【機材レポ】B'z、アルバム『DINOSAUR』RECサウンドシステム「また変わりたい」

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B’zが11月29日、20thオリジナルアルバム『DINOSAUR』をリリースした。前アルバム『EPIC DAY』から約3年ぶり、デビュー30周年のアニバーサリーイヤーに届けられる『DINOSAUR』には全13曲を収録。そのレコーディングスタジオには、過去から現在まで、松本孝弘が使用してきた数々のギター&アンプが一斉に並べられたという。「あれ、ファンの人が見たら鼻血出ますよ」とは、カッコよくて壮観だったというスタジオの様子を振り返った稲葉浩志の弁だ。

◆松本孝弘REC機材 画像

「いつも曲ごとにギターは何本も試しますけど、今回はアンプもいっぱい並べてベストなマッチングを探してやりました。そういう気分だったんですよね。ここのところギターサウンドも安定してきていて、アンプもここのところ毎回同じだったから。それもつまんないなと思いまして(笑)」──松本孝弘

結果、スタジオには約30本のギターをはじめ、B'zの過去の作品で使用されたアンプも勢揃い。以前からのB'zファンにとって懐かしいものも多分に含まれている。そして、「また、変わりたいなと思っていたんだよね」という松本孝弘の飽くなき探求心と向上心は、ダイナソーが唸りを上げるような太く強靱なサウンドを生み出した。

「ギターダビングはいつものLAではなく、日本をメインに行おうと思った」という松本の希望は、“自身の機材がふんだんに用意できる”という理由によるところも大きい。ギターテクニシャン曰く、「ここ最近は使っていない、倉庫に保管していたものを引っ張り出して、使える状態にするところからレコーディング準備が始まりました」とのことだ。後述するが、フェンダーの1962年製ストラトキャスターや1952年製テレキャスターは、まさに久々の登場であり、今回のレコーディング方法が再び呼び覚ましたギターだということもできるだろう。

エレキギターやアコースティックギターを含め、レコーディングで実際に使用されたギターは全18本。TAKモデルを含むレスポール、SGシェイプ(1961年製レスポールスタンダード)、フライングV、ES-335、TAK MATSUMOTO FIREBIRDといったギブソン製や、フェンダー製ストラトキャスターやテレキャスターといったトラディショナルなスタイルを持つモデルが多い。興味深いのは、1959年製のオリジナルレスポールとそれを基に製作されたTAK MATSUMOTO 1959 LES PAUL、1957年製のオリジナルレスポールゴールドトップとそのリイシューが使い分けられている点だ。「レコーディングのときにワンフレーズ試して、良かったほうを採用するというセレクト方法はいつも通りです」(ギターテクニシャン)とのこと。つまり、ヴィンテージとリイシューが直接対決を行って、結果、オリジナルではなくリイシューが選択される場面もあったという。

「ヴィンテージだけがすごくいいわけではなくてね。もちろんすごく良いんだけど、それも使いながら今のものも使いながらやっていきたいよね」──松本孝弘

また、アーニーボールミュージックマン製AXIS、アイバニーズの7弦ギター、フリーダムカスタムギターリサーチのサスティナー搭載TAKプロトなど、多種多様なギターがバランス良くセレクトされ、それらを適材適所に用いて『DINOSAUR』サウンドを構築。アンプとのマッチングを含めれば、とんでもない数の組み合わせとなるが、もちろんレコーディング前に音色イメージは固まっており、そのイメージの中から数パターンが試されたとのことだ。

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【GUITAR編】


▲<Gibson TAK MATSUMOTO 1959 LES PAUL>
収録全13曲中6曲で使用されたギターがGibson TAK MATSUMOTO 1959 LES PAULだ。ソロアルバム『enigma』を掲げて行われたツアー<Tak Matsumoto Tour 2016 -The Voyage->にて初登場した同モデルは、松本自身が所有している1959年製のレスポールを採寸/計量し、フォルムやスペック、経年変化によるキズやクラックなどのルックスまで細部にわたって再現されたもの。また、ピックアップの電圧を計測して1959年製にマッチさせるなど、1959年製オリジナルの現在の状態を再生させたモデル。

『DINOSAUR』レコーディングでは「Dinosaur」「CHAMP」「Still Alive」「声明」「弱い男」「Purple Pink Orange」で使用。ちなみに「声明」レコーディングはTAK MATSUMOTO 1959 LES PAULのみで行われたもの。そのファットなサウンドの隅々まで堪能できる。


