[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「ダン・トレイシー」

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4月に発売されるMGMTの新作『コングラチュレイションズ』に、テレヴィジョン・パーソナリティーズ(以下TVP)のリーダーに捧げた「ソング・フォー・ダン・トレイシー」という曲がある。TVPが最初のシングルを録音したのは1977年。パンクに感化されながら、ザ・バーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの影響も反映、ジャングリーなギター・ポップに路線を定めた。やがてジョン・ピールが彼らの曲をオンエアして反響を呼び、ラフ・トレードと契約。シングル「I Know Where Syd Barrett Lives」は、1981年にラフ・トレードの作品が初めて日本で発売された際、ポップ・グループやスリッツと共に店頭に並んでいる(邦題は「シド・バレットはどこ?」)。

ダンは1981年にインディ・レーベル、ワーム!を設立。TVP以外にも、パステルズのデビュー・シングルやマリン・ガールズ(後にEBTGを結成するトレイシー・ソーン在籍)のアルバムを世に送った。アラン・マッギーはこれに強く触発され、クリエイション・レコーズを興すことになる。

TVPはその後もマイペースで活動を続けたが、1990年代以降はダンの持病である統合失調症と薬物依存の影響で活動が不安定になり、1996年に自然消滅。路上生活を始めたダンはドラッグを買う金欲しさに万引きし、度々投獄された。しかし友人たちの支えもあって2006年にTVPを再結成、11年振りにアルバムを発表している。

アートや映画、ロック・スターを歌い込むイノセントな作風と優れたポップ・センスが、カート・コバーンからシザー・シスターズまで多くのアーティストに支持されてきたダン。近々MGMTとステージを共にする予定もあり、改めて注目を集めそうだ。彼らが1970~1980年代に残した名曲の数々は、アンソロジー『PartTime Punks』にまとめられている。

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