3年振りのニュー・アルバム「ハヴ・ア・ナイス・デイ」に込められたメッセージとは?

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ジョンコメント映像

――デビュー20周年おめでとうございます。20年といえば、生まれた子供も成人になるだけの年月ですが……。

ジョン・ボン・ジョヴィ(Vo/以下、ジョン):ここまで先のことは考えたことなかったよ。そんなの無理だったね。あったとしても、「うわっ、2000年かあ。家ぐらいは持ってるかもな。その頃には俺も38才だし」なんて程度だったと思うな。自分のキャリアについては考えてなかった。すべておしまいってことになるとは思ってはいなかったけど、やっぱり、ここまで先のことはそもそも考えにも及ばなかったよね。こんなに成功してビッグになってさ。楽しい夢を見てるような気分。だから起こさないでおいてくれよ。

――これまで、ここまでの人気を博してきたのにはどんな理由があると思いますか?

ジョン:正直、唯一俺らが心がけてきたのは、自分たちの音楽に誠実でいようってことだね。何か流行ると、成功するためにはそのトレンドを追わなきゃ、って思う人もいるけど、俺らはそういうことはしないできた。ラップが成功してるからってラッパーに参加してもらったことはないし、ボーイズバンドが成功してるからって振り付けして踊ったりってこともなかったし(笑)。俺らは自分たちでやりたいことをやり続けてきて、その不屈の態度が成功につながったんだ。だから本当に、「誠実さ」っていうのはカギだよね。

――過去の曲に制作した未発表曲も含め、ボックスセット等をリリースすることで、これまでのキャリアにひとつの区切りをつけ、バンドとして新しいスタートを切ったというところでしょうか?

ジョン:そうかもね。ある種の里標と向き合った感っていうのはあるね。ボックスセットはちょうどそれとタイミングも合ってたし。あれは(俺たちにとっても)成功だったと思う。大げさなPRもなしに、ただ作品を出すって形でリリースして、これまで未発表だった作品も含めて、過去のモノをすべて出し切ったんだよね。で、そこからまた前進したわけさ。これまでもいろんなアルバムをリリースしては同じ気持ちになったことがある。『キープ・ザ・フェイス』はひとつの転機だったと思うし、『クラッシュ』も転機だったし、ボックスセットもそうだったし。

――ということは、新作の制作にはまたフレッシュな気持ちで取りかかれましたか?

ジョン:このアルバムに関しては急かされて作ったってことはなかったね。実際、去年の秋にはリリースできると思ってたんだ。いや、去年の秋にリリースするつもりでいたんだ。ボックスセットをレコード会社に提出した時点で、もうこのアルバムはできてたから、10月か11月には出そうかぐらいの勢いではいたんだ。でも、ホリデーシーズンになって、その間に見直してみて、やっぱりまだ完全にはやりきってないような気がしたんだよな。だから新しい曲をもう少し書いて、またみんなでスタジオ入ってレコーディングし直したわけさ。俺がもうできたって思って、その話をレコード会社にした時からもう1年近く経ってるから、そうだね、時間的にプレッシャーを感じたってことはなかったな。それこそ、最初の頃なんて、84年、85年、86年、88年、90年、92年ってペースだったからな。それから少しずつゆっくりしたペースになり始めたんだ。後は95年、97年、2000年だっけ? もうせかせか急いで作品は作りたくないんだよ。

――前作『バウンス』では9/11がテーマになっていることを強く感じたのですが、今回は……。

ジョン:去年の選挙の様子に影響を受けて書いた曲もいくつか入ってる。このアルバムからは「包含」の意を汲み取ってもらえるといいんだけどね。“Have A Nice Day”っていう表現にはシニカルな部分もあるわけなんだよね。収録曲の「ウェルカム・トゥ・ウェアエヴァー・ユー・アー」にもその「包含」の意味が込められてるんだ。アメリカでは「赤と青(共和党と民主党)」で分かれてて、例の選挙ではその対立化をこの国ではみんなが痛感したと思うんだけど、それでも、それを乗り越えて前進していかなきゃいけないんだよね。選挙の結果とか行政の見解がどうであれ、世界はどんどん明日に向かって動いているわけだからね。そんな時に、それでも立ち上がるには、モノゴトを「包含」することって大切だなって思うんだよな。ゲイだろうとストレートだろうと、黒人だろうと白人だろうと、戦争についてどう思ってようと、とにかく“今キミがいるそこへようこそ”って言ってるんだ。みんなどんな状況にあっても、なんとか持ち直して人生やってかなきゃいけないんだからさ。