▲<Gibson Les Paul Standard 1959 #9-1156>
アルバム『The 7th Blues』(1994年)のレコーディングで初登場した1959年製レスポールは、ヴィンテージならではの枯れたトーンが深い味わい。前出のTAK MATSUMOTO 1959 LES PAULは、この1959年製オリジナルを再現したものだが、「TAK MATSUMOTO 1959 LES PAULのほうがローがあると思います。同じようにつくっても木材の乾燥状態が異なるので、1959年製オリジナルはやっぱり乾いた音がする」(ギターテクニシャン)という特性を個々に持つ。

『DINOSAUR』レコーディングでは「ハルカ」「それでもやっぱり」「弱い男」「King Of The Street」「Purple Pink Orange」の5曲で使用。「Purple Pink Orange」ではLes Paul Standard 1959 #9-1156とTAK MATSUMOTO 1959 LES PAULの共演が実現している。


▲<Gibson Les Paul Gold Top 1957 #7-3956>
アンディ・サマーズ (The Police) が前オーナーだったという1957年製ゴールドトップ。レスポールは1957年からP-90に代わってハムバッキングピックアップが搭載されており、同ギターはまさにその最初のモデルとなる。2002年頃に入手したもので、ソロアルバム『House Of Strings』(2004年)のレコーディングでも活躍した。

『DINOSAUR』レコーディングでは「ハルカ」にて使用。同曲ではLes Paul Standard 1959 #9-1156も使用しており、1957年製と1959年製といった2本のヴィンテージギターが表情豊かなトーンを響かせている。


▲<Gibson Les Paul Gold Top 1957 Reissue 1991 #1-8283>
Gibson Les Paul Gold Top 1956 P-90 #615315のメンテ中に入手した1991年生産の1957年製ゴールドトップリイシュー。ツアー<B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS ->や<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->でも使用されており、前出のTak Matsumoto 1959 Les Paulと比較すると、「ジャキジャキしたサウンドが特徴」(ギターテクニシャン)とのことだ。ピックアップカバーやピックガードを取り外したルックスも印象的。

『DINOSAUR』レコーディングでは「ルーフトップ」にて使用。同曲のエレキギターサウンド(※Electric Sitarを除く)は、すべてこのギターでレコーディングされている。


▲<Gibson Les Paul Standard 1961 #15712>
SGシェイプの同モデルは1961年の開発当初、レスポールと呼ばれていたSG最初期のもので、トラスロッドカバーには“Les Paul”の刻印が施されている。松本孝弘生まれ年のこのギターは、<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->で使用されて以降、ソロアルバム『enigma』やTak Matsumoto & Daniel Hoのアルバム『Electric Island, Acoustic Sea』レコーディングでも重宝されている。

『DINOSAUR』レコーディングでは「SKYROCKET」にて使用。


▲<Gibson Flying V Korina 50th Anniversary 2008 #8-8163>
前出のGibson Les Paul Standard 1961 #15712同様、<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->で使用されて以降、ライブやレコーディングで大活躍。『DINOSAUR』のアーティスト写真で松本孝弘が手にしているのもこのギターだ。自身の長いキャリアの中で初購入となったフライングVは、コリーナ材を使用したフライングVが1958年に発売されてから50年後の2008年に100本限定で生産されたアニバーサリーモデル。

『DINOSAUR』レコーディングでは「Dinosaur」のIntroduction部分で使用。ギターテクニシャン曰く、「通常のフライングVから想像するいなたいサウンドとは少し異なり、イメージとしてはハイ域が強い派手なサウンド」の本領を発揮した。


▲<Gibson TAK MATSUMOTO Firebird Vintage Sunburst prototype #1>
ファイヤーバード・スタイルのボディにレスポールのヘッドストックを採用したTak Matsumotoオリジナルモデル。同モデルにはTrans Black BurstやRed prototype #2などのカラーバリエーションが存在するが、Vintage Sunburst prototype #1はソリッドな音色が特徴だ。

『DINOSAUR』レコーディングでは「Still Alive」「SKYROCKET」「King Of The Street」にて使用。


▲<Gibson ES-335>
アルバム『TAKE YOUR PICK』(Larry Carlton & Tak Matsumoto / 2010年)で共演したラリー・カールトンからプレゼントされたというES-335。タバコサンバーストのボディーカラー、ネックバインディングやスモールブロックインレイ、ロッドカバーに“Mr.335”の刻印が施されたラリー・カールトン・モデルだ。

『DINOSAUR』レコーディングでは「Queen Of The Night」にて使用。レコーディング当日の朝、マネージャーのもとに「ES-335を持ってきてほしい」との連絡があったそうで、そのイメージ通りの甘いクランチトーンが収録されている。

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