サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ、来日インタビュー<後編>
――フェスの場合、限られた時間枠のなかに1曲でも多くを詰め込もうとするバンドが多いですよね? しかしあなた方の場合は、むしろそれ以上に「自分たちならではの空気感」を重視していたと思うんです。
ジャレッド:その通り。俺たちは時間ってものの使い方をよくわきまえているんだ(笑)。何曲演奏するかという数の問題じゃない。限られた時間のなかで、どれだけ深い関係を築けるか。そこが鍵だからね。
トモ:まさに。
ジャレッド:だから慌てて何曲も無理矢理詰め込もうとするよりも、じっくりと腰を落ち着けて演奏して、みんなをジャンプさせたり、オーディエンスのなかに飛び込んだり、ファンをステージに上げて通訳させたり(笑)、みんなでステージ上で歌ったりするほうがいい。結果、全体を通じてものすごく印象的な時間になっただろ? 記憶に残るライヴになったと思うんだ。それが何よりも重要なことだと思う。
――ええ。僕自身もそうですけど、オーディエンスの大半はあのステージに触れたことで、フル・サイズのショウを観たいと感じたはずでしょうし。
ジャレッド:そうだろうね。俺自身も観てみたい(笑)。次回は単独公演のために来たいね。願わくば2月頃に。今、それを目論んでいるんだ。
シャノン:冬の日本にはまだ来たことがないし、すごく楽しみだな。
――寒い季節に熱いライヴが観られることを期待しています。ところで改めて『ディス・イズ・ウォー』というタイトルにまつわることを訊きたいんですが、サーティー・セカンズ・トゥ・マーズというバンド名にも「戦闘開始30秒前」といった意味合いがありますよね? “闘い”は常にあなた方にとってのキーワードということなんでしょうか?ジャレッド:間違いないね。“マーズ”は火星であると同時に、闘いの神でもある。アートワークに赤を用いるのは、それが火星の色でも、闘いを象徴する血の色でもあるからだ。タイガーの写真にも闘いをイメージさせるところがある。そうやってすべてが絡み合っているのさ。
――このアルバムを出す前には、レコード会社とも小さな戦争(契約上の問題)があったようですけど。
ジャレッド:うん。ただしあれは、決して小さなものじゃなかったよ(笑)。
――失礼しました(笑)。今現在、あなた自身にとって“WAR”という言葉はどのような意味を持っているんでしょう?
ジャレッド:たくさんのことを意味する。個人的な闘い、社会的な闘い、ビジネス上の闘い、クリエイティヴな領域での闘い……。人生という旅には、実にたくさんの闘いが用意されている。ただ、俺はそうした闘いから逃げようとは思わないし、それに挑んでいくことが大切だと思っているからね。それが俺たちをミュージシャンとして、アーティストとして成長させ、結果、人間としてもバンドとしてもいっそうベターになることに繋がっていく。結局、すべて闘うことを通じて学んできたんだ。人間には、幸福な日々を過ごすために闘わなければならないこともある。それは運命でもあるように思うね。
――なるほど。ところで以前、ジャレッドは1stアルバムについて振り返りながら「個人的な表現の機会」だったと語り、2ndアルバムでは、それが「バンドとして共有できるもの」になったと発言していました。その流れを踏まえていくと、さらにその共有がバンドの外側にまで大きく広がったことで生まれたのがこの第3作、『ディス・イズ・ウォー』ということになるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?
ジャレット:うん。その通りだ。もちろんふたたび内側へと逆行することも可能ではあった。だけど意識を外に向けることからすべてが始まっているわけだからね。ただ、それを目指しながら作ったかどうかは自分でも定かではない。たとえばモノを書く人たちにも、まったく意図していなかった種類の反応に驚かされることというのがあると思うんだ。音楽についても、それは同じことだからね。
――ええ。よくわかります。最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。残念ながら<サマーソニック>に足を運べなかったという人たちも多いはずなので。
ジャレッド:<サマーソニック>に来ずに、一体どこに行ってたんだ?(笑)
シャノン:ははは! でも、また絶対に来るよ。アイ・ラヴ・ユー!
トモ:シャノンだけじゃなく、俺たちはみんな日本を愛してる(笑)。だからもっとこの国で長く過ごしたいし、その機会をもらえたら嬉しいね。
ジャレッド:俺たちには夢があるんだ。そのひとつは、この国で、このアルバムを媒介にしながら、もっとたくさんの人たちと繋がること。まだ日本には、このバンドと音楽のことを知らない人も多いと思う。だけど、近いうちにもっと多くの人たちがこの作品を共有できることになるはずだと信じているよ。
文/撮影 増田勇一
『ディス・イズ・ウォー』
2010年7月14日発売
TOCP-66927 ¥2,500(tax in)
歌詞・対訳つき 日本盤のみボーナス・トラック2曲収録
1.エスケイプ
2.ナイト・オブ・ザ・ハンター
3.キングス・アンド・クイーンズ
4.ディス・イズ・ウォー
5.100サンズ
6.ハリケーン
7.クローサー・トゥ・ジ・エッジ
8.ヴォックス・ポプリ
9.サーチ&デストロイ
10.アリバイ
11.ストレンジャー・イン・ア・ストレンジ・ランド
12.L490
BONUS TRACK
13.Kings and Queens - Eddy and Tiborg Radio Mix
14.Kings and Queens - Innerpartysystem Main Remix
◆サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ日本公式サイト
この記事の関連情報
<サマソニ>第三弾に夏フェス初出演のGLAYら8組。NulbarichやNCT DREAM、JO1ほか
<SONICMANIA>第一弾でUNDERWORLD、ARCA、長谷川白紙、坂本慎太郎ら
<サマソニ>第二弾でリル・ヨッティ、星野源、Vaundy、BABYMONSTER、Creepy Nutsら
<サマソニ>第一弾でマネスキン、BMTH、ピンクパンサレス、ブライト、ベルセバら22組
<サマソニ・バンコク>初開催
<SUMMER SONIC 2024>、開催決定。大阪公演は万博記念公園に移転
ジャレッド・レト、サーティー・セカンズ・トゥ・マーズのツアー開催を祝い、エンパイア・ステート・ビルに登る
ENHYPENが<サマソニ>初出演、バンドセットのステージをピカチュウも応援
NewJeans、初出演<サマソニ>で3万人を前にパフォーマンス