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前作『VALENTI』のツアーから1年、大ヒット中の最新アルバム『LOVE & HONESTY』を引っさげ、BoA2度目のライヴ・ツアー<BoA
LIVE TOUR 2004 -LOVE & HONESTY->が開催された。全国5ヶ所、9公演で約10万人を動員とトップ・アーティストとして堂々たるもので、本公演も本来最終公演のはずだったが、即完売のため追加が4/18(日)に行なわれている。
開演するとHONDAのヒューマノイド・ロボットASIMOがステージに登場し挨拶する。その後巨大なUFOのセットが登場した。ロボットにUFOという、’80年代的な近未来感覚は、トレバー・ホーン(元イエスのメンバー。現在プロデューサーとして活躍。t.A.T.u.を手がけたことでも有名)が元祖と言われるオケ・ヒット(オーケストラが一斉に音を鳴らすこと。「DOUBLE」や「VALENTI」のサビやサビ前でジャン、ジャン、ジャンと鳴るあれ)を多用する彼女のサウンド・スタイルに奇妙にマッチする。
そして、UFOの中で白雪姫のように眠るBoAがベッドに横たわったまま歌い始めたオープニング・ナンバーは「DOUBLE」だ。前半では低音の効いたビートの上で切ない歌詞を歌い上げ、転調したサビではオケ・ヒットを連発。3rdアルバム『LOVE
& HONESTY』の中でもかなりBoA節といえそうな“らしい”ナンバーだ。UFOのセットの陰にはフル編成の生バンドが控えているものの、オケ・ヒットやシーケンスも原曲に忠実に再現されており、アルバムの持つ雰囲気を大切にしたものだった。一気に横浜アリーナ全体がステージに引き込まれるように感じる。ここから「奇蹟」「EXPECT」を一気に歌うとMCへ。去年はホール・ツアーだった。今年はアリーナ・ツアーができるのはみなさんのお陰と感謝の気持ちを伝える。
中盤の見せ場はなんと言っても2ndシングル「Amazing Kiss」。情感たっぷりに歌い上げる。当時14歳だった彼女の歌唱力に驚かされたものだが、横浜アリーナを即完させ、満員のオーディエンスを前に楽しそうに歌う17歳のBoAにはもはやゆとりさえ感じられる。

衣装チェンジした「Rock with you」はかなりライヴ栄えのするナンバーだった。CDで聴いた際にはアグレッシヴなギターがややラウド過ぎると感じたのだが、オープンな空間では音のキツい部分が中和され、逆にサウンドのダイナミックさがBoAの激しいロック・スタイルのヴォーカルにマッチし、純粋にかっこよくなっていた。「Be
the One」ではピンクのテープを巻いた黒い衣装は照明が落ちると暗闇に浮かび上がり、そこでダンスと視覚的に非常に面白い。このほかにも7色の髪に変身したり、衣装も7パターン用意され(ミニスカ姿も披露!)、リアルなセット、スクリーン、CGを巧みに使いこなした演出で楽しませてくれる。
そしてクールにダンスを繰り広げるダンサーたちは、単なるコンサートという枠を越えた、まるでミュージカル映画を見ているようなエンターテインメントだった。「Shine
We Are!」では自然と笑顔になってしまい、「VALENTI」では曲の良さもさることながら、ステージいっぱいに上がった火花にドギモを抜かれた。またBoAの17歳とは思えない表現力に驚かされる。生演奏されたイントロのギターも最高にかっこよかった。やがて「JEWEL
SONG」でいったん本編を終えるとアンコールに。アンコール1曲目はMONDO
GROSSOとコラボーレートした「Everything Needs Love」。どちらかというとクラブで掛かりそうな打ち込み系の曲だが、横浜アリーナでも会場の広さに負けずクールに響き渡った。さらに2曲目のm-flo
loves BoAの「the Love Bug」演奏。なんと飛び入りゲストでVERBAL本人が参加。軽妙なラップを聴かせてくれた。
アンコールも終えたラストのMCでは「うふふ、楽しかった! ありがとうございました。カムサムニダ!」とキュートに挨拶して締めた。それがお決まりの挨拶ではなく、本当に楽しそうな「うふふ」だったから、こちらも楽しくなってくる。この音楽への、ファンへの姿勢こそが、彼女の人気の理由なのかもしれない。
激しいダンス、ゴージャスな視覚効果、映画のような展開……彼女の目指すステージがジャネットやブリトニーのそれだとするならば、確実にそこに近づいているだろう。また、彼ら米ダンス・ヴォーカルのアーティストたちがゴシップ記事やセクシーさで話題作りをしていることと比較すると、年齢差もあるだろうがダンスのスキル、歌の良さという歌手としてのベーシックな部分で勝負をするBoAはシャイな日本人、アジア人向けのスターとも言え、先日のMTV
ASIA AWARDで日韓両国の代表に選ばれたことでも分かるように日本ばかりでなくアジアを代表するポップ・アイコンと呼んでも過言ではないだろう。
これから韓国に戻り、母国での4thオリジナル・アルバムの制作に入る彼女。まだ17歳だけにどんな成長を見せるかは未知数だ。
取材・文●末吉靖永
写真●川田洋司
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