――今作に使われているジャケットが印象的ですね。

ジョン:こういうニタニタした笑みは不気味だって思う人もいるみたいだけど、俺はそうは思わないんだよね。俺には如才ない表情に見えるんだ。それでもまだ底にはちゃんと楽天的な部分もあるんだ。だからスマイルなわけだからね。(斜に構えて)「まあ、いい日を過ごしてよ」って態度なわけさ。ニューヨークで言うこのフレーズには日本で意図するのとは全く違った意味合いになることもあるってことだね(笑)。

――完成してみて、どんな作品に仕上がったと思いますか?

ジョン:みんなそうだと思うけど、出来上がった時点ではこれが最高の作品だって感じるんだよね。でもその本当の結果は2年ぐらいして、自分も一歩離れて客観的に見れるようになるまで分かんないもんだよ。その間にその作品を聴いてくれた人から賛否両論を聞きながらね。

――このアルバムはすごくパワフルだなって感じたのですが、どんな気持ちで制作に取りかかったのでしょうか?

ジョン:神経質になってたね。例えばいい例が、これ、去年リリースできなかったんで、4曲新しいものを作ったんだ。で、メンバー集めてそれをレコーディングして、いくつかあったものにもちょっと手を加えて、もう一度「これで出来上がり」って言ったわけさ。で、先週の金曜日にラジオ局に向けて「ハヴ・ア・ナイス・デイ」を発表したんだ。いつも良くしてくれてるニューヨークとフィラデルフィア周辺の局のみだけどね。でも月曜日にラジオでそれを聴いて、またスタジオに戻ったんだ。また編集しなおそうと思ってね。「止め止め! これじゃリリースできない!」なんて言ってさ。でも周りは「もう遅いよ、もう放送されてるんだから」「諦めろよ」って言うわけさ。それこそ、店まで行って「まだ買っちゃだめ。まだ完成してないんだ」ってみんなを止めようかと思ってたぐらいでさ。でも、諦めなきゃいけないわけさ。もうラジオでかかっちゃってるのに、それでもまだ直したいなんて思ってるわけ。当然、神経過敏にもなるよな。

――10月、11月に出来上がったと思っていた時点では、数十曲も作った中からセレクトしてアルバムを完成させた、という形だったのでしょうか?

ジョン:例の4曲を新しく作っただけで、あとは俺が毎晩ライヴで歌いたいって思える曲だけが入ってる。これだけのキャリアを積んできて、まだアルバムに毎晩ライヴで演奏してたら嫌になるような曲が入ってたら、恥ずかしいよ。結成されたばっかりのバンドだっていうんなら、まだ納得できるけどね。以前はそれこそ、ツアーがもうぎっちり詰まってて、リリース日程を変更するのは不可能、って時もあったわけだよ。当然、曲作ってる時間に余裕がなくても、ツアーが始まっちゃうから、書いて、レコーディングして、ミックスも終わってなきゃいけないってこともあった。そういうことも駆け出しの頃はあったさ。でも、この時点で、このアルバムを作るのにあたっては、周りがツアーの企画なんかを持ち出しても、耳に指突っ込んで「聞こえないよ~」なんて言ってその場から逃げることもできたわけさ。きちんと俺が自分で起承転結があるって感じられるものができた時点で完成ってことになるんだ。もちろんバンドメンバーとも相談するよ。でも、毎日それを歌わなきゃいけないのは俺なんだからさ。納得いかないものは他の人にカヴァーしてもらうか、どっかにしまっておくか、 ボーナストラックにした方がまし。出来の悪い曲とかっていうんじゃないけど、伝えたいメッセージがきちんと丸ごと伝わってないんだよね、そういう曲は。

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