天才ピアニスト・紀平凱成(カイル)18歳。息子の夢に寄り添い続けた母が綴る珠玉のエッセイ『カイルが輝く場所へ ~発達障害のわが子がピアニストとして羽ばたくまで』

株式会社NHK出版



両親がともに学生時代から音楽をたしなんでいたこともあり、カイルさんは楽器に囲まれて育ちました。
物心つく前から一度聞いた音を即座に再現できるなど、絶対音感と驚異的な記憶力をもつ一方で、言葉の遅れや強いこだわりなど、気がかりなことも多かったといいます。

自閉スペクトラム症と正式に診断されたのは3歳のとき。
両親は障害をひとつの個性と受け止めて多くのことにチャレンジさせました。いつしかカイルさんはピアニストになる夢を抱き、母・由起子さんはその夢をかなえるために寄り添い続けます。しかし、その道は決して平坦なものではありませんでした。
思春期を迎えるころから聴覚過敏に視覚過敏が加わり、外出はもちろんのこと、自分が弾いた音に反応してピアノの練習もままならなくなります。
由起子さんは絶望を味わい、夢をあきらめかけますが、カイルさんはピアノに向き合い続けます。
そして多くの困難を乗り越えたカイルさんは、2019年春、18歳のときにホールデビューを果たし、ピアニストとして歩みだしました。

[動画: https://www.youtube.com/watch?v=v25fYbS2F0M&feature=youtu.be ]



本書は、自閉症と診断されたわが子がピアニストとして羽ばたくまでの道のりを母の視点で丁寧に振り返り、涙あり笑いありのエピソードで構成されています。
親子は数々の困難をどうはねのけ、喜びを共有してきたのか──。多くを語らない息子に代わって、そばで見守り続けてきた母が、ピアニストとして羽ばたくまでの道のりを丁寧に振り返る感動作です。


今回、本書『カイルが輝く場所へ ~発達障害のわが子がピアニストとして羽ばたくまで』より、「はじめに」を公開します。

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2019年2月ごろだったでしょうか。息子・紀平カイルに関する出版のお話をいただいたとき、「おこがましい」といった気持ちが先に立ちました。
わが家のプライベートな話を好んで読んでくださる方など、はたしているのだろうか――。そう感じる一方で、カイルのことをひとりでも多くの方に知っていただけるのなら、とてもありがたい機会だとも思いました。
それであれば親子のいい話ばかりではなく、これまで心のうちに秘めていた負の感情も含めて思い切ってさらけ出すことにしました。
本書を手にとってくださるのはどのような方でしょう。音楽が好きな方、ピアノを演奏する方、あるいは発達障害や成長に凸凹があるお子さんをもつ親御さんでしょうか。
わたし自身、アーティストでもなければ、発達障害について語ることのできる医師でもありません。ひとりの母親です。ですから、読者のみなさんに専門的な情報をお伝えできるとは思えませんが、障害のありなしにかかわらず、目の前の壁を乗り越えようとしている方たちに、小さな勇気を届けられたら望外の喜びです。
このあと順にお話ししていきますが、学生のときから音楽をたしなんでいたわたしたち夫婦の影響で、カイルのそばにはいつも音楽がありました。おなかにいるときからいろいろな国の音楽を聴いて育ったカイルは、物心がついたころから父親のまねをしてドラムをたたき、気づくとわたしのエレクトーンを鳴らして遊ぶようになっていました。
そんなカイルが、ある日「ピアノを弾く人になる」と言うのを聞いてから、わたしはその夢に向けていっしょに走ることに決めました。
「カイルくんはいいわね。できることがあって」
自閉症と診断されたあと、同じく障害があるお子さんの親御さんからそう言われたことがあります。そのときは少しだけ傷ついて、カイルにだってできないことが山ほどあるのに、と思ったのを覚えています。
しかし、中学生になって生活が困難なほど感覚過敏がひどくなり、心の支えだったピアノが弾けなくなったとき、その人の気持ちがようやく理解できました。人生に音楽という支えがあるカイルは、とても恵まれています。
そして現在、新人ピアニストとして歩み始めたのは、いくつもの幸運な出会いと周囲の多大なサポートがあったからだと実感しています。
本書では、カイルが生まれてから18年の月日を振り返りながら、わたしたち親子を支えてくださった方たちへの感謝の気持ちをつづっていきたいと思います。

