ついに登場、『ストーンズ-ライヴ・イン・リーズ 1982』が重要なわけとは?

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話題騒然の『ストーンズ-ライヴ・アット・ザ・トーキョー・ドーム 1990』に続くローリング・ストーンズのアーカイヴ映像シリーズ“From The Vault”の第5弾作品『ストーンズ-ライヴ・イン・リーズ 1982』の11月11日、日本先行発売が明らかとなった。

◆『ストーンズ-ライヴ・イン・リーズ 1982』画像

『ストーンズ-ライヴ・イン・リーズ 1982』は、1982年ヨーロッパ・ツアーのファイナル・コンサートにして、ピアニストのイアン・スチュアートが参加した最後のストーンズのライヴである。

この時期の青空の下での野外コンサートと言えば、映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』で捉えられた前年のアリゾナ州テンピのサン・デヴィル・スタジアムでのコンサートのことを思い起こすファンが多いと思うが、こちらはその時の2倍以上、一説によると約15万人を集めたとも言われる巨大コンサートだ。複数アーティストの名前が並ぶフェスティヴァルやフリー・コンサートを除けば、この当時ストーンズのライヴ史上でも最大規模のもので、そこでにこやかにピアノを弾くイアン・スチュアートの雄姿もアップで捉えられている貴重な映像である。

イアン・スチュアートとは、ストーンズ成立時のピアニストであり、デビュー時のマネージャーの指示によってロード・マネージャーに格下げとなりながらも、そのブルース/R&Bへの深い愛情でその後も長くグループの精神的支柱でもあったことは、ストーンズ・ファンにはよく知られているところ。そんなスチュは、このコンサートの後、ストーンズがツアーを休止中の1985年に心臓麻痺で亡くなっている。1982年のこのステージが彼の最後のストーンズ・ギグとなってしまったわけだが、まるで自分の身に起こる悲劇を予感していたかのように、生前、自分の後継者となるべき人材を探し出し、自分が持っているブギ・ウギ・ピアニストとしてのスキルやブルース/R&Bの知識を継承しようと務めていた。その「人材」として白羽の矢が立てられたのがオールマン・ブラザーズ・バンド~シー・レヴェルのキーボーディストだった米国人チャック・リーヴェルで、このコンサートの映像では二人が一台のピアノに仲良く座って連弾でブギ・ウギ・ピアノを弾くという、見方によればストーンズ史的にも重要な意味を持つ感動的なシーンが含まれている。このチャックがその後、スチュの期待通り、サポート・ミュージシャンとしてずっとストーンズを支え続けていることはご存じのとおりだ。

1982年7月25日、英ウェスト・ヨークシャー州のリーズにあるラウンドヘイ・パークで開催されたこのコンサートがフルで映像作品になるのは、もちろんこれが初めてのことだ。しかし、古くからのストーンズ・ファンはごく断片的にであるが、この時の映像を目にしている可能性がある。それは1984年にリリースされたプロモーション・ヴィデオ集『VIDEO REWIND』(日本で最初に発売された時の邦題は『ザ・ローリング・ストーンズ/グレート・ビデオ・ヒット』)の中で、この時の映像が少しだけ使われていたからだ。主人公のビル・ワイマンがミック・ジャガーと寸劇めいたやりとりを広げながら次々とヴィデオを紹介していくこの作品の最後に、1981年~'82年の各所で撮られた映像が組み合わせられた「スタート・ミー・アップ」の演奏シーンがあったのだが、その中で青空をバックにストーンズのメンバーがもっと躍動しているように見え、当時のファンを驚かせたのがこの1982年のリーズの映像だったからだ。

同じ『刺青の男(Tattoo You)』ツアーではあるものの、ふたつの公式映像がリリース済み、ライヴ・アルバム『スティル・ライフ』でもその様子を知ることができた1981年北米ツアーとは違い、1982年の映像作品が正式公開されるのはこれが初めて。当時、日本のテレビ朝日の取材チームが「ベスト・ヒット・USA」のために撮ってきた、ロンドン・ウェンブリー・スタジアム公演のオープニング・シーンの映像を食い入るように見ていた世代としては、1982年のストーンズがフルで見られる、というだけで嬉しくなってしまうはずだ。

