といぼっくす、集中して聴ける仮想A面と仮想B面

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想定されている。本人曰く「iPodでシャッフルして音楽を聴く時代に、ずいぶんとアナログな思考」とのことだが、「個人的に30センチLPレコードの片面の長さ、だいたい十数分から二十分前後というのは、集中して音楽を聴くのにとても適した長さだと感じている」というのが、その根拠だ。CD1枚分…40分から1時間を通して聴くのは、ちょっと長すぎるように思え、そのことが「アルバムを1枚の作品として完成させ、1枚の作品として聴いていただく」ことを困難にしているような気がするのだという。

『Garbage Collection』の仮想A面には、ポップサイズのボーカルナンバーが並んでいる。ボサノヴァの「STEPS」に始まり、レゲエやサイケ・ロックを経て沖縄テイストの「夜ぬ羽」で幕を閉じるソングブックとなっている。一方の仮想B面は「Dance1」で開始されるインストナンバー中心のサイドで、架空の夜の物語のためのサウンドトラックというイメージ。クラシカル、ジャズ、タンゴなど、さまざまな音楽が夜を彩る感じだ。

こうした架空の構成を前提に聴くのが、『Garbage Collection』を楽しむ基本の形だ。

なお、タイトルとなっている『Garbage Collection』はコンピュータ用語から着想を得たものという。コンピュータ・プログラムはメモリ上の記憶領域を使って働くが、未使用の記憶領域が断片のように散在することがある。これら使われていない記憶領域(ガベージ)を使用できる領域にするためつなぎなおして整理する作業を、ガベージ・コレクションと呼んでいる。音楽は常に意識下の記憶から立ちのぼるという磯田健一郎。このアルバムを制作するに当たって、もう一度音楽と向き合うために、自身の記憶領域を一度整理する意味をも込めて、磯田健一郎はこの言葉を選んだのだそうだ。
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