き続けるこのストゥージズが30年の沈黙を破ってついに再結成! しかもそれが、これまでストゥージズ伝説の免疫が比較的薄かったここ日本で実現されるとは!なんともうれしい話である。
そしてその輝きは微塵も衰えてはいなかった。いつものことではあるのだが、イギーは筋骨隆々の体をしなやかに曲げ、スタンドからハンドから、マイクを自分の体の一部のように操る名人芸を披露。その素早さだけでもとても55歳を超えた人間のワザとは思えないのだが、彼はこれに加えて客席に自らダイブを敢行するは、ステージに青年たちを何10人もあげるはの、何でもやりたい放題。しかもそれでいて、歌は決して乱暴にならず、低い声で朗々とセクシーに歌い上げるのだから、本当に恐れ入る。バックの4人の演奏陣も決して上手くはなかったものの、エッジの立った生々しいパンク・ロック本来のグルーヴを表現出来ていた。このパワーを前にキッズたちはたちまち魅了されっぱなしだった。
このストゥージズの興奮が覚めやらぬうちに登場したのは、この日のメイン・アクト、プライマル・スクリーム。変幻自在にサウンドを進化させることで知られる彼らだが、その根っこにはストゥージズのようなガレージ・ロック魂のある連中。そんな彼らが御大の勇姿の直後にどんなステージを見せるのか注目された。
内容としては、ここ数年の彼らのライヴ同様、7人ほどの編成から、ガレージもエレクトロもヘヴィなダンス・グルーヴも何でも自在のサウンドを繰り出し、“らしさ”は表現していたとは思う。ただ、やはりイギーのことを意識してか、通常よりはロックンロール・モードでやや飛ばし過ぎな印象もあり、ややバランスを崩し気味だったのが気になった。しかもそれでいながら、選曲がベスト盤仕様のものであったことにもやや疑問も残った。
今回のライヴは彼らにとってはプロモーションは抜きの企画性の強いライヴだったはず。それならばもっとロック色の強いものをやるか、それとも変にロックンロールを意識せずに、いつも通りのライヴをやっても良かったのではないか。ストゥージズのライヴが圧倒的過ぎただけに、余計に消化不良な観は正直否めなかった。
この時点で、既に時間は午前3時過ぎ。観客の数はこの辺りからまばらとなり、UKロックの若手バンドのサウスや、浅井健一率いるJUDEの頃には時間も時間ということもあってか、観客の数はかなり寂しいものになっていた。特に4時30分頃に登場したJUDEは熱のこもったライヴを披露していただけに、その時間帯の深さが気の毒にも思えた。フェスの内容自体は興味深くはあったものの、もう少しアクトの数を絞って密度を上げたフェスにしても良かったのではないか。そんな気もする。それには“ロックンロール”という言葉の定義をもっと絞り込むべきだったと思う。目玉がストゥージズならストゥージズで、それに見合ったアクトで固めていれば、フェス全体がもっと締まったものになったのではないか。ストゥージズをはじめ、収穫あるアクトも目立っただけに、なおさらそう思わずにはいられなかった。
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取材・文●沢田太陽
そしてその輝きは微塵も衰えてはいなかった。いつものことではあるのだが、イギーは筋骨隆々の体をしなやかに曲げ、スタンドからハンドから、マイクを自分の体の一部のように操る名人芸を披露。その素早さだけでもとても55歳を超えた人間のワザとは思えないのだが、彼はこれに加えて客席に自らダイブを敢行するは、ステージに青年たちを何10人もあげるはの、何でもやりたい放題。しかもそれでいて、歌は決して乱暴にならず、低い声で朗々とセクシーに歌い上げるのだから、本当に恐れ入る。バックの4人の演奏陣も決して上手くはなかったものの、エッジの立った生々しいパンク・ロック本来のグルーヴを表現出来ていた。このパワーを前にキッズたちはたちまち魅了されっぱなしだった。
このストゥージズの興奮が覚めやらぬうちに登場したのは、この日のメイン・アクト、プライマル・スクリーム。変幻自在にサウンドを進化させることで知られる彼らだが、その根っこにはストゥージズのようなガレージ・ロック魂のある連中。そんな彼らが御大の勇姿の直後にどんなステージを見せるのか注目された。
内容としては、ここ数年の彼らのライヴ同様、7人ほどの編成から、ガレージもエレクトロもヘヴィなダンス・グルーヴも何でも自在のサウンドを繰り出し、“らしさ”は表現していたとは思う。ただ、やはりイギーのことを意識してか、通常よりはロックンロール・モードでやや飛ばし過ぎな印象もあり、ややバランスを崩し気味だったのが気になった。しかもそれでいながら、選曲がベスト盤仕様のものであったことにもやや疑問も残った。
今回のライヴは彼らにとってはプロモーションは抜きの企画性の強いライヴだったはず。それならばもっとロック色の強いものをやるか、それとも変にロックンロールを意識せずに、いつも通りのライヴをやっても良かったのではないか。ストゥージズのライヴが圧倒的過ぎただけに、余計に消化不良な観は正直否めなかった。
この時点で、既に時間は午前3時過ぎ。観客の数はこの辺りからまばらとなり、UKロックの若手バンドのサウスや、浅井健一率いるJUDEの頃には時間も時間ということもあってか、観客の数はかなり寂しいものになっていた。特に4時30分頃に登場したJUDEは熱のこもったライヴを披露していただけに、その時間帯の深さが気の毒にも思えた。フェスの内容自体は興味深くはあったものの、もう少しアクトの数を絞って密度を上げたフェスにしても良かったのではないか。そんな気もする。それには“ロックンロール”という言葉の定義をもっと絞り込むべきだったと思う。目玉がストゥージズならストゥージズで、それに見合ったアクトで固めていれば、フェス全体がもっと締まったものになったのではないか。ストゥージズをはじめ、収穫あるアクトも目立っただけに、なおさらそう思わずにはいられなかった。
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取材・文●沢田太陽
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