(『カイルが輝く場所へ ~発達障害のわが子がピアニストとして羽ばたくまで』「はじめに」より)

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なお、2月28日(金) NHK総合テレビ「首都圏情報 ネタドリ!」(19:30~19:57)において、「異才の障害者アーティスト」として紹介される予定です。あわせてご覧ください!
※ 放送は変更(放送日変更)となることがあります

https://www4.nhk.or.jp/netadori/x/2020-02-28/21/8195/1503299/

[画像1: https://prtimes.jp/i/18219/176/resize/d18219-176-835507-1.jpg ]

【紀平凱成プロフィール】
2001年、紀平延久・由起子夫妻の長男として福岡に生まれる。音楽好きの両親の影響で幼少期より楽器に囲まれて育つ。2017年16歳で英国トリニティ・カレッジ・ロンドンの検定試験に100点中97点という高得点で合格し、これまで数人にしか与えられていない奨励賞を受賞。翌年、同カレッジの学士資格を取得。2018年全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会ピアノ部門審査員賞受賞。同年、日本クラシック音楽コンクール全国大会入賞。2019年4月にホールデビュー、同年10月にCDデビューをはたす。東京大学先端科学技術研究センターと公益財団法人日本財団の「異才発掘プロジェクト」第1期ホームスカラー。メディアで生い立ちや音楽活動が紹介されて大きな話題となる。

紀平凱成公式ホームページ https://kihirakyle.com/


【内容構成】

第1章カイルの誕生
母親になる
音楽が好きな子に
イルカのカイル
喜びの曲「さくら」
ふしぎなカイル

第2章自閉症と診断されて
スペシャルないちご
絶望
わたしたちが知らない世界
ミス・ヨーコの魔法
熱血先生との出会い
天から与えられた力「ギフテッド」
初めての発表会
小学校入学時の迷い

第3章「ピアニストになる」

ぴかぴかの1年生
「ピアノを弾く人になる」
父と息子
空中書き
カイルの成長
コンクールに挑戦

第4章ピアノが弾けなくなる?!

聴覚過敏の始まり
笑いにかえて
中学生になる
人の力を借りること
失望と後悔
家で事件とノブ
閉じこもるカイル

第5章夢のスタートライン

カプスーチンの音楽
一期一会
ピアノ検定に挑戦
ふたりの背中
奇跡のソロリサイタル

第6章自立のとき

カイル、倒れる
羽ばたけカイル
親離れ、子離れ
ひいおばあちゃんの死
ピーター・パン

おわりに


[画像2: https://prtimes.jp/i/18219/176/resize/d18219-176-408522-0.jpg ]



『カイルが輝く場所へ ~発達障害のわが子がピアニストとして羽ばたくまで』

著者:紀平由紀子
仕様:四六判並製 196ページ(内カラー4ページ)
発行:2020年2月21日
定価:本体1,300円+税
ISBN:978-4-14-081811-4
出版社:NHK出版

詳細・購入はこちら↓
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818112020.html


【(著者)紀平由紀子プロフィール】
1971年生まれ、岐阜県出身。大学卒業後、メーカー勤務のかたわら、シンガーソングライターを目指す。出産を機に子育てに専念。凱成氏が小学校の特別支援学級に在籍時、ボランティアで読み聞かせ活動を始める。その後、図書館司書の資格を取得。現在、ピアニストとして活躍する凱成氏の音楽活動をサポートしている。

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