「アンダー・マイ・サム」に始まり「サティスファクション」で終わる前年の北米ツアー後半に固まったセット・リストが大筋で継承されてはいるが、大ヒット・バラード「悲しみのアンジー」が採り上げられていたり、キーボードが前年のイアン・マクレガンからそのチャック・リーヴェルに、サックス奏者がアーニー・ワッツからジーン・バージに変更となっており、一部の曲のアレンジも変更になっているなど資料的にも意義深いリリースとなる。それ以上に注目されるのは、公式ブートレグとしてこのコンサートの音源が “Stones Archive”から2012年に有料配信が開始された時に大いに話題になった、ストーンズとしては異色なほどのハイ・テンポの演奏という部分かもしれない。なお、同アーカイヴのサイトでは、この配信音源のプロモーションのために用意された、このリーズ公演のダイジェスト映像も見ることができる。

ストーンズ・ファンにとって「リーズ」でのライヴと言えば長く、今年『スティッキー・フィンガーズ』のスーパー・デラックス・エディションのボーナスとして公式フル・リリースされた'71年のリーズ大学のライヴを指すことが多かったはずだが、ストーンズ史を彩るもうひとつの「リーズ」ライヴとして、また'69年からギタリスト変更も挟んでコンスタントに続いてきた中期ストーンズのライヴ・バンドとしての躍進の時代を締めくくる巨大規模ライヴとして位置づけられるこのスペシャルなコンサートの「目撃者」になれる日は、もうすぐだ! 今回も長編解説書きます。

寺田正典


【ミュージシャン】
ミック・ジャガー(ヴォーカル)
キース・リチャーズ(ギター)
ビル・ワイマン(ベース)
チャーリー・ワッツ(ドラムス)
ロニー・ウッド(ギター)

【サポート・ミュージシャン】
イアン・スチュアート(ピアノ)
チャック・リーヴェル(キーボード/バッキング・ヴォーカル)
ジーン・バージ(サックス)
ボビー・キーズ(サックス)

『ストーンズ - ライヴ・イン・リーズ 1982』ザ・ローリング・ストーンズ

11月11日日本先行発売
【500セット完全限定生産Blu-ray(or DVD)/2CD+3LP+Tシャツ+復刻パンフ】19,800円
【500セット完全限定生産SD Blu-ray/2CD+Tシャツ(Lサイズのみ)】10,000円
【500セット完全限定生産DVD/2CD+Tシャツ(Lサイズのみ)】9,000円
【初回生産限定盤SD Blu-ray/2CD】7,000円
【初回生産限定盤DVD/2CD】6,000円
【通常盤SD Blu-ray】5,000円
【通常盤DVD】4,000円
*価格は全て税抜
【SD Blu-ray/DVD収録予定曲】*CDは2枚組/LPは3枚組で収録予定
1.イントロダクション:A列車で行こう
2.アンダー・マイ・サム
3.ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン
4.夜をぶっとばせ
5.シャッタード
6.ネイバーズ
7.黒いリムジン
8.ジャスト・マイ・イマジネーション
9.トゥエンティ・フライト・ロック
10.ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー
11.レット・ミー・ゴー
12.タイム・イズ・オン・マイ・サイド
13.ビースト・オブ・バーデン
14.無情の世界
15.リトル T & A
16.悲しみのアンジー
17.ダイスをころがせ
18.氷のように
19.ハング・ファイアー
20.ミス・ユー
21.ホンキー・トンク・ウィメン
22.ブラウン・シュガー
23.スタート・ミー・アップ
24.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
25.サティスファクション
【仕様(予定)】
収録時間:約132分
画面サイズ:
SD Blu-ray 16:9 *Blu-ray映像はSD素材をアップコンバートしたSD-Blu-ray仕様となります
DVD 4:3
音声仕様:
SD Blu-ray リニアPCMステレオ / DTS HDマスターオーディオ
DVD ドルビーデジタル・ステレオ / ドルビーデジタル 5.1サラウンド / DTSサラウンド・サウンド
日本語字幕付き /日本語解説書封入

◆『ストーンズ - ライヴ・イン・リーズ 1982』オフィシャルページ
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