【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】 第10回 ファーストプレスで聴く『Music From Big Pink』

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さて、それでは本題に戻りましょう。『MUSIC FROM BIG PINK』。1968年リリースの、THE BAND衝撃のデビュー作。

Ronnie Hawkinsのバックバンドを通じて集まった5人。彼らはその後Bob Dylanのバックバンドを務め、都会の喧騒から逃れて音楽に没頭するためにBob Dylanとともにウッドストックに移り住み、地下室に籠もりセッションに明け暮れます。Bob Dylanの影響を受けながらも独自の音楽を追求し続け、ついに辿り着いた境地とも言える魂の音楽を詰め込んだのがこの『Music Fom big Pink』。当時流行のサイケデリック・ムーヴメントから一線を画した、音楽シーンへの挑戦状。影響を受けたアーティストは数知れない、アメリカンロックの最重要アルバム。

'68年、CapitolからリリースされたUSオリジナル盤のレコード・レーベルは、黒地に虹色の“レインボー・キャピトル”レーベルです。

ジャケットはBob Dylanが描いたもので、表ジャケット下部にはそれを表す「B.D.」の小さな刻印があるのが普通ですが、ファーストプレスにはその「B.D.」の刻印がありません(かなり後年にプレスされたものにもB.D.のないものがあるようです)。

基本的にファーストプレスにはこだわらない僕ですが、THE BANDのこととなると話は違ってきます。このアルバムのファーストプレスは欲しくてたまりませんでした。それだけにこの“レインボー・キャピトル”「B.D.」なしのファーストプレスを手に入れたときの感動は格別でした。THE BANDに関してはついつい熱くなりすぎてただのコレクターになってしまいそうですが、忘れてはならないのが、僕がオリ盤を求める理由・意味。本来、僕がオリジナル盤に第一に求めているものは“オリジナルの音”なのです。ファーストプレスに求めているものも、“ファーストプレスのレア度”ではなく、“ファーストプレスの音”なのです。

では、そのB.D.無しのファーストプレスは、B.D.有りのセカンドプレスとどれほど違うのか。友人の持つセカンドプレスとの聴き比べ検証してみました。

第一印象では、不覚にもセカンドプレスの方が音がいいと思いました。驚いたことに、セカンドプレスの方が各楽器がはっきり聴こえてきました。それに比べファーストプレスは少しごちゃっとして混沌とした印象。この第一印象はちょっとショックでした。やっと手に入れたファーストプレスよりもセカンドプレスの方がいいなんて…と。

しかし、繰り返し聴いているうちに、真相がわかってきたような気がしました。
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